ダンスパーティの夜 ③(Aのストーリー)
ダンスホールに音楽が流れだしあちこちで男女ペアになって踊ってる。
えらくスローテンポの曲が流れてきた。
悪友たちのイタズラらしい。
ボクは構わないけど、みたかんじ彼女は潔癖ぽいから
こういうのに怒って踵を返して帰るかもしれない。
あいつらめと思っていたら
なんの迷いもなく彼女はワルツのポーズをとった。
手を握りニの腕のところに手を添えて。
ワルツはからだを離すとポーズがくずれて踊れないからあいつらはそれを狙って選曲したのかもしれない。
女の子とイチャイチャするのは大好きだけど
この子に限って自分がそわそわするのは何故だろう
ワルツだからあたりまえにからだをくっつける
いつもなら何でもない事なのにえらくどぎまぎしてる自分に驚く。彼女の表情は変わらず。淡々としている。
音楽がはじまってステップを踏む
大概はじめの一歩で相手との相性はわかる。
絶対合わないと思った彼女とのワルツは
今まで踊った誰よりも滑るように滑らかに
ステップで引っ掛かることもなく彼女はボクにリードを預けてくれた。
あれだけ囃し立ててた悪友たちも取り巻きの女の子たちも踊り出したボク達をみて黙った。
ホールにはボクたちだけ。周りには誰もいない。
たった三分程度のワルツ
会話もしてない。
この子なんなんだろう?
不思議でたまらなかった。
曲が終わり、彼女がはじめてボクに微笑んでくれた
「じゃあ約束は果たしたわ。躍りが上手ね。いうだけのことはあるわね」
彼女は友達を連れてきて「じゃあよろしく」といい
飲み物をとって壁際にいった。
彼女が踊るのをはじめてみたやつらがたくさんいたんだろう男どもが騒然としている様子がわかった。
つつきあってる男たち。誰が最初に彼女に話しかけるかきめて彼女に話かけている光景がみえた。
ボクは彼女の友達と踊るには躍ったが
気が気ではなかった。
躍りが終わって慌てる自分をクールにみせるべくなるべく余裕綽々な感じで男どもに囲まれてる彼女のところにいった。
案の定彼女は憮然としていた。
「ありがとう」
「もう帰りますから。送ってくださらなくて結構です」
「時間だから帰らないといけないので」と
次々に取り囲んだ男達を、片っ端から断っていた。
やっぱりボクの知ってる女の子たちとは全然違っていた。
ボクの姿を見つけるとつかつかとやってきて
「あなたと踊ったから面倒くさいことになったじゃない!」とボクの足をガンと蹴った
取り囲んだ男たちはびっくりしていた。
ま、そりゃそうだよね。
「そりゃキミが綺麗だから仕方ない。男はそういうもんだ」
「バカなのかしら男って」
「そうなんじゃない?きっとバカなんだよ」というと
「わたしバカはキライなの。あなたもキライ。女をモノとしてみてるから」と
にべもなく言われた。