ひよこ日記。128√e980
プラハでのはじめての夜を迎える夕暮れの時間帯。
目的は果たしたのでこれからどうしようかなー。とホテルのラウンジコーナーでソファに沈み込む。
熱量の高い人と自分の考えてることや自分なりの想いの話をするってものすごいエネルギーが動くっていうのをはじめて体験したかもしれない。ぱっと思いたって動くていうのは今まで何回もやったことがある。でも今回のはレベルが全然違う。
あー、、会社どうしよ。
やっぱすっぱり退職するのが
一番スッキリするのかもなー。。
でもそんな簡単な辞めさせてくれるんかいな。
…んー。
お客様。ご注文はお決まりになりましたか?
ラウンジコーナーのウェイターさんがオーダーを取りにやってきた。
…げ。だらしない格好してしまってた。
あわてて座りなおしてウェイターさんにコーヒーをオーダーした。
ヨハン先生やフレデリック大先生に見られたらしばき上げられるやつだわ。
小さな焼き菓子とコーヒーを運んできてくれたウェイターさんにありがとうございます。とニッコリ微笑んで背筋を伸ばしてさっきのだらしない格好は忘れてくれますようにと思いながらコーヒーをのむ。
プラハの夕暮れキレイだわ。わたしほんとうにここに数ヶ月間1人で生活することになるのね。
…ひとり。
一人で?
わたし一人暮らししたことないくせにはじめての一人暮らしがチェコ語の国?
さーっとなんか冷や汗がでてきた。
うわ何も考えてなかった。
それにこの国の文化とか暮らしぶりとか生活スタイルとか知らなさすぎる。
これはいささかマズイ。ではないかい?
会社の研修や出張で何日か滞在するのとは理由が違う。ここに!一人で!暮らしながら!
学んで、トレーニングを受けて。で、自分なりのレベルアップを図りに来るんだ。
あああーわたしのおバカ!
急激な熱が引いてく感じ。さながら貧血。
ワクワクドキドキもある。それと同時にわたしやっていける?もでてきた。
まずいぞまずい。これをどう着地させようか。
うん。よし。一旦置いて置こう。
で、美味しいご飯を食べてからゆっくり頭を整理しよう。
わたしはグルメ情報サイトを調べ始めた。
なんかいいものないかなー。
そしたらタイミングよく電話がかかってきた。
もしも…
はあい。あたしよ!ヨハン。ねえあんた今なにしてんの?どうせ腐ってんだろうからわたしとご飯をたべましょう。20時にさっき落ちあった場所に集合ね!
..…はい?
は?あんたなに用事あるの?
いえ、ありません。
ならいいじゃない。来なさい。どうせグルメ情報サイトみてんでしょ。無駄よ無駄!
これから美容に命賭けになるのになんでそんなブスになりそうなモノばっかりチョイスしようとしてんじゃないでしょうね?バカなの?いいから来なさい!じゃあねん。
一方的に話されて一方的に切られた。
なんか。なんか…エルンスト先生ににてるかも知れないこの感じ。あ、あのひとも大概変人だった。
ぷっ。と笑いがでる。
ヨハン先生て口は悪いけど情に厚くて世話好きなのかもしれない。
さっきのドヨンが軽くなった。
はー、、着替えよ。クソダサい選手権にまだ参加する気なの?優勝したいわけ?え、頭悪すぎない?て突っ込まれる前にわたしが気分よくいられる普段着に着替えていこうっと。どーせなに着てもなんか言われるんなら開きなおったほうがいいや。
それでわたしは一旦ホテルの部屋に戻って
シャワーを浴びることにした。
スマホをみるといくつかメッセージが入ってる。会社だったり友達だったり我が家の2人からだったり。
後で返信しまーす!と声に出し、スマホをベッドに置いたまま、シャワールームに入っていった。
髪もからだも洗ってスッキリさっぱりさせた。持ってきたラベンダーとローズマリーとはちみつのバスソープ。お店には売ってないフレッドのイギリスのお家のお手製のもの。
何かスッキリしない時にこれを使うとなんか良くないヤツがどっかに行くような気がするので出張とか研修とかで家を空けるときには必ず持ってくヤツなのだった。
ふううう。
えっと化粧水化粧水。パタパタ塗って美容液に化粧下地で、、、
ええーもうめんどくさい。
いつもの普段のわたしでいいや。
昼間頑張ってやったメイクはあきらめ、いつものナチュラルすぎるくらいに薄づきなメイクで目だけはマスカラとアイラインをしっかり入れてほんのり色づくティントリップでチークもやってしまいメイクはおしまいとなった。
服装もどこで何を食べるとも言われていないためドレスコードもわからないので、髪を纏めてお団子にし、メンズっぽい白のオックスフォードシャツに黒のロングスカートでバレエシューズで終わらせた。それと小さなゴールドのピアス。
見ようによっちゃあオードリ・ヘップバーンである。顔面の小ささやスタイルは、置いといて。
キャリーをガサゴソしてると見覚えのないモコモコのネコちゃんの膨らんだポーチと小さなカードレターがでてきた。
なに?これ?
こんなの入れたっけ?
ネコちゃんポーチを開けるとハーブティーとかパウチのはちみつとか、小さなボトルスプレーに入ったアロマスプレーとかかいろいろこまごましたものが入ってる。まだ底に小さな硬い缶が入ってた。
取り出してみたらそれはスミレのキャンディだった。それと手紙らしきものが一緒に入ってる
封筒の封をするところに数式が書かれてる。
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ん?なに?なにこの数式?全然いみわかんない。
封を開けると小さなメッセージカードが入ってた。
見慣れた細長い線のブルーブラックのインクで書かれた文字。
楽しんでおいで。
フフフ。と笑いがでる。
直接いえばいいのに。
道中のお守りとしてスミレのキャンディとその封筒も一緒にポシェットの中に入れて外出した。
なんか言われるだろうなとかおもったら意外や意外ヨハン先生はなんにも言わない代わりに
あら、あんたそっちのが全然いいじゃない。で終わったのであった。拍子抜けである。
ヨハン先生が連れていってくれたのは
こぢんまりとしたローカルな家庭料理のお店だった。
観光客向けのレストランは見た目はいいんだけどカロリーがすんごいのよ。あんたここの生活になれないといけないからね。
ササッと食べてササッと解散。
今日は早く寝ることね。ではまた連絡するわ。とヨハン先生。
部屋に帰り着いたわたしはいい感じに程よくお腹いっぱい。
お化粧を落として歯を磨いてパジャマに着替えて日中にもらってたいろんなメッセージやメールの返信をする。
あ、そうだ。ネコちゃんポーチのハーブティーのも。
お湯を沸かしてハーブティーを入れてベッドに入る。
封筒の数式が全く意味がわからない。
数式を検索してみる。
すぐにヒットした。
?!!!
どーして直接いわないの?
出るかなと思いながら直接電話してみた。
コール3回位で出た。
どーして直接いわないのっ!!
ハハハ見た?
みた!意味がわからなくて検索したらわかった。
そりゃご苦労さんなことで。でもあんがい嬉しいもんだろ?
嬉しくない人いないとおもうのよ。
あ、あめちゃんとかこまごましたものありがとう。
どういたしまして。
寝るんだろ?
うん。そろそろね。
ならお休みとするか。リラマイリラ
…リラマイリラ
あれ?もしもし?もしもーし??
わざといったよね?
寝るんだろ?
あ、照れた?ハハハこれは勝ったな。
わざといったよね?
いいや。時と場所を選んだつもりだけど?
…くっ
寝れなくなったからねむたくなるまで付きあって
しょうがない付き合ってやるか。で、今日はどうだった?