今年映画館に初めて行って鑑賞した「僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46」が傑作だった話
「みんなは、欅坂やってて楽しいですか…?」
映画館に足を運ぶのは、昨年末の「スターウォーズ エピソード9」以来。
観る前から結構期待してました。
何と言っても、平手友梨奈さんという存在ですよ。
良くも悪くも欅坂の主人公を演じた彼女、
この興味深い題材をどう描いているのか?
「ドキュメンタリー」って映像ジャンル、結構大好物なんです。
近いジャンルで「メイキング」映像なんかも好き。
アイドルのドキュメンタリーも近年増えてきましたね。
でもね、なかなか心に響く作品には巡り会えないんですよ…
48グループ関係だと、
「DOCUMENTARY of ~」シリーズが定期的に製作されてますよね。
まぁ正直言ってドキュメンタリーの質としては、
う~ん…苦笑。
初期の頃の、高橋みなみさんが秋元先生にダメ出しされているシーンや、
前田敦子さんのコンサート中の過呼吸シーンが印象に残っているぐらい。
ドキュメンタリーというより、裏側もカメラ追いましたのメイキング映像感。
ところが久しぶりに巡り会えたんですよ、心に響く作品に。
あっ、忘れてました、
「尾崎支配人が泣いた夜 DOCUMENTARY of HKT48」(2016)
公開当時のHKT事情を知ってる方限定ですけど、これはなかなか素晴らしい作品ですよ。
Blu-rayもちゃっかり購入していたり(笑)
魅力を紹介すると長くなり本題からずれるのでまた機会あれば別記事にでも。
さて今回の本題、
「僕たちの嘘と真実 Documentary of 欅坂46」(2020)
”僕たち”って表現だけで、安心安定の秋元先生のアイドルグループ感(笑)
でも、欅坂46ってちょっと異質でした。
アイドルグループが尖った挑戦的な曲を出すことは、
散発的、変化球的には結構ありましたけど、結局のところ、
アイドルを熱心に応援するファンって根底ではそういうものは求めてないんですよね。
逆に欅坂46はそれを武器にして成功してゆく。
でも、当初からそのつもりじゃなかったように見えて。
このあたりが映画の序盤~中盤までの見どころ。
以下ざっと映画本筋。
一般の方々がイメージする「反骨」な欅坂46像を決定づけたのが、
平手友梨奈という異才な表現者。
映画内で生々しく描写されていた、
彼女自身が、そして他メンバーとの関係が、
次第に異質なものになっていく過程。
2ndシングル「世界には愛しかない」MV製作現場では、
平手さんのずば抜けた表現力に、他メンバーが圧倒的されているシーン。
4thシングル「不協和音」の頃には、
他メンバーを寄せ付けないほど、作品の世界に入り込んでいる。
”個人的事情”によるライブの欠席も起こるようになり、
周りの大人たちからも、「孤立」してゆく。
やがてシングル群も、平手さんに寄り添った世界観の作品になり、
8thシングル「黒い羊」でそれは極まる。
彼女も、各作品での主役を完璧に演じていくことで、応えていく。
作品性は評価され、商業的にも成功し、結果としてついてきた。
しかし一方で、歪みが生まれ、
それはどんどんと大きくなっていく。
平手さんの圧倒的な才能と表現力が有ってこそ、完成する作品たち。
言い換えれば、彼女抜きでは不完全になってしまう、”代役不在”
そして他メンバーの心境。
平手さん仕様オーダーメイドで作られた曲ゆえに、
加えて、彼女あっての今の成功だと理解しているがゆえの、
引き立て役の域を出れないジレンマを抱えた、”バックダンサーたち”
上記の大きな二つの問題により、
平手さんの欠席で機能不全になりかけてしまうツアー。
この状況は、
一寸先は崖のようだったとメンバーが表現する。
舞台監督さんの、
「平手いないと成り立たないの? 総崩れしちゃうの?」
メンバーの心に言葉が深く突き刺さる。
映画の中盤以降は、
平手さんグループ脱退の予感が漂う中、
他メンバーの ”成長=平手依存脱却” が描かれる。
9thシングルにまつわる問題に直面し(選抜の是非・平手不参加による発売延期)、そして平手さん脱退が現実となり、グループ改名へ…
それでも各々は前を向いて歩いてゆく。
いやぁ~、2時間ちょっと、あっという間でした。
やっぱり映画館で観るっていいね。家で見ても満たされないものが満たされました。
以下、個人的な感想と考察。
平手さんは、
主役(センター)として作品に対して取り組む際に、
100%全力でやるか or 全くやらないか
の極端な二択なんです。
100%表現できない時は、"欠席・不参加"。
やる時は、狂気なまでに全身全霊で倒れるまで表現する。
だから、その作品の世界観に完全に入り込み、表現するのには、
他メンバーとの交流も犠牲にせざるを得ないんですよね。
センター作品群もその性質上、他メンバーは全て引き立て役にならざるを得ないことは、彼女自身も理解していたと思います。
同時に他メンバーの悔しさ・痛み・虚しさも。
そのような他メンバーへの罪悪感と、強い気遣いの心があるからこそ、
「みんなは、欅坂やってて楽しいですか…?」
と問いかけ、
このまま自分が欅坂の”絶対的主人公”である続けるゆえに、メンバーを苦しめ続けるのなら、
自ら卒業しようと提案するのです。
結果論で言えば、
平手さんの気質は、商業的グループアイドルとは正反対の性質だったとは思いますが、その商業的グループアイドルで次第に才能が覚醒していくのは面白いものです。
仮に乃木坂に入っていたら、自身の才能に目覚めることなくあの普通の少女の頃のままだったのでしょうか…
それにしても、
要所要所でカットインされるライブシーン、
これまでの「Documentary of」 にはこんなにゾクゾクさせられる迫力溢れるシーン無かったですよ!素晴らしい!
欅坂の唯一無二の最大の強みですね、ここは。
平手さんが楽曲でスクリーン登場した時の高揚感と、別次元のオーラ纏っている感、
絵がグッと引き締まるんですよね。
「避雷針」なんて一見ただ歩いているだけなのに、紅海を二つに割って渡った十戒のモーセの如く神々しい(笑)
平手さんの描き方で、不満点をちょっと。
たぶん欅坂に詳しくない一般の方が観ると、
気まぐれでライブ欠席やMV不参加ばかり自己本位じゃない?という印象を与えるような構成になっている点。
怪我期間&映画撮影時期を除けば、大抵のライブは普通に参加していますし、音楽番組等のメディア露出も忙しいスケジュールの中でも大半は出演してます。
9thシングル不参加は、楽曲に対してだけでなく、
作中で石森さんが言及しているように不可解な選抜にも思うところがあったんでしょうね。
終盤で小林由依さんが、
「私は(平手に対して)みんなと思っていることが違う」。
憶測にすぎないですが、「プロフェッショナル」に対する考え方が異なるのかな、と。
プロなら作品は全力100%完璧にすべきで、惰性で適当なものはNG。
一方で、
与えられた仕事を、妥協できるラインで、決定事項は守りつつ、その中で仕上げるのがプロ。
根底には、そんな考え方の違いがあったのかな。正解はありませんが。
欅坂46は変わりたい。以降の曲の中心に小林由依さんを据えていることも象徴的な気がします。
個人的に好きなシーンは、
リハ休憩中、みんな椅子に座っている中、ひとり端っこで地べたに座る平手さんに、
二期生の田村保乃さんがパイプ椅子を差し出して、
「せ、先輩座ってくださいっ、どうぞっ!」
遠慮がちに小さな笑顔で手と首を振る平手さん
「あっ、、私全然大丈夫だから大丈夫大丈夫…」
(※セリフは妄想です)
色々書きましたが、
この作品は「Documentary of」シリーズ内で最高傑作かと。
たぶんBlu-rayも買っちゃうかなあ、
だって何度も見たいもん、あのシーン。
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