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ひよこ日記。モデル事務所のグループレッスンに突っ込まれて絡まれる。

レッスンにマーシャル先生も加わり、さらにメイクやスタイリストさんや話し方やなんやらかんやらそれ専門の先生が増えてきた。

これだけの先生集めてマンツーマンレッスンするなんていったい幾らあのひとは支払いをしたのかと思うと思考が止まる。フレッドの絶対に返済させてやるもんか。は、わたしの現状だとどう考えても返済できるような金額ではないということでもあり、好きなだけ勉強しな。はお前がいいだしたことなんだからそこから逃げるなよ。の一見あまやかしに見えるが、角度を変えるとめちゃくちゃスパルタにみえなくもない。これってわたしひねくれた考えなんだろうか。

来週にはパリに用事があって数日帰るある日のお昼休みに、ヨハン先生から今日はマーシャル先生が抜けられる時間がないからマーシャル先生の所のモデル事務所のグループレッスンに参加することにしたから急いで出る準備をしなさい。と言われた。

モデル事務所のグループレッスンに突っ込まれるそこら辺の冴えない女。そこそこ見れるようになったばっかのわたしと自分の美が仕事のプロ達と。もう結末が見えてるような気がする。

モデル事務所にはヨハン先生が連れて行ってくれた。ヨハン先生は金髪のロングの髪をひとつ結びにしてスーツを着ていてそりゃあもうバチバチにカッコいいのだが、雰囲気がありすぎて道を歩いているだけなのに、人が道を譲るみたいになっているのだった。

モデル事務所には当たり前だけどものすごいスタイルのいい男女で溢れかえっていて、なおかつグループレッスンということもありいくつかの仲良しグループみたいなものができており、
初参加で得体の知れない、しかも9頭身以上な異次元ボディを誇る人の中で平たい顔族のわたしは浮きまくっている。

ひそひそとわたしを見て何かを話しているっぽいけど言語が違うのでわからないが、わからなくてもわかる物がある。それは悪口である。世界共通認識、空気でバカにされてるというのは
例え言語が違うものであろうともわかるときにはわかるのだ。

…胸糞悪いとはこのことである。

わかっていてグループレッスンに突っ込んだヨハン先生とマーシャル先生はほんとうにいい性格をしてるとおもう。

あんたたち!始めるわよ!おしゃべりはやめなさい!

マーシャル先生がパンパンと手を叩きながらレッスンは開始した。

最初はストレッチ。全身を使ってすみずみまでからだを伸ばしていく。それから簡単なバーレッスン。

指先足先までフルに意識!!
末端まで美を宿しなさい!!

マーシャル先生のかけ声にレッスンは進む。
それでわたしはちょっとだけよろめき、後ろにいた人にぶつかった。

ごめんなさい。
たどたどしいけどチェコ語で謝った。

そしたら
なにすんのよ!このブス!!

思いっきりフランス語で罵られた。

わたしが平たい顔族だからフランス語だったらわかんないとふんだのだろうか。

あんたみたいなちんちくりんがこんなところにに来てんじゃないわよ!ふさわしくない!!
身の程知らず!!

うーわー、わかんないと思ってボロクソ言ってんな。と聞いていた。わたしはフランス語さっぱりとってもわかりませんみたいな顔をしてその人をみていた。

いつの間にか音楽は止み、そこにいた人達が私達をみていた。

なんであんたみたいなのがこの場所にいるのよ!信じらんないわ。

ヨハン先生とマーシャル先生はなぜか口の端が笑ってるように見えなくもないけど、
同じグループレッスンのレッスン生達は固唾をのんでわたしたちを見ているみたいだ。

それで?他に言うことは?

わたしはフランス語で返事してやった。

悪態を突きまくっていたその人はマジ?みたいな顔をした。

わたしもお金払ってレッスン受けにきてんだからあなた達と一緒でしょ?

あんたみたいなのと一緒にしないでよ!

わたしのことブスっていったけど、あんたも大して変わらない。

なんですって!!

わたしが事務所の社長ならわたしはあんたを雇わない。コンテストにも出させない。なぜならあんたはバカだから。

はあ?!

ヨハン先生は肩を震わせている。笑っているようだ。

レッスン生たちはポカーンとしてみてた。

時間もったいないわ。この一分が幾らすると思ってんの?

一気に周囲がシーンとした。

わたしはフレッドが出してくれた大切なお金を無駄にするわけにはいかない。

すいませーん。お騒がせしました。再開してください。

それから何事もなかったかのようにマーシャル先生はレッスンを再開した。

あるいてターンして戻る。歩いてターンして戻る。目標に向かって無心に歩く。

どれだけむかついても腹たっても悔しくてもここはそういう場所なんだから悔しかったら結果でみせるしかないのだ。泣いてる暇があるなら結果で黙らせるしかないのだ。

それに泣くなら家に帰って泣けばいいのだ。

何日も何日もマンツーマンで教えてくれたマーシャル先生の言葉を思い出してわたしは
今までにないくらい覚えてろよ。おまえ!!の炎メラメラでひたすらレッスンに集中した。

ヨハン先生はわたしをじいーっと見ていた。

レッスンが終わって帰り支度していると
ハチャメチャな美男美女の2人が話しかけてきた。

キミすごいね。

え?

素敵だったわ。

ハチャメチャな美人はハチャメチャに性格が良さそうな美人だった。

ありがとう。

わたしいつもあのひとに言い返せなくて。いつもあんな感じなの。でもあなた、だから何?て感じでフランス語わかりませんみたいな顔して、猛烈にフランス語で言い返して面白かったわ。


この一分に幾らお金払ってると思ってるんだ?は、ほんとそうだね。みんな我に返ってた。
かっこよかったよ。助かった!気合いがはいったよ。ありがとう。


話しかけてくれてありがとう。

あなた達ふたりパリコレとかに出る人になるんだろうなって気がした。もしいつかそうなるときがあったらわたしはお花をあなたに贈るわ。

ありがとう。嬉しい。そうなるように頑張る


またね。
またね。


ヨハン先生はなぜか機嫌が良さげで、
帰り道に美味しくて冷たいジェラートを奢ってくれた。


あと、3日で一旦パリに戻るというのもあり、わたしはヨハン先生とエステサロンやネイルサロン、美容室、メイクサロン、スタイリストさんのスタジオにと連れ回されている。

そして座学ではフランス語の発音矯正をされまくっている。

違う違う。もっとエレガントに話すのよ、ひよこ。鼻に抜ける…そう。もう一回。もっとなんかあんたの空気感に合った話し方しなさい。
そんな軽い話し方しない。もっとああ、そうね。知性を醸し出すように話しなさい。

あんたのウィークポイントは中途半端な自己否定と肯定感なのよ。わかるかしら?

…いやちっとも。

…あんた、マーシャルの所で言った言葉。覚えてる?

…何言いました?

…ああもうおバカ!

わたしが社長ならあんたを雇わない。なぜならあんたはバカだから。

なぜあんたが社長ならあのこ雇わないの?

なんでって?人の大切なレッスンの時間奪ったし?それに不躾でしょ?モデル事務所の評判落とすようなコ要らないでしょ?他の才能ある子があのこ1人に潰される。

あんたもわたしも変わらないは?

だってレッスン受けてる身なんだから平等じゃないんですか?

その一分に幾らお金払ってると思ってるんだ?は?

あの一分でどれだけ学べると?
みんな必死にやりくりしてレッスン受けてるんですよ?安くないでしょ?一回のレッスン代。

あーね。

あんたね、もうね。
中途半端な自己否定もうやめなさい?

あのときそんな風に口をついてでたならそれがあんたの本質なのよ。

ええっ?完全にケンカ上等みたいになってましたけど?

それでいいのよ。
それがいいの。あんたにはそんくらいでちょうどいいのよ


だからちちょろっと可愛いとかチグハグだし、
そこそこ見れるもおかしな話しなのよ。
まあまあいいも違うのよねー。


だからパリでぶちかましてきたらいいのよ。
あー楽しみ。ついていこうかしら久々に。
パリに行くのもいいわね。

え、先生来るの?

マーシャルも行かないかしらー。
ちょっと連絡してみようかしら。








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