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裏ひよこ日記。3ヶ月ぶりのひよこごはん。

テオが雑誌をみながら何やらオレをつついてくる。
ね、ここ。読んでみてよフレッドさん。

男性が本気で捕まえたくなる女性

手に入りそうで手に入らなくて、か弱そうなのに 気が強い、一度決めたら頑固。行動が早くてスキルアップに努めてる。男よりスキルアップで放っておくと何をやらかすか分からない。

ふーん。

ふーん。て。感想それ?

そういうもん?

これさー、思い当たるヤツいるでしょ?

さあ。

すっとぼけたが心当たりがありすぎる。
心当たりしかない。



昨日からひよこがこっちに数日間だけだが帰省している。ひよこはパリに着いてその足でMKHDに向かい、ミラ専務と留学を延長したいので引き続き休職ができるか、難しいなら退職を考えていることやについての面談や、総務に書類提出や、休職中の通院給付申請や評議会関係のなんやらで夕方近くまでここにいた。

帰って来たばかりなのに俺達ふたりと友達も交えての深夜近くまでのディナーとかもあって帰宅するなり洗面台に直行してメイクを落として
手渡された水をごくごく飲んでそのままリビングのソファで撃沈した。

いつものようにソファで寝入ったひよこをアルベルトが抱き上げてベッドに寝かせにいった。

ひよこちゃんが軽かった。

は?

軽くなってた。

そうかそりゃよかったな。

大丈夫なのかな?無理してないか心配になる。
…ひよこちゃんと向こうで暮らせないかな。

本人がうんというまで我慢しろ。
うんと言わせる方向になればいいんだよね。

…ハラグロすぎるぞ
同じこと考えてるくせに何をいっているんたか。



そりゃ疲れるにきまってるだろうよ

リビングに放りだしたままのキャリーと荷物。

リビングのテーブルにはヨハン先生から渡された10冊の本の中にはチェコ語とドイツ語の子ども向けの語学学習教材まで入ってた。

政治・経済、文化人類学、歴史、哲学、地政学、美術史、語学…アルベルトはパラパラとひよこの本をめくってため息をついていた。

ヨハン先生ひとりでここまで教えられる?

何人か専門がいるはずだぞ?
時間割があるだろ?座学は他にも発音やスピーキングレッスンにフィジカルトレーナーがついてるだろ?
ヘルスだと栄養士とか、その月の食べる量や素材や調理方法にカロリーとか細かく決められてる。だからアイツは3食自炊してるだろ?外食するとカロリーオーバーになるからな。

そりゃ学費足りなくて当然だよね。

誰が見てもそうだろ。3ヶ月コースの基礎レッスンだったらはじめのひよこだけの貯金でどうにかできたさ。でもアイツがそんなんで満足するわけがないだろ?


ヨハン先生はいい生徒に巡り会えたんだね。

…3ヶ月であんな感じになるんだから凄腕には違いないだろうなあ。

ついていけてるひよこちゃんもすごいよ

ついていけてるていうか、ついていくのに必死なんだろ。だから帰ってこないんじゃねーの?

ひよこちゃん。今日帰ってきてますますキレイになっててびっくりした。

な。


オレらはますます稼がないとなー。まったく俺達を稼がせるのがうまいよなーひよこさまはよー。

ハハハ。


ま、守り抜かないといけない責任感をもらった。て事に感謝しないとな。

ガイドの役割使命を全うさせてくれてるんだからひよこちゃんも相当じゃない?

そーかもなー。

アレはどうなった?

売り抜けた。

お前のとこの事業は?

悪くない。

なら順調てとこだな。

てな話をひよこが寝た後しばらくふたりで静かに飲みながら話をしていたのだった。


おはよー。朝ご飯できたよー!!

3ヶ月だらしない生活を送っていた俺達は3ヶ月ぶりに朝食をたべた。

アルベルトはパンにスープ
オレにはおにぎりと味噌汁だった。

分けて作ったの?
アルベルトはひよこが用意してくれた朝飯に目を輝かせている。


スープは夕ご飯にも使うし。おにぎりとお味噌汁はわたしが食べたかっただけ。
わたしがいる間はごはんつくるね。
ふたりなんにもしなかったでしょー。わかるんだから!!

たはは…汗

そして朝早く起きたひよこは俺達ふたりに3ヶ月ぶりの弁当を作ってくれていた。

昼休みに社食でランチボックスを開けるとハムとレタスとチーズ。卵。いちごジャムにイチゴの3種類のサンドイッチに蒸したブロッコリーとじゃがいものサラダに人参のグラッセ。保温スープジャーには具だくさんのチキンスープが入っていた。

めっちゃうまそー。ちょうだい。

断る

くれるわけがない。ひよこのサンドイッチだからくれるわけがないだろ。

あ、そうだなフィアンセのお手製のランチボックスならおすそ分けなんてあるわけがないわな。

随所でからかってくるが知らん顔するしかない。


からかわれなかったとしてもランチボックスは死守する。ひよこのごはんが一番美味しい。

昨日のカフェの去り際に婚約してるから問題ないだろ?と聞こえるように発言し、ひよこの手をがっちり掴んで離さなかったのは自分だ。

朝出社したら行く先行く先で昨日の話をされるのだ。わかってはいたが。

さっきもラボの奴等と一悶着あったばかりなのだ。
ラボには打ち合わせでオガタとエルンストを交えて予算打ち合わせが終わり、雑談していたら応接室のドアが急にバンッと開いた。

マネージャーの分際で担当と結ばれるなんて…どんな手をつかったんだ!
こっちはひよこ姫が休職してるから辛すぎて死にそうなのにお前はのうのうと!!

しかし昨日の姫はガチやばかった。
それには礼を言う。

??そりゃどうも。

オガタは死ぬほど申し訳なさそうな顔をしてオレに平謝りをしていた。


エルンストはラボからの帰り道

え、独身オレだけになるわけ?と言い出した。



もうすぐしたらひよこが評議会の呼び出しとボスの面談でまたココにやってくるのでオレは下に降りて待っていた

そしてエントランスホールでまたうざ絡みが始まった


一枚でいい!姫の写真を提供…


断る。ガイドとしても婚約者としてもお断りだ。


アカデミー時代から推してたんだ!!


なら研究にそのエネルギー回せ。いい加減あきらめろ。

フレッド?

ヨハン先生の言いつけをきちんと履行しているひよこは今日はヒールを履いていて昨日とはまた全然違うエレガントシックで全体を纏めており、エントランスホールで抜群に目立ち、
華麗にタッタッタッとリズムよく歩いてきた。

よかったいた。

待たせた。行こう。ボスが待ってる。

ひよこはオレが揉めてたヤツに軽く微笑んで会釈した。

ごめんなさいお話中に。
これから役員と面談が入っているので彼をお借りしてもよろしいかしら?

は、はい!

ありがとうございます。
それでは失礼します。

ひよこはオレの腕に手を添えてふふって笑いかけた。

まわりにいた社員達がフワァ素敵てため息をついてるのが聞こえた。

ヨハン先生にいい報告できるな?

まだまだ。ここからが勝負だから。

ここから?

そう。ここからよ。

今日はなんかひよこが頼もしく感じる。




あのひとラボの人よね?

ああ。

























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