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春望

「国破れて山河あり 
城春にして草木深し」

時々口に出したくなる。杜甫の春望。
やっぱり七五調のリズムは気持ちいいなと思う。

この詩を思い出すとほっとしてしまう。全然そんな詩ではないのに。
海を見てると自分がちっぽけな存在に思えて、悩んでいることが馬鹿馬鹿しくなる、といった類の感情を思い起こさせるのだと思う。

杜甫は戦乱の世でも変わらない風景を見て悲哀を強めたと思うが、変わらない何かがそこに在り続けてくれるだけでいいと思ってしまうのだ。

四国山地を見て育ってきたので、山が視界のどこかにあってほしい。
平野の都市に行くと山が無いなぁ…と物足りなさすらある。
富山に行った時に、厳かに聳え立つ立山連峰を見てやっぱり山が見えるのっていいなと痛感した。暮らしには山が必要だ。

地元にいた頃は、山の白さで冬の訪れを感じていた。
今の生活で見えている山は低いから白くなったりはしないけど、春になると黄色や黄緑のもこもこが生えてくるので楽しい。
こうやって、自分とは違う時の流れを持つなにかの存在を日々の中で感じていたいのだと思う。


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