TPX-0131(Turning Point Therapeutics &BMS)
TPX-0131は、非小細胞肺がん(NSCLC)をはじめとするALK陽性腫瘍に対する革新的な治療薬です。この薬は、特に複数のALK耐性変異に対する高い効果を示し、既存の治療法が効かないケースにも対応可能では?と期待されています。この記事では、TPX-0131の作用機序、薬理学的特性、および臨床的意義について詳しく掘っていきます。
創薬元
TPX-0131は、Turning Point Therapeutics, Inc.によって開発されました。サンディエゴに拠点を置くこのバイオテクノロジー企業は、がん治療薬の研究開発に注力しています。会社名を日本語訳すると転換点治療薬って感じでしょうか?個人的にはビションが見える好きな名前ですw
参考資料
American Association for Cancer Research
ALK POSITIVE
ちなみにBMSに既に買収されています。
TPX-0131の作用機序
TPX-0131は、ALK(未分化リンパ腫キナーゼ)というタンパク質のATP結合部位に結合するように設計された次世代マクロ環状 ALK 阻害剤です。これにより、以下のような複数のALK耐性変異を強力に阻害します。
G1202R溶媒前部変異
L1196Mゲートキーパー変異
複合変異(例:G1202R/L1196M、G1202R/L1198F)
これらの変異は、従来のALK阻害剤(クリゾチニブ、アレクチニブ、セリチニブ、ブリガチニブなど)が効果を示せなかったものです 。もう少し詳しく書くと…
1. G1202R溶媒前部変異
G1202Rは、ALKキナーゼ領域の溶媒前部に位置する変異です。この変異は、第一世代および第二世代のALK阻害剤の結合を妨げ、薬剤の効果を低下させます。具体的には、G1202R変異は結合部位の構造を変更し、阻害剤の結合親和性を低下させます。
2. L1196Mゲートキーパー変異
L1196M変異は、ATP結合部位近くに位置し、ゲートキーパー変異と呼ばれます。この変異はクリゾチニブなどの第一世代ALK阻害剤に対する耐性を引き起こします。L1196M変異は、結合部位の構造を変化させ、薬剤の結合効率を低下させます。第二世代の阻害剤(アレクチニブ、セリチニブ、ブリガチニブ)はこの変異にも効果がありますが、完全な耐性克服には至りません。
3. 複合変異(G1202R/L1196M、G1202R/L1198Fなど)
複合変異は、単一のALKアレルに複数の変異が存在する状態です。例えば、G1202RとL1196Mの複合変異は、第一世代および第二世代のALK阻害剤に対して高い耐性を示します。第三世代の阻害剤であるロルラチニブも一定の効果を示しますが、完全には耐性を克服できません 。
ちなみにTPX-0131は「コンパクトなマクロ環状構造」を持っており、、大きな環状構造を持ちながらも、全体的には小さく、特定の部位に効果的に結合できるよう設計されています。
作用機序をより詳細に知りたい場合はこちらの記事をご参照ください。
薬理学的特性
TPX-0131は、試験管内および生体内試験において以下のような優れた特性を示しています。
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