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ひよこちゃんと一緒

気が進まない…

でも予約入れてるし

行かないとだめかな?

わたしも一緒に行くから。帰りにどこかに寄って帰ろう?


病院は苦手だ。具合が悪いわけでもないのに
カウンセリングだなんて。


僕自身のことなどどうだっていいのだが、誰あろうひよこちゃんのためだと自分に言い聞かせて支度をする。

アルがそんな風に嫌がるの見たことないかも。
ベッドにちょこんと座って僕が支度する様子を眺めてる。診察終わったらどこに行こうか?何食べる?

僕はひよこちゃんを食べたいな

うん、それは今置いとこう。
何か食べたいものある?

さらっと流された。ちょっと面白い。

そうだな…考えてみる

ほんとうにいつみても素敵ね

嬉しいな。さあ、支度ができたよ出かけよう。

うん。

土曜日の午前中。僕たちは連れ立って
クレアのいる病院にむかった。

何度となくため息をつくのでひよこちゃんは
アル具合悪いの?と心配そうに僕をみる

手を繋いでくれる?そうしたら少しは気が晴れるかもしれないから。

ひよこちゃんは僕の手をギュッとにぎってくれた。

診察室にはクレアがいる。癒者と患者という立場であうのははじめてかもしれない。

やーっと来てくれたよね。私がどんだけいっても知らん顔なのにひよこちゃんのお願いにはあっさり

当たり前じゃないか。

言い切りが清々しいわね。じゃあ、これからあなたを診てくから。

ああ

必要があれば治療するわ。

わかった

ひよこちゃん、待合室でまっててもらえる?

はい。

あ…

どうしたの?なにか不安?

見抜かれたのか、にこっと笑ってふわっとハグしてくれた。母が子にするみたいに。

あら良かったわね

…さっさと終わらそう、クレア

治療という名のトラウマ療法は
僕をかなり消耗させた

診察と治療が終わったらどこかに寄る気も失せ家に真っ直ぐに帰ってきた。ベッドに倒れ込むようにして寝た。不眠症と合わせて治療してるのでこの治療はかなり効果的なのだろう。

目が覚めたらもう夕暮れ時だった

具合どう?ひよこちゃんがいた。

ベッド脇に椅子を持ってきて本を読んでいたらしい。

せっかくの休日を

いいよ、全然。

なにか食べる?食べたいものある?

…フレッドは?

部屋にいるよ?

…今日当番だれだっけ?

えっと、アル。無理しないで。おうちごはんがいいならわたし作るし、デリがいいなら頼むし。

…ひよこちゃんが作ったごはんがたべたい。

いいよー、なにがいい?

シチュー。

クリームシチュー?ビーフシチュー?

クリームシチュー。

他には?

思いつかないな…

じゃあシチュー作るね!

…ひよこちゃん

なあに?

今すごくしんどい

えっ?!大丈夫?おくすり出されてたよね?

出されたけどあまり飲みたくないな

今日ずっとここにいて?それが僕にとっては薬みたいなものだね

いいよ

でもごはん作りにいまからいってもいい?

もちろん

気弱になった自分を他人に見せる日が来るなんて。





















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