ひよこ日記。お値段が張ると怯んでそっと棚に戻すオンナ
今ヨハン先生から借りているアパートメントにフレッドとアルベルトが来ている。
わたしにはちょうどよいサイズ感なこのアパートメントも背が高い2人がいると手狭に感じる。
コーヒーを飲みながら軽く説教をくらう。
アルベルトは意地っ張りで可愛い等と多少ネジが飛んだ発言をしているがこれが彼の通常のモードであるため誰も何も突っ込まない。
フレッドはわたしが一番苦手意識を持っている誰かにお願いすること、誰かに助けを求めること、誰かを頼ること(それらはお金と愛情に関する事がほとんど)という3大女子愛嬌ムーブができない事を逆手に取られて罰ゲームと称して延長したい留学費用や生活費やその他経費がかかる事を全てこっちで払う。返済させてやるもんか、一円たりとも返済させてやらない。ざまーみろ!と笑った。
それから要らない!と突っぱねてつくらなかったクレジットの家族カードまで手配してきた。
限度額がないカードなんて持ちたくない。怖くて使える気がしない。
しかも毎月生活費まで振り込みしてくるからな。とまできた。
たぶんほとんど全ての人はありがたいことなのだと思うのだけど、社会人として恥ずかしい事ではないかと思う。
自立したい系わたしとしてはそこはかとない屈辱。
しかし現実的にはとってもありがたいことなのだ。私は留学VISAだから労働はここではできない。貯金だって残り残高が怪しくなってきそうだった。定期を崩せばどうにかなるのにビタ一文手を付けてはならぬ!と反対され、ならば一旦打ち切りして復職してまたお金を貯めてこっちにまた来る事だってできる。だけどノン!途中で切り上げたらダメだと言われた。ヨハン先生だって暇じゃないんだ。
確かにヨハン先生のスケジュールを抑えるのは大変そうだ。あのオネエ先生はなんだかんだといろいろ忙しいのは事実だった。
なのでここで勉強を続けること→愛嬌ムーブを展開してみろ→は?できねーのかよ?今やらないでいつするんだ?→なら罰ゲームだ!はフレッド的にはしてやった!ざまーみろ!なのだった。
この一連のフレッド的自称嫌がらせはフレッドの特上な愛情と優しさだと思うのだが、わたしは全てにおいて絶望してる暇がないほど追い込まれた。
やらないほうがよかったとかにならないためにやれる事は目一杯しないとオンナが廃る。
しかし罰ゲームはこれで終わりではない。アルベルトが買い物に行くから一切口を挟むの禁止ゲームが待っていた。
わたしに必要なものを買うのに発言権はないらしい。これもなかなかなストレスだ。
いつもならこれひよこちゃんにどうかな?て優しーく微笑んで選ばせてくれるアルベルトが意見すんな。口を挟むな。と言っている。こっちのがより罰ゲーム感がある。
フレッドはヨハン先生の事務所に建替てもらった代金を支払いにしにいった後にレンタカーを借りて、電気屋とインテリアショップに行くので後からデパートに合流するとアルベルトにいっている。
なんとなくイヤな予感がしないでもない。アイツ住んでもないプラハの電気屋とインテリアショップに何の用事があるというのだろう?車を借りてまでいかなければならないて何があるんだ…?
今日の洋服とてもシックでひよこちゃんにピッタリだね。お化粧もいつもと違うね。よく見せて?とアルベルトがニッコリした。inデパートのフロント玄関前
え。そう?
ああ。ほんとうに綺麗だ。
ちょ。アル!
だめ。これも罰ゲームだから。
抱きついたままアルベルトが動かない。
罰ゲームを良いことにアルベルトはたくさんの人が行き交う道の真ん中でやりたい放題だった。
ねえ、もういいじゃん。お店いこ?
なら最初はダイヤ買うかな。
え…やめて?
3カラット以上ね。
無くしたら困るんで。
なら5カラットね?
いや、いらないから
ひよこちゃんの意見は聞いてない。
ピシャリと言われてしまった。
ウソだよ。でも、ピアスは買おうね?
ニッケルとかがかぶれの原因ならちゃんとしたやつ買おう。
…ありがとう。
しかしながら高級宝飾品コーナーは心臓に悪い。薄暗い。そしてお客がまばら。しかも値段も見せてもらえない。店員さんに彼女に値札は絶対に見せないでとか言ってるし。
どれが好き?
…その小さいやつ。あんまり大きいの好きじゃないの。日常使いできるやつがいいの。
そっか。そうだね、日常使いしてもらいたいからそのダイヤとこのゴールドとあのサファイアとそこの奥にあるルビーください。
宝石てくださいて簡単にいってプチプラみたいに買うようなヤツだったっけ?
買い方がおかしい。絶対におかしい。
小さいショップバッグを持って次は寝具コーナーに来た。くらいにアルベルトのスマホにフレッドから電話がきた。サイズがウンチャラとか言っている。サイズ…何のサイズ?
出てきた店員さんにベッドカバーとシーツ、マットレス、掛け布団、枕と枕カバーが欲しいといっている。
どなたが使われます?
わたしの妻です。
店員さんがあちらのアレはいかがですか?
素材はなんでしょう?妻は軽い化繊アレルギーがあるみたいで体調がよくないときに痒みが出るんです。などと話している。
でしたらシルクをおすすめします!もしくはオーガニックの綿。と店員さんが、俄然張り切りだした。これは上客捕まえた時の店員モードでだ。
どちらもこのサイズのモノはありますか?ああ掛け布団は軽いダウンでお願いしますね。とかいいだした。わたしがアパートメントで使っているのはいわゆるインテリアのディスカウントショップのヤツでそれの中でも特におサイフに優しくてかつまあまあ見栄えがしそうなものを一生懸命ワゴンから選び倒したヤツだったのだ。その時もアルベルトはお買い物についてきてくれた。何か言いたげな表情だったが払うのはわたしのお金でありアルベルトは何もいわなかった。アクセサリもそうだった。プチプラの可愛いアクセサリを可愛い!て叫んでいくつも持ってキャッシャーに並んだわたしをアルベルトはニコニコしてみてた。
あれを再現されていらっしゃるらしい。
で、店員さんが2人がかりで持ってきたのはシルク100%のツヤッツヤなシーツにカバーに枕カバー何点かと、綿100%のさらっと肌触りが良さげな可愛い感じの布団カバーセットだった。枕は頸椎の角度を測って選ぶらしい。マットレスも腰が浮かないアスリート御用達なマットレスがあるらしくそれを激推しされてわたしは寝たり横になったり起きたり首のカーブ測られたりとまあまあ忙しい。 そんなような事をしているうちにアルベルトは寝具の買い物を済ませたらしい。わたしの計測結果とわたしの好みを総合してこれがいいんじゃないか?なやつをアルベルトはスパーンと支払いした。
カバーは何個かったの?
洗い替えがいるから各3つずつかな?
…そうなんだ?
じゃ、次はパジャマだね。
なんか疲れてきた。なんて言えない。なんせ罰ゲーム中だし。
寝具コーナーのとなりにあるホームリラクゼーションコーナーでまたしてもサイズ確認して
それからシルクのパジャマ2枚に綿のパジャマ2枚にリラックスウェアを3枚にタオル10枚、バスタオル5枚、ハンドタオル5枚、シルクのウォッシュタオルと綿とリネンを各1にシルクのナイトキャップにシルクのヘアバンド、スリッパ3種類にヤギ革のルームシューズなどなど怒涛の買い物は続く。恐ろしいくらいに膨れ上がるモノ達にわたしは怖くて仕方ない。
歩き疲れたのでフロアの奥にあるカフェで一休みしているとフレッドがやってきた。
駐車場にレンタカー停めてきた。
かいものは?
あらかたかったよ。
こっちもな。帰って取り付けないといけないからまあまあ忙しいぞ。
取り付け?なにを?
帰ってからのお楽しみ!
あー。忘れてた。ビオショップに行かないと。
何か買うの?
洗剤とかいろいろ。あ。忘れてたハンカチもだ。
りょーかい
…ハンカチ。
スワトウのハンカチが目の前にバサバサ置かれてる。
いや、スワトウて。洗濯どうすんのこれ?
こわすぎる。
やっぱ白だな。
だねえ。
これ、柄違いで5枚ください。
スワトウを?スワトウやぞ?
2人がくるっと振り向いた。
だからなんだ?
ひよこちゃん。罰ゲーム中でしょ?
ヘロヘロだったが買い物はまだ続く。
メイクコーナーにいる。
フレッドはなんかの紙を持っている。
あの、この何番と何番とこれとあれとこれは在庫ありますか?
店員さんが大わらわで在庫確認してカウンターに並べてる。それは先日メイクアップアーティストさんがわたしにおすすめしてくれたもの全て+化粧ブラシ一式にコットンになんやかんやであった。
これ全部ください。
!!!待て待て待て。いくらすると思ってる
フレッドはプリントをみながらメイソンピアソンのブラシや櫛やヘアピンやなんやかんかをどんどんどんどん買っていく。
かなり大きめサイズなショッパーバッグに昨日おすすめされたモノが全部入っていて+それが複数個ある恐怖といったらない
恐ろしい罰ゲームだ。
借りてきた車は某ドイツ車のSUVで荷物がパンパンである。全部私の荷物。こわすぎる。2人破産したらどうしよう…
2人が破産したらどうしよう…
は?あるわけねえだろ。新車一台分にもならんわ。こんくらいでガタガタ抜かすな。
…すいません。
帰り着いたら電化製品がたくさんあった。
そして照明とかカーテンとかバンバンやりかえられていく。海外仕様の母国の炊飯器は泣けた。ブレンダー、ミキサー、イイナと思いつつ値段みて戻したヘアドライヤーにヘアアイロンにル・クルーゼのお鍋にキャセロール。湯沸かしポットにエスプレッソマシン。
こわ。こわっっ!!返せない。わたし何年かかるかわからない!
いそいそとアルベルトが買ってきたシーツやカバーでベッドメイキングしている。ベッドだけなんかエロい。
そうするとラグとか家具とかが俄然合わない。
な、やっぱそうなるよな?
じゃ、いくか。
どこに?
ソファとテーブルと椅子にギャッベ買いに行くぞ。
…ギャッベとは?
カーペットだよ!
なーる。
ソファを選ぶ頃になるとわたしは感覚が麻痺したのか座り心地と色と形だけでこれが好きといった。テーブルも丸い可愛い形に椅子も可愛かった。家具は口を挟むことを多少許された。
そうだな。これだな。
そしてわたしは知らなかった。部屋で一番値が張るのがギャッベになることを。
赤い可愛い柄の絨毯だった。素朴でほんわかしてとにかく可愛いかった。
サイズ的にあうな。
部屋の印象も上がるね。
よし、これだな。
すいません持ち帰りするんでこれください。
家具は在庫限りの1点もので選んだの全部買うからすぐに配送してとセレブ発言したフレッドの何かに気圧されたインテリアショップの人がすぐに持っていきます。と当日の夜に来た。
恐ろしい罰ゲームだった。
こんくらいでびびったらお前のレッスンの意味がねえんだよ。慣れろ。
これ、帰るとき荷物どうするの?
配送すりゃいいだろ。
まだ当分ここで暮らすんだ。
ちゃんとしたもの揃えろ。
ありがとうございます。
ま、お前にゃちょうどよい罰ゲームだったな。
気が変わったとかで返済しろと言われたら失踪しますから。よろしくお願いしますね?
ハイハイ責任とって扶養家族として大事に大事にしますんで、一円たりとも請求しませんので、お前こそ覚悟するんだな!!
2人とも?ごはんにしよう?
作り置きしてくれたフレッドとアルベルトのおかずをアルベルトが温めなおして食卓に並べてくれてる。
はーい。
3人でごはんはひさしぶりで嬉しいなあ。
ほんとだな。
2人どこで寝るの?ベッド1個しかないんだけど。
…誰かがソファだな。
じゃあわたしが。
ハァ?だめに決まってんだろうが。
アルベルト。ポーカーで勝負しよう。
もう絶対にひよこちゃんを抱っこして寝るて決めてる。
…いいから勝負しろ。