ダンスパーティの夜9~Aのストーリー
3日後にマルグリットの家に呼ばれているという話はあくる日には友人連中の耳に広まりさっそく賭けの対象となりこんな服がいい。あんな服にしろと盛り上がっている。
デザイナー志望の友人にパリまではるばる連れていかれ、ブティックであれこれ物色しなんやかんやと買いそろえた。
「これだな。うん。これだとキミは印象がいい」
選んでくれたシャツはブルー、白のシャツ、ホワイトリネン、薄いピンク、ストライプ、それとパンツにジャケット二枚ずつ、アスコットタイ、ネクタイ、ハンカチーフ、靴下、靴。
たった何時間かの呼びだしにしては
服がおおすぎやしないか?
「ボクにはわかるんだ。キミはこれが必要になるって。サイズの調整はボクがするよ。キミを引き立たせるジャストサイズに直すから」
この友人はとてもエキセントリックで人づきあいが苦手。体も丈夫でないから夜の集まりにも顔を出さない。それなのにパリ行きについてきてブティック巡りに付き合ってくれている。
僕は服の事はさておきマルグリットの父親に何を聞かれるだろうかと戦々恐々だった。
生い立ちからきかれるだろうし家のこともきかれるだろう。大学で何を学んだのかとか生活の手段は?とか。
ただ単にマーガレットともう一回少し話せれば満足だったのに自分の予想を反してどんどん何かが変わってきているのは確かだった。
素晴らしく気が重たい一日を過ごし、辞退しようかと
思っていた
夕方花屋の前を通りかかると
ムッシューから声をかけられた
「よかった!ほうぼう人に聞いてみたがみんなあんたの家を知らないっていうんだ。こないだの花束届けたよ。マーガレットが庭にいてね。直接渡したよ。カードと一緒にね。わしがカード今読んでくれないかて機転をきかしたんだ。読んでいたよ。読んで笑ってた。」
「そうかい、ムッシューどうもありがとう。受け取ったんだね」
「ああ。わしがしっかり届けたし、受け取ったのもカード読んでいたのもこの目でしっかりみたさ。」
「それはどうも」
「そう!あんたにこれを渡してくれと頼まれてね。それであんたを探してたのさ。」
ムッシューのポケットからカードがでてきて僕にくれた
これは…僕が渡したカード‥
突き返してきたのかな。ありうるな。キライっていって帰っていったもんな。
近くのカフェに入りムッシューが渡してくれたカードを眺める。カード突き返してくるくらいイヤだということだろ?
結構真面目に書いたんだけどな。と思いながらカードを開く。自分が書いたメッセージを改めて見るのは恥ずかしいものだ。
ん?なんだ?これ。
「あの場所はあなたには似合わない。」
マーガレットの返事だった。僕は笑ってしまった
あんな場所でしか生きる価値のない僕に似合わないは痛烈だった。