なぜ、世界はトイレットペーパーを買いしめるのか
新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、トイレットペーパーの買い占めが報道されています。
この現象は、日本だけのことではありません。アメリカや中国などでもトイレットペーパーの買い占めが起こっています。トイレットペーパーの不足は事実でないのになぜ買いしめが起こるのでしょう。
トイレットペーパーの買い占めは、非合理的な行動です。なぜなら、トイレットペーパーを買い占めたとしても利得につながらないからです。しかし、買い占めは合理的な行動であるようです。
NIKKEI Viewsで東大の松井彰彦教授は、今回のトイレットペーパー不足問題を、ゲーム理論の「ナッシュ均衡」を参考に解説されています。
「他の人が買いに走れば自分が損をする」という不安が高まり、やがて、誰もが買いに走る悪い均衡へと移行する。、、、買い占めは一見、非合理的な行動にも映るが実は皆が自らの利益を追求した合理的なパニックである」と話されています。
面白いのが、トイレットペーパーが買い占めの対象になりやすいことです。「ないと困るもの」が買い占めの対象になりやすいそうです。ただ、買い占めは、「他の人がどう動くかの予想に左右される」とのこと。今回、 SNSによる情報により、「トイレットペーパーを皆が買いに走る」と予想させたことが買い占めを引き起こしたと考えられるようです。
では、非合理的な行動を合理的な行動とみなすヒューマンを、非合理であると気づかせる方法はないのでしょうか。
これについて「買い占めは意味がないと皆が思う必要がある」と松井教授は話されています。その鍵となるのが、情報だそうです。しかし、不足したものが目の前にないことにはなかなか信じてもらえないでしょう。
無いのであれば、作ればいい。
オーストラリアの新聞社は、新聞の中面をトイレットペーパー代わりに印刷して盛り込みました。
不足しているものを目にする、手にすることが買い占めを止めるひとつの手段かもしれません。マスクもハンカチを利用して代わりにする事ができます。
しかし、損失に対する苦しみは、得た喜びの2倍です。いつもあるものが無くなる苦しみは根強いでしょう。打開するには、オーストラリアの新聞社のような、いま手にできるようなアイデアが必要だと思います。