裏ひよこ日記 スープの冷めない距離
評議会とボスに呼び出しをされたひよこが夕方会社にやってきた。
今日はエレガントキャリアスタイルてとこだろうか。髪は軽くウェーブをつけてる。ヘアアレンジができるようになったのか?えらい進歩だ。ノーカラーでネイビーと白のミックスツイードネップの上下。膝が隠れるかどうかくらいのタイトスカート。金の飾りボタン。見覚えのある服。買って一回しか着なかったやつだ。
こうも印象変わるもの?
ヒールが嫌いで苦手なひよこがハイヒールを履いてタッタッタッと小気味よく歩いて来たのも驚きだった。
エントランスホールでうざ絡みを展開していたラボのヤツが固まった。
あれ、ひよこちゃん?
フレッド?
まっすぐ前を見て小気味よく歩いてきたひよこは周りから浮きまくっていた。いい意味で。
あれ??なんか変?
いや。全然。
行こう。みーちゃん待ってるし。
そうだな。
去り際にひよこはうざ絡みしてきたラボのヤツにごきげんようと微笑んで会釈し、オレの腕に手をやってふふって笑ってこっちをみた。
そんな態度をかつて一度もひよこにされたことがないオレは表面は繕えたが内心は全く違った。ものすごい速度でハラグロ計算をしていた。
これでまだ、3ヶ月の基礎レッスンなんだよな?
これから1年…長い!長すぎる。
ふああ。素敵!とため息混じりな声がどこかからする。
フレッド?行こう?待ってるよ?
あ、ああ。そうだな。
髪はどうしたんだ?
ヘヘ。がんばってみた
そうか。似合ってる
良かった!!
面談はミラ専務もエルンストもボスもいて
ひよこの姿をみたボスは感激していた。
うちのコが見違えている!!とひよこをガシッとハグした。エライぞひよこ。がんばってるな!
ミラ専務がべりっとボスからひよこを引き剥がした。
ひよこさんは休職して自身の勉強のため留学しています。今回の面談は本人の強い意思で留学の延長をし、引き続き勉学に励みたいそうで、休職の延長が可能であれば休職を申請。条件的に難しいようであれば退職を希望しています。いかがいたします?
ひよこが退職?ボスが身を乗り出してきた
休職の期間がはっきりしないので。
それであればきちんと退職したほうがいいのではないかと思っています。
うちに不満がある?
いや、そんなことは。
今勉強してるのアレだろ?
と、ボスはエルンストに聞いてる
エルンストは資料をめくって、そうですね。と返事をした。
引き続き休職じゃダメなのか?
周囲に気を使わなきゃいけないから退職したほうがいいと思ってる?
期間がはっきり決まってないんです。
皆さんにもご迷惑がかかります。
こっちは全然構わないけどなあ。どう思うミラ?
わたしは…そうですね。ひよこさんの人生を豊かにするために勉強を続けたいひよこさんの意思を尊重します。
休職は有給を充てられるから給与は払っていた。だが、もうすぐ有給が終わるだろ?無給の休職になるけど、ひよこ、お前やっていけるのか?
それに関しては問題ありません。
本人の力でできる事は彼女はしました。
しかしまだ本人的にはまだ勉強が足りないと考えています。先生にも確認しましたが、やはりあと1年は最低1年は勉強してもらわないと難しいと確認をとりました。それでわたしはかかる費用の全てを後見人でもあるわたしたちガイドが用意する事で彼女のサポートをすることにしました。
彼女の意志を尊重してそうしてきましたが、これはガイドの仕事放棄ではありませんよね?
…ほんとお前さ
と、ボスは笑っている。
彼女がほんとうにそうしたいと望むなら、わたしとしては退職でも問題ありません。
ほう?
フレッド、ひよこ1人で行きっぱなしになったらガイドの仕事してないことになるから外すとか評議会からやいやい言われただろ?
え…そうなんですか?
ひよこは青ざめてこっちをみた。
ガイドとしての役割を現在は全費用を全負担することで果たしています。
お前なかなかだな。
でもなー。ひよこは心理的ストレスがかかると時にアレが出るからあんまり1人てのもなあ。と、ボスはオレをチラチラみながら言う
えーでも、フレッドお前の仕事どうしようかな?
普通の仕事しかしていませんけど?
かわりなんていくらでも用意できるんじゃないんですか?
どこがだよ!まだ無理だな。育ってない。
ひよこは勉強が必要なのはわかっている。
というか籍を置いてもらっておかないと困る。
ウリエルがこっちで面倒みたいとか言い出したんだ。ひよこがしばらく勉強に専念するなら籍変更して引き受けたいて打診されてるんだ。
はあ…
ひよこはやれん!!お前もだぞ!フレッド!!
ところで評議会のじいさんなんて言ってた?フレッド。呼び出しされただろ?
注意勧告でした。
そうか。ふうん。そうか…
ひよこ、フレッドと約束したことがあるんだろ?
…はい。
よかったな。
圧でふきとばしそうなじいさんいなかったか?
そんな感じの方ばかりでしたからわかりません
あはは。そうだな
昨日この書類を評議会のひとから渡されました
誰?
かなりご年配の方でした。
一番発言権がありそうな
あー、、あのひとね
あのですね。わたしからも提案があるんですが。
エルンストなんだ?
ひよこさんはフレデリック氏と先般婚約されたそうなんです。
で、ですね、研修費用は基本的に自費ですよね?それを費用一部負担できるやり方がないわけではないんですよ。
ほう?
ひよこさんをフレデリック氏の扶養家族に登録してしまえばいいんです。結婚という制度はこちらの世界にはありませんが、ほぼそれに近い状態になります。それだと少しですが手当がつくじゃないですか、、もちろんこちらに出社しないと行けない場合にも彼女に帰省手当もつけられます。それだとウリエル組合にも割り込みされないし、評議会からも担当を外すという警告もされない。
エルンストはオレにウインクをしてきた。
お前なかなかナイスサポートだな。
どうだ、ひよこ。それは難しい提案か?
扶養…
まあ、簡単にいえばさっさとしちゃいなよだな。口約束じゃなくてな。
…え
何だ嫌なのか?ひよこ
フレッドどうだ?
おまえたち、お互いを迎えに行くくらいの気持ちがあるならさっさとくっついちまえ。
何が問題なんだ?オレがいいっていってんだぞ?
…そうですね
あ、そうです。これを渡されました
オレは書類の中身をボス達3人に見せた
おー、これこれ。これだよ、俺達がていうかエルンストが言ったのは。
これをじじいから渡されたんだな?
はい。
やるじゃねえか。保護、承認は口だけじゃないて証拠だな。
これ、いいから出せ。すぐに出せ。
出したらどうなるんですか?
別に何も。変わりはしないさ。ただ精神的に安定するだろ。
フレッドさっさと登録してしまえ。ひよこの悪いようにはならない。周囲の目を気にして配慮や遠慮してる場合か?
それからな、ひよこにゃ悪いが一人にはさせられない。自立したいからそうしたのはよーくわかる。だが、フレッドやアルベルトが近くにいるということがどうしてもいるんだ。わかってくれ。
…はい
一人暮らし続けさせたいなら訪問する回数と滞在する日数を増やせ。いいな?
もしくは留学期間が終わるまでお前はプラハで仕事しろ。そこら辺は相談して決めるんだな。
はい
ひよこ。ちょっといいか?
はい。
ボスからコソコソ耳打ちされてる。
へ、えっ?!!
ひよこは顔を赤らめてるがいったい何を話したんだろう。