裏ひよこ日記。もしもの話を打ち明けてみる
足長スタスタ早歩きのフレッドがお店に戻ってきた。
ケーキどんな?
みる?
うん。
ふわぁ。すっごい!
オーソドックスな真っ白な見た目と裏腹に中身はふんだんに2人が大好きなフランボワーズソースとチョコレートムースが何層かに分けてたっぷりはいっていている。はず。
たべるのが楽しみ。
これ間違いなく美味いとオレもおもう。
そんなスイーツ談義をしていると
おまたせしました。出来上がりました!
ありがとうございます
たくさん話したからイメージが掴みやすくて張り切っちゃいました!
フローリストさん2人がかりで
抱えきれないくらいのたくさんたくさん花と花束を仕上げてくれたらしい
うわぁ~うわぁ~!と感嘆詞しか出てこないわたしを横目にフレッドは
ありがとうございます。
それで支払いは?どこで?
ご案内しますね。
と、オーナーさんらしき人がでてきて2人で会話しているようだ。
ごめんなさい。大変だったでしょ?
こんなにたくさんアレンジメントのご注文いただいて久々に腕が鳴りました!!
にっこり笑ってくれるかわいいそばかすが残る女性とクシャッとした頭の背の高い男の人。
あなた、話すの上手になりましたね。
と、突然そばかすの女性からいわれた。
え?
覚えてるの。うちに来てくれたばかりの頃かな、ひどく緊張した感じでこれください。てミニブーケ買ってくれたでしょ?
ああ!
あれ、わたしがアレンジメントしていいよ。てオーナーに言われたはじめてのブーケたちなの。精一杯頑張って作ったのに全然売れなくてすごくがっかりしてたらあなたが一番最初に買ってくれたの。ほんとうに買ってくれたのが嬉しくって。
だからあなたはわたしの最初のお客様なのよ?
そうだったんですね
ぼくが値段を言ったら君はまだ聞き取りが上手く出来ないみたいでなきそうな顔してたの覚えてるよ
あのときほんとにごめんなさい。
あのとき話すことも聞くこともままならなくって。
いや、いいんだよ。
僕も最初そんなだったから気持ちわかるよ。
よく来てくれてるでしょ?そのたびに上達してて。。こんなたくさん話せるようになるなんてすごいわね。
わたしたちまだフローリストの駆け出しなの。いつか自分のお店持てたらいいなって
頑張ってるの。
わあ、すごい!!
わたしエイミーていうの。よろしくね。
僕はマルクっていうんだ。
わたしはひよこって言います!
ひよこ。可愛い名前。あなた本当に愛らしくてキレイね。おまけにそのきれいな黒い目と髪!肌も白くて綺麗で羨ましいわ。彼もとってもカッコイイしね。
ありがとうございます。
エイミーもとっても可愛いですよ?
やだ。嬉しい!ありがとう。
またお店に来たらはなしましょうね。
ええ、ぜひ。
支払いをとっくの昔に終えたらしいフレッドは
会話が終わるのを黙って待っていてくれたらしい。
もう大丈夫?
あ、ごめんね。また来ます。
ええ。またぜひ来てくださいね!
すごくウキウキする。
結構なボリュームの花を2人で分けて(フレッドが3分の2、わたしがブーケ一束にケーキ)を持ち、駐車してるところまで抱えて歩く私達を通り過ぎる人はチラ見して歩いてく。
ひよここれ押して。
キーレスキーをピッて代わりに押してドアをあけてあげた。
トランクは買い物の荷物と花でいっぱいになり
アナイスとアレックスに渡す花束とケーキを膝に乗せて車は動き出した。
えっと買い物した。ケーキ受取した。花かった。掃除は終わらせたから…あとは帰ったら下ごしらえして花を活けないとな。
そうだね。
ねぇみてこのブーケ可愛くない?すごくいい香り。
そうだな。
お花屋さんのお姉さん達と知り合いになれちゃった!
よかったな。
うん。
一生懸命頑張った甲斐があったな。
だね。
最初の頃。パリに来たばっかりの頃。
外に出るたび辛そうな顔してたの覚えてる。
わたしそんなだった?
ああ。連れてきたのはいいけどほんとによかったのかずいぶん悩んだ。
そうだったの?
ああ。
でもいまさっきは花屋であれこれ注文つけられるようになったの見ていて。たくさん。ほんとにたくさん頑張ったな。
運転中なのに頭をくしゃくしゃっとしてきた。
本当に誇らしくおもうよ。
うん。
…うん
何故か泣けてきた。
え、オレマズイこといった?
全然。さいきん涙腺弱いの!!
そっか。
花束グシャグシャにするなよ?
ケーキひっくり返すなよ?
しませんよーだ!
帰ったら慌ただしいな
急がないとね。
…あのね。
どうした?
わたしちょっと勉強し直したいものができたかも。
そうか。
もし、もしもよ?それで会社辞めちゃったりとかまたどっかにプチ留学するとかいったりしたら、どうする?
好きにしな。
したいことがあるならしたらいい。会社だって留学だってなんだってしたらいい。
さみしくないの?
その時にならないとわからない。
そうよね。
カッコつけて痩せ我慢するのは得意だからな。
しれっと変わらず過ごしてるかもしれない。表面は。
ありそうだね。
で、家で飲んだくれてるかもしれない。
それはやめてー
で、そういう時にオレにどうしてほしい?
どう?
もし、勉強するためにしばらく家を空ける選択を自分がするなら俺にどうしてほしい?
赤信号になって車は停まった。
…わかんないや。
はなれるのやだ!おねがいだから一緒にきて!て選択はねえのかよっ
頬をムニっとつままれる
さみしくないです。一人でやれます。1人で頑張れますなんていわないでくれよな。例え状況的にそうしないといけなかったとしても。ずっといつもそうしてきただろ?マシュマロちゃんはさ。
青信号になり車はまた走りだした。
今度はもうそんな強がり言わなくてもいいようにしていこう
まあ、素敵。
惚れ直してくれていいんだぞ?
はいはい。
はいはいってなんだよ。
はいはい。
あ、逆にわたしに惚れ直してくれてもいいのよ?
はいはい。
ハイハイってなによ!
はいはい。
真面目な話だけど、
ほんとうに勉強したいことあるなら全力でサポートするから
ありがとう。でもまだなんにも決めてないしどうなるかもわかんないよ?頭の整理してからじっくり考えてみたいの。
いいさ。おもいつきでもなんでも最初に話してくれたのが嬉しいよ。ありがとな。
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