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【3分で読める】調査で選ぶと企画は面白くなくなる(木戸)

博報堂時代の『心・技・体』…技その⑪

こんにちは。HUMAN DEVELOPMENT ACADEMY木戸です。

今日のタイトルにある、「調査」のメリットとデメリットを、エピソードを交えながら例に紹介したいと思います。

広告界にいると、「調査」をすることがよくあります。

効果測定をするのに、事前⇒事後の認知度やブランド理解度を調査したり、パッケージデザインの評価を調査で確かめたり、コピー案の評価をとったり。

インターネット調査による定量調査だけでなく、グループインタビューなど、定性的な評価をとることも多々あります。

調査をとるメリットは、評価を数値に表し、統計的に、より具体的に判断するためには非常に有効的です。

ただ、一方で、調査だけで判断しようとすると、大きく2つの意味でデメリットがあります。

①1人もそこにいない可能性がある
これは、単純な例で、100人対象の調査結果の平均が「50」の質問があったとして、フタあけてみたら、回答「0」の人が50人、回答「100」の人が50人でも平均は「50」になるので、それを鵜呑みにして50でGOしてしまうと、誰もそこにいない、という結果になってしまいます。

②角がとれて丸くなる
もう1つは、調査結果で最も数値の高かったプランを選んだとすると、言わば多数決で選ぶことになるので、極めて一般的な、普通のプランになります。

広告でタレントさんを起用するのは、タレントが唯一無二でカリスマ性があるから、そのブランドに憧れるはずです。

だから、多数決で決まったプランは、ひろーくあさーく支持されるプランにしかなりません。

●大企業の陥りがちな失敗

こんなことがありました。

僕が担当していた、ビール・飲料ブランドの企業では、一時期、「調査結果至上主義」状態に陥っていました。

CM企画を決める際、社内で評価が分かれた場合に、Vコンといって企画コンテのカットごとに、紙芝居形式でビデオコンテにし、評価を調査でとることがあります。

※その頃は、全てのCM企画を決める際に必ずVコン調査をしていました。

そうなると、調査で一番評価が高かったプランにしか決まらなくなってしまいます。社内稟議をとることが優先の大企業だと、調査結果で評価されていることの説明がつきやすいので、調査結果が優先されがちです。

結果を無視して他のプランに決断する理由は皆無なので、最終的に、多くの人が選んだ普通のCMになってしまい、オンエア後のCM好感度調査で上位に上がってこない、という結果が出ていました。

●調査、統計、数値の対局にあるのが、「直感、センス」。

「なんとなく、これよくない?」とか、「根拠はないけど、とにかくこれをやりたい!」というプランです。

そういうプランが当たることも、まぁまぁあります。

”まぁまぁ”というのは、その逆で、社長の一存だけで進んだCM企画で、埋もれていった企画も五万とあるので、感覚だけではいけないのも事実です。

じゃあ、調査は意味ないのか、というと全くそんなことはないです。

まず、CM企画やVコンなど、企画をカタチにしたモノを調査にかけるときのメリットの1つは、、、

●ネガチェック。大ゴケを防ぐため

どれだけ入念に企画しても、時にはオンエア後に不測の大炎上して、短期間で放送中止になることもあります。

または、ロングセラーブランドだと、飲料でも、新たなファンを獲得するためにほんの少しパッケージデザインや味を変更しただけで既存ファンが離れてしまい、売上が激減し、慌てて元のデザインに戻す、ということもあり得ます。

そういったことを防ぐためにも、ネガチェックのために調査をかける。

あともう1つ、有効な調査は、

●データにしにくい感情や趣味嗜好を探り「共感」ネタを顕在化するため

CM企画のA案・B案・C案を選ぶために調査するのではなく、その企画のネタになる生活者の感情や、今、世の中的に共感される潜在的な趣味嗜好を探るために調査すべきです。

支持される趣味嗜好・感情を、ブランドを通して煽る、強調するために、ネタ探しとして調査します。

ただ、目に見えないモノを調査結果であぶりだすための調査設計は難易度が高いので、そういう時はすでにある調査データを活用する方法もあります。

例えば、世の中や生活を項目ごとに分解して調査データを集めているのが博報堂生活総研の調査です。

定量的な調査だけでは、ディープな心理まで読み取れないので、グルイン(グループインタビュー)などで調査の補強していきます。

●キャンペーンの成功or失敗を評価するため

決定前の企画の多数決をとるのではなく、実施したCMやキャンペーンの成否をはかるためには、結果を数字ではかった方が良いです。

事後評価はしっかりはかれないと、次の企画の軌道修正するのか、このまま続けるのか、正確に判断できないので、そのために、より明確に数値化するために調査すべきです。

以上、今日はこのへんで。(木戸)

このnoteでは、★色んな働き方、生き方があるということをシェアして、結果的に、多くの人が目の前の仕事に忙殺されるだけの人生ではなく、自分の意志で取捨選択した人生やキャリアを歩める世の中になることを願って書こうと思います。僕にとっては、博報堂時代のサラリーマン人生も、その後のフリーの木戸俊介としての経験も、どちらも欠かすことはできません。両方あるから、今の木戸俊介がいると思っています。そういう意味では、特に、今後の将来に対する期待と不安が入り混じる同世代、★29歳~38歳の企業マンに向けて話すつもりで書けたら良いなと思っています。

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