TriTAC®技術とHPN328
今回はメルクが買収したHarpoonの技術と主要候補を掘っていきます!
TriTAC®
TriTAC®(Tri-specific T Cell-Activating Construct)は、特に多発性骨髄腫というがん治療に使われる、新しいタイプの免疫療法です。この治療法は、T細胞(私たちの免疫システムの一部で、がん細胞やウイルスに感染した細胞を攻撃する細胞)を、がん細胞に向けることで機能します。
TriTAC®の働き方
- 三つの結合部位: TriTAC®は、BCMA(がん細胞に結合する部位)、アルブミン(薬の体内での存続時間を延ばす部位)、CD3(T細胞を活性化する部位)と結合する、3つの部位を持つ小さなタンパク質です。
- T細胞の誘導: がん細胞に特有のマーカーであるBCMAに結合し、T細胞をがん細胞に引き寄せて攻撃させます。この方法は、T細胞が通常必要とする、がん細胞の特定の遺伝子(MHC)を認識する必要がないため、多くのがん細胞が免疫から逃れる方法を回避できます。
- 安定性と使用の容易さ: TriTAC®は血液中で安定し、長い間効果を持続させることができるので、週に一度の投与で済むという利点があります。
開発元ページの動画が
メチャクチャわかりやすいです!
利点
- MHC非依存性: がん細胞が通常の免疫攻撃から逃れるMHCの喪失に対しても、T細胞をがん細胞に向けることができます。
- 小さいサイズと組織への浸透性:小さなサイズのため、がん細胞が存在する組織に容易に浸透し、効果を発揮することが期待されます。
要はCD3タイプのバイスペシフィック抗体薬に更にアルブミン結合サイトを設けて、半減期長くしたタイプのT細胞エンゲージャーですね🤔
HPN328の作用機序
それでは主要候補のHPN328の作用機序を見ていきましょう!
HPN328は、小細胞肺がん(SCLC)と神経内分泌がん治療に使われる新しい薬として開発されています。これらのがんは、DLL3という特定のタンパク質を多く発現しており、HPN328はこのDLL3をターゲットにしています。
普通の体の組織では、DLL3はほとんど見られないため、がん細胞を特異的に攻撃することが可能です。
HPN328の特徴は、三つの部分から成る「TriTAC」という構造です。(前述の通りですね!)
一つ目はT細胞のCD3εと結合する部分、二つ目は薬の効果を長くするためにヒトの血清アルブミンに結合する部分、そして三つ目はがん細胞のDLL3と結合する部分です。
これらの部分が協力して、T細胞をがん細胞に引き寄せて活性化し、がん細胞を攻撃して破壊します。
もう少し詳しく
ここから先は
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?