FALCON™とDTx-1252(DTxファーマ&ノバルティス)
今回はノバルティス社が前払金5億ドルかけてゲットしたFALCONプラットフォームと候補薬のDTx-1252を掘っていきます!
FALCON™プラットフォーム
まずFALCON™プラットフォームの技術概要および配送改善について、詳しく掘っていきます!
FALCON™概要
「FALCON™」は、「Fatty Acid Ligand Conjugated OligoNucleotide」…脂肪酸リガンド共役オリゴヌクレオチドの略称で、長鎖脂肪酸とオリゴヌクレオチド(短いRNAやDNAの断片)を結合させた分子です。
この技術は、特にsiRNAによるRNA干渉やアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)といったRNAベースの治療薬の効率的な配送を目的としています。
このプラットフォームは、脂肪酸を使ってRNA治療薬を細胞の特定の受容体に結合させ、その後細胞内に取り込ませます。これにより治療薬の体内での分布を改善し、多様な細胞タイプや組織に対して治療薬を効率的に届けることを可能にします。
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DDSの改善
従来のRNA治療薬は、主に肝臓への配送に限定されていました。しかし、FALCON™プラットフォームは、この制限を克服します。
長鎖脂肪酸を結合させることにより、治療薬の体内分布が改善され、肝臓以外の組織や細胞にも効率的に治療薬を届けることが可能になります。
従来はアプローチが難しかった末梢神経系、筋肉、心臓、皮膚などに治療薬を到達することが可能になります。
また、FALCON™テクノロジーは、細胞の特定の受容体に結合し、細胞内への治療薬の取り込みを促進します。この受容体を介した取り込みメカニズムは、治療薬の生物学的有効性を高め、さらに副作用のリスクを減少させる可能性があります。
FALCON™関連プログラム
今回ノバルティスが買収で得たプログラムは計3つあるそうで、このあと詳しくほっていくDTx-1252、そして、開発コード不明の中枢神経系プログラム、神経筋プログラムです。
中枢神経系プログラムはtauタンパク質の異常蓄積ターゲットらしいので認知症っぽいです🤔
期待が持たれますね。
DTx-1252
続けて候補薬を掘っていきます!
DTx-1252は、DTx Pharmaによって開発されているCharcot-Marie-Tooth病タイプ1A(CMT1A)の治療用の研究中のRNA干渉治療薬です。この薬は、FALCON™プラットフォームを使用する最初の治療法として注目されています。
Charcot-Marie-Tooth病タイプ1A(CMT1A)
まずは対象疾患を掘っていきます。
遺伝的背景:CMT1Aは、17番染色体上のPMP22遺伝子の重複によって引き起こされます。この重複が末梢神経のシュワン細胞に影響を与え、ミエリン鞘の形成と機能に異常をもたらします。
臨床的特徴:CMT1Aの患者は、下肢から始まる四肢遠位の筋力低下、筋萎縮、感覚脱失などを特徴とします。これらは緩徐に進行し、足の変形(凹足、槌状足趾)を引き起こすことがあります。
治療:現在、CMT1Aの治療法は限られており、主に症状の管理や改善に焦点を当てた支持療法、リハビリテーション、外科的治療法が用いられます。ヨーロッパと米国では推定 150,000 人の患者が CMT1A を抱えて暮らしています。
作用機序
DTx-1252は、siRNAを用いてPMP22遺伝子の発現を標的にし、減少させることを目的としています。
siRNAは特定の遺伝子の発現を干渉する短い二本鎖のRNA分子です。PMP22の発現を減少させることにより、DTx-1252はCMT1Aの根本的な遺伝的原因を正すことを目指しています。
作用機序を箇条書きにすると…
二本鎖RNAの導入: DTx-1252はFALCON™によって修飾された短い二本鎖RNAで、効率的にターゲットの細胞内に導入されます。
RISCへの組み込み: siRNAは細胞内でRNA誘導サイレンシングコンプレックス(RISC)に取り込まれます。
特定mRNAの認識: RISC内のsiRNAが、PMP22のメッセンジャーRNA(mRNA)を認識し結合します。
mRNAの分解: RISCに結合した後、siRNAはPMP22-mRNAを切断し、分解を促進します。
遺伝子発現の抑制: mRNAの分解によって、PMP22のタンパク質の合成が抑制されます。
RNA干渉についてより詳しくはコチラを参照ください。
臨床試験
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