光と影のカケラ 女の子たちの秘めごと その1
光は影があるからこそ、輝いていられる。
影を失えば、"私"はそこに存在する意味を無くしてしまうんだよ。
貴女は、そう言って私のことを優しく抱き締めてくれた。
暖かく優しい春風に吹かれて、桜の花びらがひらひらと舞い散る季節。
あの日、高校2年生の私は貴女に恋をしていました。
**
校門の白い壁に背をもたれかけ、私は好きな人をずっと待っていた。
辺りは薄暗くなり始めていた。
部活を終えた生徒達が友達と賑やかに帰って行く。
夕焼けに染まった空を渡って行くカラスの鳴き声が、今日も一日の終わりを私たちに伝えていた。
「影、まだ待っててくれてたの?」
聞き慣れた声に顔を上げると、部活終わりの光が制服姿でそこに立っていた。
「あ、光…お疲れ様」
私は、優しく微笑みながら光に駆け寄った。
「待っててくれなくていいのに、私ほら、大会が近いし遅くなるから」
そう言って申し訳なさそうな表情をする光に、私は微笑む。
「いいよ、私が待っていたいから」
「…そう?」
彼女は心配そうな表情をしていたが、暫く悩んだ後に「まぁ…影が良いならいっか」と困りながらも笑ってくれた。
**
私と光は横に並んで、ゆっくりと帰り道を歩き出した。
「県大会、もうすぐだもんね、練習大変でしょ?」
「うん、もう毎日大変だけど…やっぱ優勝したいからめげずに頑張ってる」
私の問いかけに、光は微笑んで力強く答えた。
横に並んで歩く光の制服から、ほのかに汗の香りを感じる。
一瞬生温いそよ風が吹き抜けて、二人のスカートを揺らした。
手の甲が微かに触れ合う距離で、こうして傍にいられること。
私は、この一時がとても幸せだった。
「暑い」と言いながら、光は汗が滴る濡れた前髪を無造作に掻き上げて、額に伝う滴をタオルで拭った。
「光、ちゃんと汗拭かないと風邪ひくよ」
そう言って、私はスカートのポケットに入っていた真っ白なハンカチを取り出し光の額にそっと触れた。
光ーー上八木光(かみやぎ ひかり)は、私の幼稚園からの幼馴染みの女の子。
光は、眩しい程に輝いて私を照らし続けてくれる。
彼女は私にとって、太陽のような存在だ。
幼少の頃から、プロのテニス選手になることを夢見て部活や練習に人一倍励む彼女を傍で見守ってきた。
何時しか、私の彼女への想いは幼馴染みに対する友情だけではなくなっていた。
私が抱いている特別な想いは、いつまでも隠しておかなければいけない秘めごとなのだ。
「光なら絶対優勝できるよ」
私はそう微笑みながら、
最も幼馴染みらしい言葉で彼女を励ました。
「ありがとう、影がいつも傍にいてくれるから私頑張れるよ」
そう言いながら、光は私の腕に無邪気に寄りかかる。
彼女が私に触れる度に、私の胸の鼓動の音が早まり頬が火照るのを感じていた。
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