秘密の手帳(朗読オリジナル 後編)
そこは郊外の静かな病院だった
長い廊下のソファーに一人の男性がぽつりと座っていた
美波のお父さんだった
「やっぱり そんな嬉しそうじゃないわね」
「まだ決めつけるのは早いよ」
白衣に身をまとった男性が父親に近づいてきた
「いいんですか?」
「。。はい」
二人の空間は何処かよどんでいて重く感じた
美波はまだ途中だったが立ち上がり、そこから離れようとした
「待って!」
美波の手を強くつかんだ
「もう みなくてもわかるわ」
「違う。。お父さんの様子が。。とにかく最後までみよう」
美波は言われるままに座り直した
「先生、妻も子供もどちらも大切な宝物なんです!お願いです。二人とも助けてください」
お父さんは、その場で泣き崩れてしまった
「最善を尽くします。手術で二人とも助けられるよう全力でやらせて頂きます」
「。。ありがとうございます」
父親は手術中、ひとときも休むことなく手を合わせてお祈りしていました
大きな手術は無事終わり 美波も無事産まれ、母親も数日後退院できました
「まったく知らなかったわ。それなのに何故私に冷たいんだろう?」
光一はその後の映像もみせてくれました
ある日の父親の部屋での映像。。一人で机に向かっていました
「俺は正しい選択ができていたのか?美波のからだに傷を残してしまった。。妻も気にしているみたいだ。美波にも申し訳なくて。。」
(お父さん。。)
美波はお父さんがどんな想いでいるのか、初めて知ることばかりだった
美波の背中に少しばかりの傷が残っていたが、当の本人は気にとめていなかった
また別の日の映像には母親が映し出された
「あの人、美波が生まれてから笑顔が減ったわ。。他に好きな人でもいるのかしら?」
母親の方は疑心暗鬼になっていた
二人とも全く違う方向をみて暮らしていたのだ
美波はいてもたってもいられなくなった
「こんなことって!二人ともどうしてお互いを信頼しあわないの!信じあえれば何でも話せて乗り越えていけるのに!!」
三人ともお互いを気にしながらも自分自身の殻に閉じこもって生きてきたなんて!
光一は美波に声をかける
「今日、今から美波さんのところへ行こう!絶対、良くなるよ!俺も応援するから!」
美波は力強くうなずいて 光一とともに歩き始めた
背中の夕日がまるでこれからやってくる新しいステージを照らしてくれているかのようだった
「人生 絶対うまくいく」
「幸せになるために生まれてきたんだ」
「みんなも勇気を出して一緒に歩いていこう!」
まだ見ぬ輝かしいステージへ
(終わり)
♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡
朗読劇のシナリオとして書いたものです
舞台では、それぞれの登場人物で声をかえて一人で演じます
いつか観に来てくださいね
みんなの笑顔にあえるのを楽しみにしています♡
最後までお読み頂きありがとうございました