裏裏すぎるひよこ日記 誰にも言わない。
そういえばまだプラハをウロウロしてない。と
夜も更けた時間に突然ぴよぴよがいいだした
わたしでたことない。夜に
マジ?
だって夜外出すんな。て、2人から言われてるし、それに方向音痴だから知らない街を夜にウロウロするとこの家に帰れなくなりそうで。
たしかに。
なら、少し歩く?いまからでも。
いまから?
明日はオレいないぞ?最終の便で帰るから
…すっぴんなんだけど。
すっぴん可愛いから別にこまらないだろ?
びっくりされた
いつもそう思っていることををふつーに言っただけなんだけど。
てなわけで散歩に出かけた。昼に歩くプラハも美しいが、夜はまた雰囲気があって格別だった。
パリも夜は格別だけど、プラハはそれ以上だな。
そうだね。
ここいいな。住もうかな。
えー。
お前がここにいる間だけな?
保護者だしね?
人生のパートナーだろ
です。
橋のところまで歩いてお城を見上げる。
幻想的だな。
うん。
わたしこんなとこまできちゃった。
とポツンとひよこが言った。
ああ、散歩で?
ちがうよ。
好奇心で会いにいって、先生にあってみたらすごく興味をひかれる人で、で、こんなとこまできちゃった。
苦笑いみたいに話してる。
いいんじゃない?
結構苦しいのよ?
頑張ってるって先生いってたぞ?
…うん。
帰ろっか。
そう?
あと五分だけいい?
あい。
…後悔してるのか?
わかんない。あーでも…後悔っていうか
時々なにしてんだろ。て思うことはある…かな
そうか。
フレッドはそういう体験したことある?
留学…そういうの。
あるよ。
その時どうだった?
あー、、そうだな。
留学を口実に家から出られて、清々してたかな。
わたしとは違うね
そうだな。でも勉強はしたな。真面目に大学に行って夜遅くまでやってたな。
そうなんだ?
まあ、将来的な食い扶持を見つけないといけないから。もちろんオレもそこそこ遊んだ。でもなんか気は晴れなかったかな。プレッシャーから逃げたんだ。だが、あれはオレの最善の選択だった。当時はね。
へえ。
わたし、先生の話すことすごくよくわかるの。
うん
図々しいかな?
いや。そうは思わないな。
わかるの。というかなんでこの人わたしが心のどっかで思うことを、こうも堂々と書けるのかと。
うん、それで?
でもなんか。わかるからこそこわいっていうか
それを具現化するのはどれだけ大変なことなのかってすごくわかるの。だって理想論じゃない。しかもなんていうか…烏滸がましい…ていうか図々しいのよ。わたし程度がとかそんな感じ。
うん。
だから…
その…いざ始まると
できないかもしれないとか
やってけるのか。とか。わたしにはあそこまでやれないんじゃないかとか考えはじめたら寝られないの。
そっか
これはまさにヨハン先生のいう絶望てやつなんではなかろうか。こちらサイド的には喜ばしい変化なのだろうが当人は絶望を味わっている真っ最中だからめちゃくちゃしんどいだろう。
寝れないてどのくらい寝れないの?
寝付けない。寝てもすぐに目が覚めちゃう
帰ったらホットミルク、少しは寝付きが変わるかもしれない
…帰っちゃうの?
帰ってほしくない?
…気にしないで!
話したら元気になった!
…まったく。嘘つくなってーの。
軽くデコピンしてやった。
っ!額を押さえるひよこ。
痛いし。
ウソだろ?軽すぎるくらいだぞ?
痛いもん。
見せてみろ。
ひよこは借りパクしたままのオレのパーカーを着ていて長すぎる袖が指先まであっておまけにフードもブカブカなため顔が全くみえない。
お前さ、こんなサイズがガバガバなのよく着るな。
と、顔を覗き込んだら目がうるうるになってた。
え、ほんとに痛かった?ごめん
……声を殺して目だけで泣いている。
一番苦しい泣き方するなって。
明日帰らないといけないなんてオレ地獄すぎる。
なんかもうどうしたらいいのかわからなくなってきた。
…やだ。
はじめて聞いた。
うわあ。このシチュエーションには不謹慎すぎるけど愛おしいしか頭に浮かばない。
帰ってほしくない?
しばらく無言でやっとなんか首を縦に振った。
ポロポロ泣いてる。ほんとに涙だけがあとからあとから湧いてくるようなそんな泣き方が苦しい心情を表しているようで見ているこっちが苦しくなる。
自分で選んだとはいえ毎日大変で
自分がそうしたいと望んだのに
上手くいかなくて、どこをどうしたらいいのかわからない。そもそもわたしにはハードルが高すぎたのかもしれない。こんなにもモノを知らなくて、こんなにもできない不甲斐ないバカな自分が苦しくてたまらない。なのにわかるとか思っちゃう自分がほんとに浅くてペラい。それが辛い。
的なことを切れ切れに言った。
そっか。
安易に大丈夫だから。と声をかけるのは
今は違うかもしれない。と逡巡する。
一緒に帰るか?
何も返事がない。
ひよこ?
…
返事がない。
ひゅっ。と喉が詰まるような音
やばい。これはヤバい。
ひよこと出かけるときいつもポケットにいれて持ち歩いてるビニール袋をひよこの口元にあてる
ゆっくり吐いて。うん。そう。
ゆっくり吸う。いいぞ。
もう少し。うん。そう。
ひゅっ。が少しずつ、ひゅーにかわって何回か繰り返すとふーってかわってきた。
ひ、ひっく。
こわかったよな。大丈夫だから。
ここにいるから。
歩ける?
うなづくがよろめく。
深く息ができるようになるまで体をあずけてもらった。
こんなに愚直に頑張ってるのにまだまだ全然ダメだと自分を認められない。不器用でまっすぐなうちのぴよぴよ。
帰り道はどちらも黙ったままでひよこはぎゅううとオレの手を握りしめていた。
家に辿り着いてひよこは洗面所に直行して顔をじゃぶじゃぶ洗い始めた。
…なにしてるんだ?
顔を洗う儀式な作業を終え、差し出したタオルで顔を拭いたひよこはいつものひよこになってた。
ごめん!びっくりしたよね。久しぶりでまいっちゃった!ほんとにごめんね。もう大丈夫だから。
帰りたくなくなった。
いや帰りなさいよ
ヤダ。ムリ。オレが辛い。
へ?
こんな愛おしいしかない存在どうして置いて帰れるのか意味がわからなくなってきた。
…落ち着け?
オレは平静だ。
いや、だいぶおかしいかな?
発言がだろ?そりゃそうだろ口に出さないからな。
痩せ我慢はよくないな。うん決まった。しばらく帰らない!
しばらくとは?
さあ。
落ち着こう。一旦落ち着こう。
ほら…そう!シナモンミルクティー飲もっか。
さっきと形勢逆転している
もーむり。マジでムリ。今日も明日も明後日も抱っこしてねないとオレが病む。だから帰らない!
ひよこは呆れた顔をしていた。
その日はお互い本音の本音の本音を語り合い、クスクス笑いが一切ない夜をすごした。
で、追い返された。
愛しているならもう少しだけ見守って。ときっぱり言われた。
いや、そうしたいしそうしてきたつもりなんだが。
でもごめんなさい。一旦帰って。
これは、わたしの問題で、自分で乗り越えないといけないの。だからもう少し見てて。
またあんな風になったらどうするんだよ?
…その時はこっちに来て。
次なったらこっちに引っ越してくるからな?
そうならないように自分でバランスとる。
来てほしくないのかよ?
そうはいってない。いてくれたらほんとに嬉しい。だけど…うん。それに甘えちゃダメなのよ。いまはね。
武士かよ(笑)
へへ。
ほんとにいいんだな?
うん。
やっぱりこのひとちょろっと可愛いとかそこそこ見れるとかじゃ全然ない。
帰りの飛行機の中で2人で撮った写真をみる。
朝ごはん。昼ご飯、夜ご飯。食事の支度をしてるオレ。アイロン掛けを死ぬほど嫌そうな顔をしてしているひよこ。勉強中のひよこ。寝てるひよこ。
寝てるひよこは自分の腕の中で健やかにすこーと安心しきって寝てる。マジで可愛いしかない。が、これをこそ撮りしたのバレたらぶん殴られそうだから絶対誰にも見せられない。見せるつもりも毛頭ないけど。
そんで一緒に撮った写真。
ひよこが毎日の記録として自撮りを撮ろうとしてるのを邪魔して抱きついて…ひよこに邪魔っ!と蹴られた。思い出したら笑いがでてくる。
なんか最近アルベルトの行動と言動がよく理解できるようになった。昔はこいつ頭おかしいんじゃないかとか思ってたのに。