ひよこ日記。女王になるのも楽じゃないのよお姫様。
プラハの留学生活がまた始まった。
ヨハン先生は今日から中級コースだから
これからの話をしましょ。と
美味しいハーブティーとドライフルーツとナッツのオートミールクッキーを出してきた。
今日はアルベルトが不動産の事とわたしのレッスンの見学をしてみたいというので
ソファの隣にはアルベルトが当たり前のように座っている。
まずはそうね、総評からと行きましょ。
…どんな毒舌吐かれるか恐ろしいが聞いてみたい好奇心もムクムクと湧いてくる。
まあ、そうね。ちょろっと可愛いからそこそこ見れるようになったのは良かったわよね。
ありがとうございます。
で!も!それで満足されちゃ困るのよ。わかる?
はい、重々に承知しています。
わたしはね、あんたにもっともっとがんばって欲しいの。そこそこ見れるようになるだけでも大したもんだわ。だって最初あんたクソダサい選手権でシード権持ってる?てくらい鈍臭い感じだったんだもの。
あんたに似合わない服に髪にメイク。野暮ったいなんてもんじゃなかったじゃない。
…キタキタキタキタ!!
わざと野暮ったくしてわたしを審査してんのかと思ったわよね。ほんとにわたしを篩にかけてきたのかしら?とかまで訝しんだわよ。
…どうしよう。間違いなく貶されてるのにものすごく面白い。
はは
このコもしかしてわざと隠してんじゃないかって。
いや、多分それ普通で。
期待に添えなくてスイマセン。
だって考えてみなさい。わたしのホームページて検索に引っ掛からないようにしてんの。人が来たら困るから。
え?
検索に引っ掛からないように細工してんの!
あたしこう見えて忙しいのよ。することがたくさんあるの。仕事山程抱えてんの。だからそこら辺のブス相手にしてる暇ないのよ。万が一あんたみたいなトンチキに偶然見つけられたとしても、バカ高い授業料で怯ませるように仕向けてんの。あんたこんだけわたしに払える?て篩にかけるの。
それでうっかりわたしのとこに来た子にわたしのやり方でレッスンする。妥協したくないし。
この考え方についてこれる子だけわたしは教えるわ。
…わたし高いとかまで考えなかったです
はあ。
アルベルトは笑いをこらえてる。声にならない声で笑うのを我慢してるっぽい。
先生は隣にアルベルトがいるけど普段と変わらずマシンガントークを展開してる。
ひよこあんたさ。なんでそんなにわたしのレッスンにこだわるわけ?他にいくらでもあるでしょ?
えっ
ねえ、なんでなの?
えっとそれは。
なに?
ヨハン先生はお茶を飲みながらわたしの返事を待っている。
アルベルトがひよこちゃん。話しても大丈夫だから僕がここにいるのは忘れて。とかいってるし。
え…と先生怒らないできいてくださいね?
いいわよ。
ホームページ辿り着く前にいろんなサイトで探してました。
そうね
それでその、わたしスイスのマナースクールに交換留学させてもらったことがあります。
わかるわよ。あんた基礎はあるものね
で、他にも色々単発とか色んなレッスン受けたりしたことがあります。
ええ
で、その、先生だけが色鮮やかだったから。
は?
他の先生はみんな白だったけど先生は色がついてたんです。
へえ…
どこにいってもみんな同じような事しか言いません。えっと…なんか…そのなんて言えばいいのかわからないけどだいたいの先生はみんな決まった回答しかしないんです。
ふうん
先生はなんか変人だから良かった…ていうか
は?ちょっと!?
ブハッ。アルベルトがこらえきれない感じで吹き出した。
あ!その変人ていうのは最大級の褒め言葉です。この人なんか違う。ていう意味で。
どれだけ探してもみんな同じような事しかいわないし教えてくれない。だけどわたしの考えとはちょっと違う。違って当たり前なのかも知れないけど知りたいのはそれじゃないっていうか。
へえ
ホームページの先生の書いた文章がわたしにはコレだっ!て思いました。で、その持ってるお金をかき集めてレッスンを受けにきました。
…あんた
アルベルトは何も返事をしなくて微笑んだ。
で?
わたし失礼かも知れないけど先生の言いたい事がわかるんです。どれだけこの人まっすぐ自分の道歩いてきたのかな?て
やだ、あんた泣かせる気?
わたし先生の教える責任を取るて言葉に
この人はわたしに教える気なんだ。て思ったんです。だからわたしもやれることはやらないといけない責任を取るんです。
もう…
アルとヨハン先生はわたしをじいーとみてる。
わたし逃げませんから!引きませんので!
ああああ…
ヨハン先生は頭を抱えた。
まずかったかな。
アルベルトをチラ見するとアルベルトは
ものすごくキラキラしい目でわたしをみてた。
ひよこちゃんは強いね。アルベルトはしみじみしてる。
ヨハン先生ははああてため息をついた。
ひよこあんたね、
はい。
しかたないわね、こうなったら暖簾分けレベルで仕込まなきゃ
ひよこ、あんた今日から弟子ね。
弟子。
そ、弟子。あたしの知ってることぜーんぶを教えるからあんた弟子ね。もちろんレッスン代はもらうわよ。
わあ
で、あたしのかわりにMKHDで教えなさい。
会社辞めようかと。
ミカエルが許すわけないでしょうがっ!
なんで知っ
あたしのとこにも通知がきたわよ。
どうして?
ミーはしつこいのよ。
ミー…
古い知り合いよ。
来い来いてしつこいの。
あたしが万人受けするタイプに見える?
多分イケるんじゃ
ウソおっしゃい!
とにかくね、もうあたしはえこひいきの塊なの。万人受けなんて考えないわ。
わたしはわたしを追求したいの。
そこら辺のキレイレベルじゃ済まさないから覚悟することね。モブなんて許さないんだから
良かったね、ひよこちゃん。
あんたさ。
はい。
がんばってどうすんの?て言われてきたクチじゃない?
…キタ
そんながんばってどうすんの?付け足しばっかりしてどうするの?そんな事やってどうするんだ?て言われてきた方じゃない?
なぜそれを…
あんた、わたしと一緒よ。
ヨハン先生は遠い目をして回想するかのように考えながら話はじめた
あたし達の周りからみた付け足しに見えるようなレッスンは周りからは全く理解できないわよ。
…だってあたし達は付け足ししてるんじゃないの。そもそものあたし達に還るために削ぎ落とすためにやってるんだから。
あ…!!
気がついたらボロボロ涙がでてた。
やっぱりね。
道は長いし楽じゃないわ。
女王になるのも楽じゃないのよ。お姫様。
一生追求なの。こんなめんどくさい事誰もやりたがらないわよ。でもしたいんだから仕方ないわよね。だってあたし達が欲しいのは黄金の精神だものね。
です。
まあ。そんなめんどくさい星の下に生まれたんだからやるしかないわよね。
ヨハン先生はアルベルトの方を向いて
て、事で。出資よろしくお願いしますわね。とニッコリ微笑んだ。