ショートショート「禁忌」

 私達の年代は、学校に入学してから最初に、「太陽」に関する禁止事項を教師から教えられる。

 ・「太陽を肉眼で直接見てはいけないこと」
 ・「太陽を電子機器で撮影しては行けないこと」
 ・「太陽を利用したビジネスをしないこと」

 これまでの歴史の中でこのルールを破ったものはおらず、きっとこれからもいないだろう。そうあの時の教師は言っていた。
 だがそんな話は嘘だ。いつかこの目で太陽を見てやる。捻くれ者の私はいつしかそんな野望を抱くようになっていた。

 教育を受けてから今日で10年が経つ。今日に至るまで何度も太陽を見てやろうと挑戦したが、無理だった。親や同級生と、私達には常に横に誰かがいてその目を掻い潜ることができなかった。もう無理なのかもしれない、と考え始めている。
 しかし、ついにチャンスが巡って来た。親や友人が全くいない日が来たのだ。
 ようやく見れる。私は昼の太陽が最も上る時間帯を狙い、見ることにした。
 
 そして私は太陽を肉眼で見た。


 あぁ、あの光って見えるのが太陽か。丸い形に白色の光。ついに私は禁忌を冒したのだ。
 そんな達成感に浸っていると、ふと体に違和感を覚えた。おかしい。目が太陽から離れない。

 そうか。これが太陽を見てはいけない理由か。と、私は気づいた。太陽は光っているが、その光の中に、私達人類を見ている者がいるのだ。そのお方と目が合ってしまった。禁忌を冒したことを知られてしまった。
 もしかしたら、これまで太陽を見た者がいないという話、あれ、半分は嘘なんじゃ無いのか。見た者は全て、存在を抹消されたのではないか?いや、そうに違いない。私もきっと、今からそうなるのだから。
 
 太陽にいるあのお方は「神」だ。私は神を視認してしまった。
 神様が、太陽が私を睨んでいる。
 ルールを破った罪人が今裁かれようとしている。
 

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