ひよこ日記。モンテーニュ通りからサマリテーヌ
さる曜日の日、わたしはフレッドと買い物に来てた。わたしが先日大変なご迷惑をかけたのでそのお詫びみたいをしようと思っている。
フレッドは自分の持ち物をそれはそれは大切にしていて、1つ1つ思い入れがあるらしく、メンテナンスを欠かさない。それを知っているので先日汚してしまったジャケットの弁償をしなきゃとこちらとしては全財産を差し出す位の気合と覚悟を持って今回のおでかけに臨んでいる所存である。
怪我が治って改めてジャケット汚してごめんなさいを会社帰りにアンジェリーナカフェでモンブランとショコラショーでごちそうしながら謝罪したのだが、フレッドは別に大したことない。したくてしたことだ。と、バカだなあ。とふっと笑って軽くデコピンされた。
しかしやっぱり気にかかる。
フレッドとわたしはは秋も終わりに近づいて風が冷たくなり始めたモンテーニュ通りを歩いている。ここは高級ブティックがずらりと並ぶ通り
ほんのちょっと先を歩くフレッドが振り返ってこっちをみた。
見たいものがあるんだ。ちょっと入っていいか?
もちろん
高級ブティックのドアを開け先にわたしをいれて後から入るフレッド。
…ほんとこの人こういうのサマになるんだよなあ。
店員に値踏みをさせない態度と振る舞い
いやぁなかなかそれできるやついないって。と思いながら。
ブティックはいい香りがして、店員さんも大変礼儀正しいがやっぱりそこはそれ、見てないようで見ていてチラッとみて一瞬でどのランクの客層かというのをチェックしてる。ぽい。
ぽい。というのはあくまでわたしの体感だから確証はないけれど。
フレッドはそういうのが日常で当たり前の世界に生きてきたから気にも留めてない。
あくまでにこやかに穏やかに。ショーケースの上にあれこれと説明受けてる
なんていうかこれわたし勉強させられてんのかな?見とけよ?みたいな感じで。いつも一緒にいる人なのになんだか遠い世界にいるような気にもなってしまう。
ふんふんと話を聞いていたフレッドがちょっと。と目線を送ってくる。
気に入ったのあったの?
まあ、候補の1つ。
それはお財布だった。
お財布買うの?
まあ。で、どっちがいい?
うーん。そうだねえ。わたしはこれが似合うな。ておもう。
ならこれは?
うんこれも好み。
お前ならどれ?
わたし?これかなー。
へえ、そうか
え、決めたの?
ああ。まえから見てたから。
そうなんだ。
あ、これわたしが。
ああ、それは後でいい。お前向こうで待ってろとやんわり制されソファに座らされた。
ソファに座らされるとほんの少しのあいだにお茶を出された。アルベルトとも買い物についていくがこの二人の買い物についていくとどこのお店もお茶とお茶菓子でもてなされる。絶妙なタイミングで紅茶や珈琲出してくるってなんかもう別世界。
お茶を飲みはじめたらスタスタとフレッドがやってきた。と、同時に別の店員さんがフレッドの為のお茶を出してきた。素晴らしいタイミングである。
あれ、買ったの?
ああ、今包んでもらってる。
ふう。と一息ついてティーカップソーサーを持ち上げ音も立てずに紅茶を飲んでる。
正直めちゃめちゃかっこよい。
ダウントン・アビーの世界がここにいる。
とても優雅で品が良い。
なに見惚れてる?としれーっいうが実際見惚れてる。
うん。見惚れてた
たまには正直にいうんだな。
仕草が上品だなーって見惚れてた。
惚れ惚れするだろ?(笑)
ほんと惚れ惚れする。素敵ねー。
クククッと喉の奥で笑ってる。
店員さんがショッパーバッグを持ってやってきた。
さて、行くか。
お店を出るとフレッドが30分ほど歩くけどいいか?と尋ねてきた。聞けばサマリテーヌに行きたいらしい。ここから四キロ位ある。
天気もいいしな。しばらく散歩してないし。
たまには付き合え。
うん。いいよ。
とりとめのない会話。冗談のやり取り。軽口をたたき合う。てくてく歩く30分なんてあっという間
途中立ち寄った手作りキャンディのお店でフレッドはここの棚からあっちの棚までのキャンディを一袋ずつ全部買ってくれ。と言った
は?
うん。それが俺への弁償
そんなんでいいの?
そんなんがいいの。
でもそれだったら価格が釣り合わないじゃん
いいんだよ。
わたしはよくわからないけどこっちからあっちのまでのキャンディを大人買いして全部をラッピングしてもらってフレッドにプレゼントした。
それからサマリテーヌに行って化粧品のあれこれとか香水とか洋服とかをあれがいい、これがいいとか二人でいいあいみてまわった。
それからパリの秘密の隠れ家的な存在の入り組んでかなり奥まったところにあるカフェの中庭でフレッドとフレンチプレスのコーヒーとショコララズベリータルトを食べた。
うー、やっぱうまいな。
おいしーいっ!!
来たかったんだがなかなか機会がなくてさ
ひとりでくるのもなんか違うてかさ。
そんなもん?
そんなもん。
ここのお代はわたしに払わせて?
もちろん。ごちそうされる気満々だけど?
良かった。
緑に囲まれた中庭で食べながら景色を堪能する。
ほんと静かだね。
ああ。
近くにいたテーブル席のお客さんたちが席を立って帰っていった。
あ、貸し切りみたいになっちゃた
ほんとだな。
ちょうどいい。
あのな。大事なこというからちゃんと聞けよ?
うん
ジャケットの件だがあれは俺がしたくてしたことだ。お前が気にすることじゃない。それにな、ジャケット一枚で弁償しろとか一言もいってない。冗談ではいったが本気に取るな。俺は服一枚くらいでどうのこうの言うせこい男じゃない。
はい
…それとなそれよりもっと大事なこというぞ?
な、なんでしょう
どこのなによりお前が大事。それ以外はどうだっていい。
仕事は?
は?あれは趣味だ。
趣味…あれが…あれ、趣味だったんだ…
ずいぶんとガチで働いてるから使命かなんかと思ってた。
んなわけあるか。そもそもあそこにいるのは
お前が働いているからだ。
…でしたね。
オレの仕事はお前のガイド。あと、一緒に生きる。パートナーだからな。
はい。
お前もオレにいうことあるだろ?
あ、そうだ、今年お前オレに手紙かけ
ただしラブレターに限る
…え
毎年毎年オレに手紙書かせてるだろ?
オレももらいたい。
あー…
欲しいの?
当たり前だろ!!
は、はあい
今年のクリスマスのハードルが高い。