NVL-655(Nuvalent)
今回はブレイクスルーセラピー指定を受けた、この薬をほっていきます!
まずはALK阻害剤の概要について掘っていきます!
ALKとかいきなり言われてもワケワカメです🤮
ALK阻害剤概要
ALK阻害剤は、がんの成長と進行を抑制するために設計された薬剤で、特に非小細胞肺癌(NSCLC)などのALK陽性がんに有効です。
まずはALK阻害剤の具体的な作用機序について詳しく解説します。
ALKの役割
ALK(Anaplastic Lymphoma Kinase)は、細胞の成長や生存に関わる受容体チロシンキナーゼです。
Anaplastic Lymphoma Kinaseは日本語で「未分化リンパ腫キナーゼ」と訳されます。
ALKは受容体チロシンキナーゼの一種であり、がん細胞の成長や生存に関わる重要なタンパク質です。特に非小細胞肺癌(NSCLC)や神経芽細胞腫などの腫瘍において、ALK遺伝子の再編成や変異が見られます。
ALK遺伝子の再編成や点突然変異により、異常に活性化されたALKが腫瘍の成長を促進します。
ALK阻害剤の基本的な作用機序
ALK阻害剤は、ALKのチロシンキナーゼ活性を直接阻害することで効果を発揮します。これにより、以下のような腫瘍細胞の重要なシグナル伝達経路を遮断します。
- 細胞増殖の阻害: ALKの活性化によって引き起こされるMAPK/ERK経路やPI3K/AKT経路のシグナル伝達を阻害し、腫瘍細胞の増殖を抑制します。
- 細胞生存の阻害: AKTの活性化を阻害することで、細胞の生存シグナルを遮断し、アポトーシス(細胞死)を誘導します。
各世代のALK阻害剤とその特徴
- 第1世代: クリゾチニブ
- 初めて承認されたALK阻害剤。ALK、ROS1、c-METを標的とし、腫瘍の成長を抑制します。
- 主にALK陽性NSCLCの治療に使用されますが、耐性が発生しやすい
- 第2世代: セリチニブ、アレクチニブ、ブリガチニブ
- クリゾチニブに耐性を持つ腫瘍に対して効果的。特に脳浸透性が高く、脳転移を有する患者にも有効です。
- ALKの耐性変異(例:L1196M、G1269A、G1202Rなど)に対しても効果を示します。
- 第3世代: ロルラチニブ
- さらに高い脳浸透性と広範なALK変異に対する効果を持つ。
- 多くの耐性変異(特にG1202R/L1196Mなど)に対応でき、長期間の治療に適しています
耐性メカニズムと対策
ALK阻害剤の使用により、次第に腫瘍細胞は耐性を獲得します。これには、以下のようなメカニズムがあります。
- 二次変異: ALKチロシンキナーゼドメインにおける構造変化(例:L1196M、G1202Rなど)により、阻害剤の結合が阻害されます。
- 代替シグナル経路の活性化: EGFR、KIT、IGF1Rなどの他のシグナル経路が活性化し、腫瘍細胞が増殖を続けます。
耐性メカニズムに対抗するため、新しい世代のALK阻害剤や、他の分子標的薬との併用療法が研究されています。
ここまでの参考情報
https://www.frontiersin.org/journals/oncology/articles/10.3389/fonc.2021.713530/full
そしてNVL-655はこの耐性メカニズムに対応するために開発された新しいALK阻害剤です!
NVL-655概要
NVL-655は、経口で脳に浸透するALK阻害剤であり、主に進行性非小細胞肺癌(NSCLC)の治療を目的としています。この薬剤は、ALK遺伝子の融合や変異によって引き起こされる腫瘍の成長や転移を抑制するように設計されています
作用機序の概要が、わかったところで、ブレイクスルーセラピー指定を受けた理由と既存薬との違いを紹介します。
ブレイクスルーセラピー指定を受けた理由
NVL-655がFDAからブレイクスルーセラピー指定を受けた理由は、初期データに基づきます。
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