裏ひよこ日記 プラハの濃厚ショコラショーとか
眉間にシワ寄せてパソコンとにらめっこしている。しょっちゅうかかってくる電話で対応指示出してる。かと思うと株の値動きみてたり新聞読んだり、イギリスの自分ちの仕事してたりとかはいつもこっちに来た時の見慣れた光景なのだが、今回こっちにやってきたフレデリック大先生は仕事用のパソコンも開かないし、電話にもでないどころかかかってきたエルンスト先生と話した後電源をオフにしてさらにぽいって投げた。
ソファでタブレットでお気に入りの心理サスペンスドラマを観て、自分で買い物してきたらしい何かでキッチンでなにか作り始めたかと思うといいかおりが漂ってきた。ポップコーンを作って食べながらまた溜め込まくって見れてないドラマの続きみたりとかしている。
ポップコーン…
いる?…あ、ダメだな。
ぴよぴよのごはんタイムは終わったもんな
くっ…
美味しそうなバター塩味のポップコーンをバクバク食べながら溜めに溜めまくった見逃し配信を一気見しているダラダラモードのフレデリック大先生。そしてそのまま寝落ちしてる。
わたしは起こすべきか悩んだが軽く揺すって起こすと寝起きでぼーっとしたフレデリック大先生はシャワーを浴びるべくよろよろとお風呂場に消え、頭や体を洗って髪も半乾きのまままたウトウトし始めた。
風邪引くよ?髪乾かしなって?
かわかして
仕方ないな。もう。とかいいながら髪を乾かしてやった。
ヤバイ食いすぎた。寝る…
ハイハイおやすみ。
しばらくするとわたしがつけてる灯りが気になるとかいい出したので
ルームランプを消してわたしも寝る羽目になった。
いつもと逆のパターンだ。
朝目が覚めるとフレッドはまだぐっすりおやすみになられていた。
マジ?!
わたしより早起きで、朝からテキパキテキパキ動きまくるフレッドがまだ寝てるのは風邪引いて熱があるとかそんな時くらいなので
わたしは寝てるフレッドの額に手を当ててみた。
熱はない。良かった。
わたしは毎日のレッスンを徒歩でヨハン先生の事務所に行っているのだが、支度してたら目が覚めたらしく顔を洗って歯を磨いて髪をラフに整えて服を着替えて当たり前のように事務所までついてきた。そしてじゃあまた昼にな!と行ってふらりと何処かに消えた。
お昼にアパートに戻るとお手製のランチが待っていた。今日はアボカドとクリームチーズとスモークサーモンのライ麦パンのオープンサンドでとても美味しかった。そしてまた午後からのヨハン先生のレッスンがあるので外出しようとすると用事があるからついでだと車に乗せてくれ、で、帰りも迎えに来てくれた。
そして帰り着くと家は綺麗に片付けられていて洗濯されて大嫌い過ぎる溜め込み気味なアイロン掛けまで終わっていた。
洗濯してくれたの?え?アイロンも?
オレの洗濯物もあるし
シャツにアイロン掛けしたいし
ありがとう。て、お、え?
わたしがタタタと走って自分が分けて置いたラタンの蓋付きのカゴの中のランジェリーちゃん達はちゃーんとそのままになっていた。
ちょっとホッとした。これまで洗濯されたらわたし恥ずい。
それに入ってる物にはふれてないから安心しろ
あの触られたくないとかじゃないのよ?
あれはシルクだから手洗いしないといけないし
わかってる。
そして夕ご飯も作ってあった。
生野菜ばっかだとからだ冷えるだろ?
バランスよく食べて、しっかり食べて巡りをよくしないとな?
夕ご飯はターキーと温野菜の付け合せとミネストローネだ。
スープをよそいながらデニムのエプロンをつけたフレデリック大先生
ヨハン先生がくれたデザートブックで
一個試しに作ってみたんだ。
え!ウソ!スゴイ!!
もっと褒めていいんだぞ?
もちろんです!大先生!!
お前宿題済んだのか?
うん。
じゃあ今日はデザート食いながら映画見ようぜ。
いいね
ソファに2人腰掛けて映画を見出したらフレッドはまたうつらうつらしだした
フレッド?
…貸して
ん?
そのままフレッドにわたしの膝を貸す事になった。
20分もすると足がしびれてきた。
重いんだが…
ちょっとフレッド眠たいならベッドに行きなって。
…うーん…
フレッドー?
わかってる
おーい?もしもーし?
眠たい…
ベッドで寝なさい
…寝る。
何故かわたしも巻き込まれ、抱き枕係にされてしまい寝入ったフレッドに抱え込まれて身動きが取れない。手を外すのに苦労した…
次の日。
あの人病んでるんでしょうか?とヨハン先生にお茶の時間に話したらヨハン先生ははあ??て顔した。
いいじゃない
いーっつも仕事で張り詰めてるんだから
緩んでるんでしょ。甘えてんのよひよこに。
役得じゃない。わたしが代わってあげましょうか?
と、笑いながらヨハン先生がわたしをからかう
真面目な話、いつも寝れないくらい忙しくしてたんじゃない?
みたいです。ここ1ヶ月位は特にそうだったみたいです。
気になるなら一回マチルダに診てもらう?
それもいいかもしれません。
それはそうと明日なんだけど、マーシャルの所でレッスンするからウェアとか準備してきてね?
はい
帰る時間にフレッドは事務所までやってきた
ごきげんよう、フレッドさん。
ご機嫌麗しゅう、ヨハン先生。
今宵の月は見事でしょうね。
まさか。月もあなたの輝きには敵いませんよ。
2人は古の貴族の様な挨拶を繰り広げている
今日はヨハン先生はフリル満載なシャツに黒の革パンというグラムロックのボーカルかヨハン先生しか似合わないかもしれない耽美で頽廃的な雰囲気を漂わせており、一方フレッドはネイビーのコットンニットを腕までまくって、ベージュのデニムにスニーカーというラフな格好をしていた。いにしえの貴族2人は当時の形式張った挨拶だけでものすごい空気圧を漂わせており、最初から庶民、平民で生まれ育った私はなんだこの空気圧?と圧倒されそうになった。
ぽけーっと2人を眺めていた私に気がついたのかフレッドは笑った。
何?もしや見惚れた?
まあ。
なかなかやるわね。
何ふっかけてくるかとおもったら
だってー、こういう挨拶できる人最近いないし
あぁ。
夜会ならたまにあるんだけどね。
夜会はそんな挨拶するんですか?
まあ、威嚇にはうってつけよね。
威嚇…
お見知り置きを。てやつだよ。
舐めんじゃねえぞ。て挨拶で知らしめるんだよ。
どんな世界なのよ。それ
ま、礼儀作法にどれだけ精通してるか、挨拶でそいつのクラスがわかるってヤツだよ。
こわっ
ひよこ安心しなさい。フレッドさんはガチ勢だから。
余計タチが悪いです…
オレよりアルベルトのがタチ悪いぞ?
あー、あの人はねえ。底が知れなさそうよね。
要注意人物ね。
要注意…
ひよこ、そんな意味じゃないわ。
興味深い人物ていう意味よ?
ああ
あ、そう。フレッドさん。ハーブには興味あって?
ええもちろん。植物の研究してましたから
ハーブも多少詳しいです。
まあ!ならマチルダの診察受けてみない?興味ない?
マチルダ?…ああ!先日のひよこに処方してくれた方ですね。診察受けられるなら是非一度お願いしたいところです。
マチルダに空いてる日聞いてみるわね。
よろしくお願いします。
さて、帰るか。
先生、今日もレッスンありがとうございました。明日もよろしくお願いします。
帰り道フレッドは何故かご機嫌だった
こっちのショコラショーは濃厚だな。
カフェに入って驚いた。
そうなの?
頼んだ物間違えたかと思った。モッタリして濃い。が、めちゃめちゃ美味かった。
良かったじゃない。
だからもう1回飲みたい。一緒に。いまから行かないか?
いいよ?でも夕ご飯どうするの?
ご心配なく。ちゃーんと用意してる。
おーっすっごい!今日は何作ったの?
今日のメインはサーモンだ。
えーっ!スゴイねー。楽しみー。
カフェに入り、フレッドが沼ったらしい濃厚過ぎるショコラショーを2つ頼んでテラス席でおしゃべりをした
今日はな、街をぶらぶら歩いたんだ
そうなの?
こっちに引っ越しするだろ?だからいろいろ見ておきたくてさ。
うん。
ミュシャの美術館にも行った。
あそこ綺麗よね。わたしも大好きなの。
1枚欲しいよな。
あれ、アール・ヌーヴォー興味あるんだ?
興味ないなんていつそんな事いったんだよ
そだっけ?
わたしミュシャの描く女の人みたいな外見に憧れてたの。
ほう
なんかこう…いいじゃない?柔らかそうでさ。髪とか柔らかそうでさ、肌とか白くてふわふわして柔らかそうでいいかおりしそうじゃない?
優しそうで
ふうん
あんな感じになりたかったわー
だからポストカード買って手帳にいれてるの。
そうか。
はこばれてきたショコラショーはモッタリして濃くてあったかくて涼しいを通り越して薄寒く感じるプラハの夜の入り口の時間にぴったりな飲み口だった。
美味しかったねー。と言い合いながら家路を急ぐ。
ヨハン先生とご挨拶合戦してた今宵の月は綺麗に輝いていた。
みてー!やっぱりプラハの街に月が映えるねー。
ほんとだな。
…ミュシャ
ん?
白くてふわふわしていいかおりで?なんだったけ?髪が柔らかくて優しそうでおんなのこーて感じがして憧れる。て言ってたな
うん
自分だってそうじゃないか。
…月が綺麗ですねえ。
まさか。今宵の月も素晴らしいですが、あなたの輝きには及びません。まさかご存じない?
ふは
頬を両手で挟まれた
うちのミュシャな女の子はリアルに触れる。
絵は絵でしかない。断然こっちがいいに決まってる。
あのショコラショーにはリキュールでも入ってたのだろうか
どうしましたか急に
まぁこのくらいはな。
ウソはいってない。事実を告げたまでだ
…ありがと。
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