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ひよこ日記 くまちゃんのぬいぐるみ

クリスマスの朝、とっても大切に思っているうちのメンズふたりにわがままいい倒して今年もお手紙を書いてもらった。アルベルトは朝一番に包容力10000点のお手紙をハグ付き直渡しでくれた。やっぱこの人にはかなわん。

しかし、もうひとりのアイツはもみの木の前に意味がわからないくらいの大量のプレゼントと年末総決算みたいな叱咤激励な手紙をイギリスのフレッドの生家のメイド長のマギーさんが編んでくれた赤いトナカイ模様の大きなプレゼント入れの靴下の中に突っ込んでた。私の顔を見るやドヤ顔をしたが、直後に会社からトラブルが出たと至急の連絡が来て夕飯前には必ず帰る!と言い残し慌てて会社に行った。

フレッドがくれたプレゼントは番号が書いてある。番号順に開けていくと、一番はテディベア、小さな頃にはじめてもらった今はなき香水。わたしがはじめて自分のお小遣いで買った小説(何度も読み返してボロボロになって処分したが今は絶版になってもうないはずの本)、これもまた、わたしがはじめてお年玉で買ったスタンド・バイ・ミーのレコード。スワトウのハンカチ。カシミヤのセーター、ワンピース、サイドゴアブーツ、スミレでキャンディー、サンタマリアノヴェッラのスミレの石鹸、イギリスで朗読してもらった詩集の初版本、アンティークのラリックの香水瓶の中にフレッド本人が作った香水とクリスマスティーのブレンド、雪の結晶模様のダイヤのピンブローチ。雪崩が起きそうなプレゼントの数々はわたしの小さな頃から今の思い出とリンクし、手紙の内容との差に頭が追いつかず。

一番のクマちゃんの足の裏にはわたしの名前が刺繍されていた。もう片方の足にはわたしの誕生日と生まれた時の体重と身長が刺繍されている。メッセージカードにはあなたが生まれた時の体重と身長と同じテディベアです。こんな小さかったんだぞ。と書かれている。くまちゃんとセットで小さなひよこのキーホルダーのマスコットがいる。こういうのって前々から注文してないとダメなやつよね?たぶん、たぶん。

…アイツはほんと不器用だな…のアルベルトのため息と苦笑い

アルベルトからのクリスマスプレゼントは
雑記帳にいつか欲しいもの、シリーズリストの1位から5位に書きちらかしていたものが全部目の前にあった。

いつかいつか欲しいと心密かに思っていた
リトルブラックドレスとロングパールネックレス。その他諸々

なんでわかったの?

僕の奥さんはいつもそれを眺めてたじゃない。

ありがとうありがとうありがとう。

わたしも当然用意していた。
私が買える範囲で精一杯のものを準備した。
そしてわたしからふたりにもそれぞれお手紙を書いた。ちょうだいばっかりじゃないのだ。一年の感謝を込めてできるだけふんわり優しい言葉を綴ったつもり。

クリスマスだから家族でご飯。は我が家ではもっとも外せない行事でお昼前からアルベルトと一緒にディナーの準備に取り掛かった。
夕方17時位にフレッドが帰ってきた。

あー、疲れた!!と言いながら玄関に入って来たので階段を走って降りていっておかえりっと言いながらガスッとケリを入れてやった。

は?!ちょっとまて!なんだってんだよ。
クリスマスだぞ?

…手紙

手紙が何だよ。

…ばーかばーかばーか!

しばらく頭が働かなかったようだけど合点がいったらしく、ああっ!あれか?と笑いだした

笑い事じゃないっ!

なんだよ、はっきりいえっつーの

プレゼントありがとう。お手紙もありがとう。だけど!

不満?

ええ。

俺の手紙は一回よんだくらいじゃわかんねえんだよ。

は?

知ってるか?

なに?

イギリス人は仲良くなればなればなるほどぶっきらぼうで遠慮がなくなる。

で?

…意味わからない?

変換しろと?

…大事な言葉は書いてるだろ

「安心して砕け散れ」をどこをどう変換するの

おま…ほんとアレだな。ちゃんと読んだか?

読んでシクシク泣きましたー

…まじかよ

ウソつかないもん

あのな…あれはだな。

ゴホンと咳払いをした

一番近い位置にいるのは俺だ。それはわかるよな?

えぇ、もうひとりの俺へて書いてたもんね。

お前な…どんなことが何があってもお前を助ける、そばにいるて書いてるだろが。それがすべてだ。鈍チンめ。わかれよ、いい加減。ばーか。もうひとりの俺だぞ?わかんねえのかよ、もうひとりの俺。理解しやがれバカヤロウ

いや、ぜんぜんわかんないね

いい加減思い知れ

なら書き方ってもんがあるでしょう

上の階からアルベルトの声がきこえる

はい、おわり。もういいでしょう。クリスマスだよ。ふたりともケンカすんだ?

ケンカじゃない!
ケンカじゃねえよ!

はあ、もう。

あ、プレゼント開けたか?

うん、なにあれビックリした

だろ?今年いっぱい頑張ったもんな。足らないくらいだ

そう?

あんたはほんと…損するよ?

何が?

そういうとこ

お前が理解してりゃいいんだよ。
さ、メシだ。メシ。


アルベルトがね!すっごいいっぱい作ってくれたの!

おお、すっげえな。楽しみだ

おお、忘れるとこだった。
ちょっと来い

なに?

ガレージについていき、車のトランクを開けるととてつもなくいい匂いがする薔薇の花束があった。

ほら。

くれるの?

他にだれにやるんだよ。

ねえ、プレゼント

ああ

思い出の順番になってた

ああ。

ありがとう

やっぱ損するタイプね

ああ?!

なんでもなーい!ありがとう!










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