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ひよこ日記。サプライズをしにウィーンに行ってくる。

我が組織はクリスマスを前に一年で最も忙しいクリスマスが控えていてみーちゃん直轄の警備隊はいつにも増してピリピリしている。社食のカフェもこの時期は激込みになるのでランチをとりたくても席が見つからないというわけで、このところ屋上庭園でお弁当持参でボッチ飯してみたり、時間が合う同僚同期とごはんしたり、外回りの時は後輩ちゃんとウキウキしてちょっとだけいいランチを食べたりして気分転換している。

そんなことよりいまアルベルトはウィーンに半月ほど出張中である。毎日アルベルトとは夜寝る前に電話で話をしている。でもなんかちょっと元気がなさそうな、そんな気がする。なんかあったの?と聞いたけど、元気だよ?というけれど、やっぱりなんかちょっと気にかかる。

週末はなにするの?と聞かれて特に決めてないよ?と返事すると、そうか、ゆっくりしてね。と言われたのでアルベルトはお休みじゃないの?と聞いたら、うん、まあ、部屋で仕事でもしようかなあ。とどこか上の空っぽい返事をされた。ごはん食べてる?と聞いたら、うん、まあ。ときた。この人絶対テキトーに済ませてる。お酒と乾きものくらいで済ませてそうだ。
ちゃんと食べないとダメだよ?というと
ひよこちゃんと一緒じゃないからごはんつまんないよ。とひっそり笑ってごまかされた。ダメじゃん!それ!と突っ込むと会食もあるからちょうどいいんだよ。と

そうかあ、じゃあよい週末になるようにね。って電話を切った水曜日の夜、わたしは自分のスケジュール帳を取り出し、じいーっと眺めてた。いつもアルベルトがわたしに会いにきたり、迎えにきてくれてる。たまにはわたしから会いにいってもいいんじゃない?迷惑じゃないかな?いやいやそんなはずはない。仕事の邪魔にならなければ大丈夫。たぶん、きっと。だから行ってみよう。

木曜日の朝、会社についてからミラ部長にこの忙しいときにあれなんですが、金曜日に有給とりたいんですが。と申し出てみた。ミラ部長はいいわよ。とあっさり許可してくれた。

お昼休みにアルベルトの秘書さんに電話をかけてみた。金曜日の夕方~夜はアルは会食とか用事入ってないか聞いてみる。
大丈夫ですよ。空いてます。ウィーンに行かれるのですか?とか聞かれたのでサプライズしようかと。というとそれはきっととても嬉しいサプライズになりますね。では私も知らなかったことにしておきますね。と言ってくれた

夜かえってきてからキャリーケースに荷物を詰めて、チケットの手配が完璧にできているかを何回も確認して、準備万端にして(非常に珍しいケース)
さて、何を着ていくか。でウォークインクローゼットであれこれ探しまくる。こういう時はきっとアルベルトが買ってくれたお洋服やアクセサリーとか小物を着ていくのがいいだろう。もしわたしもそういうことされたらニンマリしちゃうもん。あざといくらいに好感度アップを狙うわたしはきっとアルベルトには可愛く見えるはずだ。

金曜日の午前中、ウィーン行きの列車に乗る。
遅延などせず無事時間通りに着きますように。そしてアルベルトが喜んでくれますように。と半ば祈りながら長い列車の旅をする。

おはようひよこちゃん、今日も元気でいってらっしゃい。とチャットがきたからやっぱりアルベルトは秘書さんから話を聞いてないっぽい。

今日はどこで何をするの?とチャットで返したらだいたいのスケジュールを教えてくれた。もちろん詳しい仕事の内容なんかは省かれているけれど(当たり前だけど)それでもだいたいこの時間はここにいるよ。がわかるから作戦が立てやすい。泊まってるホテルで待ち伏せするか、それとも帰宅前に襲撃をかけるかどっちがいいだろう?

そわそわする。アルもこういう気分になりながらわたしに会いにいろんな所に来てくれていたのだろうか?

ウィーンに到着する。

わざとらしくアルベルトに今休憩中なんだー。
長い会議が終わって一息ついてるの。とチャットしてみた。

しばらくしてアルベルトから返事がくる。
お疲れさま。僕も打ち合わせが終わってほっとしてる。

いまはどこにいるの?
いまは打ち合わせをしていた所のラウンジで休憩してるよ。少し疲れたから珈琲でも飲もうかなと思ってね。

そうなんだ。お仕事うまくいきそう?

なんとかね。何回も打ち合わせしてきて最終の詰めに入ってるからここら辺で決めたい所だよね。

大変だね。ご苦労様です。
ラウンジでしばらく過ごすの?

新聞読みたいしね。一時間くらいのんびりしようかと。

そうなんだ。ごゆっくり。また後でチャットするね!

わかった、ひよこちゃんも頑張ってね。


はい、決まり。休憩とってるホテルラウンジ直行決定!

というわけでウィーン駅からタクシーを捕まえアルベルトがいるとチャットに書いてるホテルにゴー!!

あー、ドキドキする。居なかったらどうしよう。とか、迷惑かも。とかいろいろ思考するけど、迷惑だったらさっさと帰ろう。それかどこか一泊して帰ろう。せっかくだからパアッと良いとこ泊まろう。美味しいってみつけたレストランはひとりでもはいれるかな?ホテルザッハーのザッハトルテはやっぱり外せないよね?とか。いろんなプランABC を頭の中で想定しながら

休憩を取っているといっていた歴史あるホテルの外観に見とれながらラウンジを目指して歩く。ほんとにいるかな?どっかに移動しちゃってないかな?てか、ていうか、ひとりで休憩してなかったらまずくない?とか緊張してきてくらくらしてくる。

ラウンジに入るとウェイターさんが、待ち合わせですか?と聞かれた。はい。とにっこり微笑んでみる。

新聞を読んでいるいい男はどこにいる?とキョロキョロすると奥の方の席でゆったり新聞を読んでいる誰がみてもいい男を発見する(個人的主観)
わたしの側に立っているウェイターさんに、彼はひとりでラウンジにきているのかを聞いてみる。商談相手の人が一緒だったとしたら間違いなくわたしは今ベストタイミングではないからだ。

お一人様でいらしてますよ?とウェイターさんは教えてくれた。ならば行くしかないだろう、

予告なく行くことはこんな緊張するものなの?しらなかったなあ。


こんにちは、お一人ですか?
とわざとらしく声をかけてみる。それも少し声を変えて話しかけてみる。

アルベルトは新聞から目をそらさないまま、ええ、そうです。なにかわたしに用事ですか?と割にクールな返事をしてきた。

よしよし。気づいてない

もしよろしければご一緒させていただけませんか?

…??

新聞から目をあげて??みたいな目でこっちを向いた。

!!!?

もう一度同じセリフをいう。
もしよろしければご一緒させていただけませんか?

…無言

え?無言?マジか、タイミング悪すぎた?

驚いているようだ

…ダーリン、嘘でしょう?どうして?

ごはんひとりじゃ美味しくないっていったから。

仕事は?

お休みしちゃった。

ひとりできたの?

もちろん。

迷惑だった?

そんなわけないでしょう!!

良かった

座ってもいい?

あ、ああ、うん

どしたの?

嬉しくてどうにかなりそうだ。

迷惑じゃないかな?てハラハラしたけど、一応秘書さんにも確認したけど大丈夫って言われたからサプライズしちゃった。

えへへ。

じいーっとわたしを見てくるアルベルトにちょっとだけ居たたまれなくなり、

えっと、だから、あの、その。

うん。

わたしが寂しくなったから会いにきちゃった。ごめんね、押し掛けちゃった。

黙りこくる。

…ひよこちゃん

うん?

どうしよう。こんな嬉しいことってない。

夕方待ち合わせてごはん食べよう?

まさかひとりで泊まるつもりなの?

だってほら、用事入ってたら困るじゃない?だから念のためにホテル予約してきたの

すぐにキャンセルして

いいの?

なにをいっているの?僕の部屋でいいじゃない。すぐに部屋変えてもらうから。

いいの?

一番いい部屋に変えてもらう

そこまでしなくていいから、フツーでいいし。

なにをいっているの?ひよこちゃんが僕に会いにきてくれたんだよ?!

まずい泣きそうだ。顔を手で覆い隠してる

え?ウソでしょ?

本当に…なんてことだろう。こんな日がくるなんて。

大げさだって笑

いつかえるの?

日曜日。

週末はこっちにいるんだね?

うん。

やっぱり帰るとかなしだよ。日曜日まで帰さないからね。

わかったから、何回も確認しないで。

ごめん、まだ信じられなくて。嘘みたいな話だから。ちょっと待ってね、部屋を変えてもらえるか確認するから。

うん

ケーキ頼んでいい?
もちろん、いくらでも好きなだけ頼んで。

一個でいいし。

ウェイターさんに注文している間にアルベルトは泊まっているホテルに部屋を変えられるか電話をしていた。

なんだか急に元気になっているっぽいアルベルトを見ながら美味しいケーキと珈琲ををパクつくわたしだった。


だって寂しくなったから会いに来たんだもん。可愛いわがままと許してちょーだい。










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