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ひよこ日記。3ヶ月ぶりにパリに帰ってきた

正午に近い時間にシャルル・ド・ゴール空港に着いた。3ヶ月ぶりに帰ってきたパリ。

スマホにメッセージが入ってた

渋滞にハマったので時間つぶしてて。

わかった!て返事した。


前の日までヨハン先生に会社でぶちかましてこいとレッスンでしごかれまくっていた。
夜はヨハン先生の知り合いの財界人と文化人とキュレーターとどっかの富豪の老夫婦と大学教授相手にわたしはテーブルマナーのテストをされ疲れて明日パリに帰るのにどーしても今話を聞いて欲しくてフレッドにその日合った出来事を延々と話し、褒めて!を強要し、よく頑張ったな。エライ。ほんとうに頑張りやさんだ。あのヨハン先生のレッスンについていけるぴよぴよはスゴイ!などなどを引き出したのだった。
褒めちぎらせるだけ褒めちぎらせて眠たくなってきたからもう寝るというと、フレッドはちゃんと寝てちゃんと飛行機にのるんだぞ?と急におかあさんモードになった。

わかったおかあさん。ありがとう

おかあさんじゃない。

また明日ね。

おやすみ。

聞いてくれてありがとう。

どういたしまして

…フランスてこんな感じだったけな?
たった3ヶ月だけ留守したのに不思議な感覚だ。
プラハはほんとうに美しい街で建物も文化財級のものがいっぱいでおとぎ話にでてきそうな場所だ。せかせかしてなくてゆったりした時間が流れてる。わたしがいま働いていない。というのもあるけれど。

時間を潰すためわたしはベンチに腰掛けてヨハン先生からパリにいる間に読んでレポートを書きなさいと渡された10冊の本のうちの一冊をキャリーから取り出して読み始めた。
地政学、歴史社会学、哲学、小説、美術史、経済、文化人類学、雑学と多岐にわたる。

30分ほど地政学の本を読む。

もうそろそろ到着するかな?キャリーを開けて本をしまい込む。空港の到着ゲートをあてもなくウロウロしていたら声をかけられた。

落としましたよ?
男の人のそんな声が後ろから聞こえたから振り向いた。

あれ、わたしなんか落としたのかな?
でも地面にはわたしの落とし物はなかった。

あれ?…

声がした方を見上げると声をかけてきた人が羽がどうしたとか天使だよね?とかよくわからない事をいっている。

わたし、天使じゃないですよ?
というけど、こんなかわいい人が天使じゃないなんて信じられない。運命だ!とかなんとかいっている。

困った。というか面倒くさい。




そしたらタイミングよくひよこ!て声が聞こえた。

よかった!

振り返りもしないでフレッドのところに一直線にはしっていった。

ただいま!

おかえり、待ってた!
さっきのやりとりを見てたのか見えたのかフレッドは人前ではほとんどやらないぎゅーをした。

おそい。文句の1つも言いたいものだ。

ごめんな。

いいよ。許す。

さ、いくか。

いつものように当たり前のように手を繋いできた。迷子対策だったそれは今は違う理由に変わってる。

駐車場まであるきながら会社のアレコレを聞く。

3ヶ月ぶりに来た会社もなんだかわたしには違うようにみえる。

こんな感じだったっけ?

お前にはそうみえるんだな。

会社ではいつもビミョーに離れた距離感を保っていた。もしかしてはじめてかも。2人だけでこのカフェに来たのは。

カフェはピークタイムを外して来たつもりなのにまだまだたくさんのひとがいた。

わあ、わたしこの中の一人だったんだ
新鮮な感覚。

センパイ!
ハンナちゃんが走ってかけよってきた。

ハンナちゃんだー、今からお昼?
はい!センパイめっちゃキレイになってる!

自分じゃわからないけどなんか嬉しい。
ありがとう!お昼一緒に買いにいこ?
はい!

フレッドの分とわたしの分と一緒に買って会計を済ませてテーブルに戻る。もちろんヨハン先生のトレーニングは守っている。
歩き方に気をつけて、立ち居振る舞い、着席。
よし。まあ、及第点てとこかな。
今日はきちんと髪もセットしてるしお化粧だって丁寧にしたし、洋服もスタイリストさんに選んでもらった。


行き交う人がチラチラ私達をみてる。休職中のわたしがカフェにいたらそうなるよね。

でもなんかいつもと反応が違う。

フレッドは会社では見ることがないゆったりした雰囲気を漂わせている。いつもの鋭いピリッと厳しい感じが今はない。

なに?
なんか今日はリラックスしてるっぽいなー。て

そうか?

そう?
それよりヨハン先生がみたら喜ぶんじゃない?言いつけ守ってるし。

一発ぶちかましてこい。て言ってた。

ハハハ。いいな。それ。

でもさっきのは及第点てとこかな。

おーおーバンバンやって身につけろ。楽しみにしてる。

そんな話をしていたらエルンスト先生から化けたなと言われ、テオからはサンドイッチを横取りされ、ギヨームからも同じで、ミシェルとマリに至ってはチューをされ、ひよこ吸いと称して散々匂いを吸い込まれた。いつもと変わらない扱いに安心した。

はー、いい香り!ひよにぴったり!どこの?

売ってないよ。
マジ?オーダー?
みたいなものかな?1

世界で1つだけのわたしだけの香りね?
やるじゃんひよ。マリちゃんがぎゅーをしてきた。

いやもうめっちゃいい香り。マジひよのための香りって感じ。いい仕事するわあ。

うん、これとっても気に入ってるの。
大好き。

わたしもこれ好き。それをつけてるひよはもっと好き!だーいすき!

ミシェルー。
ひよー


カフェを出る時に普段と同じように手をつないできた。

え??大丈夫なの?

なんも問題ないだろ?婚約してるんだから。

わざと聞こえるように言わなかった?いま

さあなあ。どうだかなあ

香り褒められたね?

アレは嬉しかったな。結構作るのに試行錯誤したんだ。

ありがとう。ほんとこれすごく好き。
なくなったらまた作ってくれる?

もちろん。

次はどんな香りが似合うようになっているのかたのしみだな。

ほんと。どうなっているのかな?


その後のミラ専務の面談も他部署の挨拶も
全部フレッドは一緒に来てくれた。

評議会の面談はガイドとしてフレッド一人が呼ばれた。

なんか私のことで言われてたら申し訳なさすぎると息が詰まりそうになったけど、
心配するな。とラベンダーのキャンディーをポケットから出してきて2人で食べた。

評議会の尋問?が済んででてきたフレッドは晴れやかな顔をしていた。

なにか書類を持っている。
わたしのアレコレを手続きをしないといけないらしい。

オレも手続きしないといけない。

フレッドの手続き?

そう。

なんか変わったの?

変わるらしい。


ぴよぴよ。
うん。

あのな。クリスマスの事は覚えているか?

忘れるわけないじゃん。


評議会からはだな。

お互いを助け合いお互いを慈しむように。ってさ

それはどういう意味?

誓いの言葉はしっているか?


誓い?

まー、例えば1つ例に取ると、
その健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも
なやつ

聞いたことある。


これをどういうときに言うかは知ってる?



まあ、うん。

ふたり助け合ってお互いを思いあって大切にしろってよ。

それと手続きと何か関係があるの?

そういう風に生きるのをあっちが承認したってことなんじゃないのか?しらねえけど。

で、何の手続きなの?

さあな。まだちゃんと読んでないから。
評議会ではお前がとても気になるらしい。
明日、お前、呼ばれてる。
明日もここに来ないといけなくなった。

ええっ!

いいじゃねえか、ヨハン先生がトレーニングしてくれたの存分に披露できるぞ?

まあ、そうだけど。

けど、どうして?

さらに上の保護者らしい。
オレらのもっともっと上の保護者だな。

そんな人がいるの?

いたみたいだな。オレもお初だ。自分から出てくるなんてな。珍しいな。
でてくることはほとんどないのに。
あのひと達はオブザーバーだから。
干渉してこない。それなのに…

ぴよぴよお前、ヨハン先生はお前にとってすごく意味のある選択だったのかもしれないな。
特別査定枠リストにお前は入ったんだ。

特別査定枠?

お前ががんばって自分で道を開こうとしてるからより大きなサポートがはいるんだろうよ。

ふうん。て、え!そうなの?


































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