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コシノジュンコ「原点から現点」参加レポート

 今回私は大阪府にある「あべのハルカス美術館」にて開催されているコシノジュンコさんの展覧会、「原点から現点」に参加してきました。

 恥ずかしながらこの展覧会に訪れるまで、コシノさんのことは、何度かテレビ番組で拝見したことはあったものの作品などは全く見たことがなく、コシノさん自身のことについてもほとんど知識が無い状態でした。
 
しかし、この記事のサムネイル画像にもなっているこの展覧会のポスタービジュアルに惹かれた為に参加を決めました。

 結果としては終始ワクワクが止まらず、とても良い体験が出来ました。今この記事を書いている瞬間も、あの時の事を思い出し高揚感がよみがえってくるほどです。

 それではそんな高揚感に包まれた展覧会、「原点から現点」の個人的に印象に残った作品を中心に紹介していこうと思います。


作品紹介

1.装苑賞受賞作品

  まず展覧会に入ってすぐの所に、コシノさんが「装苑賞」を史上最年少で受賞された作品が展示されていました。

 丁度今の肌寒い季節に着たくなるような温かみを感じ、全体的に柔らかい印象を抱きました。また、大きめのボタンがアクセントになっていてとても可愛いです。

2.日本万国博覧会(大阪万博)ユニフォーム

 次のブースには1970年の日本万国博覧会のユニフォームが展示されていました。服のデザインと背景に使われている写真からどこか昭和の雰囲気を感じ、私自身は平成生まれであり昭和を生きたことは無いのですが、とてもノスタルジーを感じました。

左からタカラ・ビューティリオン館ペプシ館生活産業館のユニフォーム

 右にある生活産業館のユニフォームは青と白を基調としたデザインになっており、どこかセーラー服の様な雰囲気を感じました。また、左にあるタカラ・ビューティリオン館のユニフォームは、黄色と茶色を基調としたデザインに、花柄の裏地が少し見えており、一目見た時からひまわりの花を感じさせるデザインだなと思いました。

 このブースに展示されていた万国博覧会のユニフォームはどれも三色以内の色数でまとめられており、統一感が感じられユニフォームとして使うことで映えそうなデザインで素敵に感じました。

3.花椿の表紙

 次に、コシノさんが衣装デザインを担当された花椿の表紙がいくつも展示されていました。

 全体的にカラフルな色使いの物が多く、店頭に並べられていたら思わず手に取ってみたくなるような存在感を感じました。

4.対極

 次に進むと、を基調とした部屋が姿を現しました。

 一歩足を踏み入れると、途端に目に飛び込んでくる鮮やかな色と色で彩られた作品の数々。ワクワクを抑えられずにいると、部屋に入ってすぐの所にあるキャプションにこう書かれていました。

『これは、自然や地球、宇宙という完全なる創造物の象徴である「円」と人間が論理に基づきつくり出す合理的なものを象徴する「四角」、太陽や昼を示す「赤」と月や夜を示す「黒」など、宇宙空間に存在し対峙する二項が、相反しながらも影響し合い止揚するという、万物の摂理を示したものである。』

キャプションより引用

だけでも四角だけでも世界は成り立たつことはなく、だけでもだけでも世界は成り立たない。それぞれが影響しあうことで世界は作られているという当たり前のようで深く考えたことが無かった事を四角を織り交ぜた作品で表現されていて、長い間その場でじっくりと鑑賞したくなる作品でした。

 まずビジュアルがとてもインパクトがあって見ていて楽しく、加えてそこに込められたメッセージを知ってから見るとより楽しむことが出来ました。

5.JUNKO KOSHINO ART FUTURE(メトロポリタン美術館で開催されたショーのポスター)

 先程紹介した「対極」と同じ部屋に、おそらく今回の展覧会のメインビジュアルにも使われているであろう作品も展示されていました。

 右の人のお腹が丸く飛び出しており、それに影響されるようにして左側の人のお腹はへこんでいて、先ほど見た「対極」に込められていたメッセージに近いものを感じました。

 また、これは作品をアクリルの額に入れて展示したため起こったことだと思うのですが、ポスターのメインの人物の所に、自分や周りに展示されていた作品が映り込んでいて、自分もこの作品の中に入り込んだ様な気分を味わう事が出来ました。

6.POROPORO ポロポロ

 赤と黒で彩られた部屋を抜けると、まるで別世界の様な幻想的な部屋へと辿り着きました。一歩足を踏み入れた時から、思わず息を吞む程の美しさで、私が今回の展覧会の中で一番心に残った作品です。

夕方に訪れたので、空が程よくオレンジ色なのもまた幻想的

 あべのハルカス美術館はあべのハルカスの16階に位置しており、この作品は大きい窓が沢山ついている部屋に展示されていた為、普段は見えない小さくなった大阪の風景が背景の役割を果たしており、別世界に来たように感じさせるこの作品の良さがより際立っていた様に感じました。

床が鏡の様になっている事により作品が映り込み、どこまでも広がっていく様な幻想的な雰囲気を感じる
レイヤーの一部がメッシュ状になっている作品もあり、切り絵みたいで美しい
銀色の方の作品は宇宙を想像させる様な色とデザインで、より非現実感を感じる

 段々に重なっている規則的な、今まで見たことが無かった様な独創的なデザインに心を動かされ、何から着想を得て制作されたのか気になりキャプションを読むとこう書かれていました。

『円の部分はワイヤーを使用しており、重ねることでコンパクトに収納できる。このアイデアは、日本に古来よりある「畳む」「重ねて納める」という発想を基に考えられたもので、ドレスという「洋」の中に「和」の要素も共存させている。』

キャプションより引用

 あの段々に重なっている規則的なデザインは、まさか「畳む」から着想を得ているとは思わなかったので、それを知ってからもう一度作品を見ると確かに小さく畳んで重ねて収納できそうだなと感じ、色んな見方が出来る面白い作品だなと思いました。

 また、この作品を一目見た時に布団乾燥機のホースを思い出し、ワイヤーが使用されている点も同じで、そういえば布団乾燥機のホースを広げる時「ポロポロ」みたいな軽快な音がしていた気がして、ということはこの作品も小さく畳まれた状態から広げる時に「ポロポロ」みたいな音が鳴りそうだなと感じたので、その音から作品名を「POROPORO ポロポロ」とつけたのかなと勝手に考察してみたりしました。

7.FUKUSHIMA PRIDE バルーンコート

 幻想的な部屋を後にすると、次の部屋には名前の通り風船の様なコートが展示されていました。

 画像では分かりにくいと思いますが、実際はコートの中に送風機が入っていてそこから送られる風によりコートがユラユラと形を変え続けていました。
 風によってコートの表情がコロコロ変わるので、目が離せなくなる作品でした。

8.Spike Dress

 先へ進むと、服からツノが生えた様な、全体的にトゲトゲした作品が展示されていました。

 初めは服にツノやトゲが沢山生えていて、強そう痛そうなどといった印象を抱いたのですが、よく見てみるとツノやトゲは柔らかそうな素材で作られており、硬いイメージのあるツノやトゲが柔らかい素材で作られているという正反対にも思える物の融合に、不思議な気持ちになりました。

9.ビスチェとスカート

 次のブースには、を使って作られたビスチェスカートが展示されていました。

 蔓と蔓の隙間からが漏れ、作品そのものも勿論綺麗でしたが、後ろの壁に映るがとても幻想的で美しかったです。

10.JAPONISM

 ビスチェとスカートを見終え次の部屋に足を踏み入れると、美しい着物のファッションショーが行われていました。数多くの照明に照らされ、鏡面の様に輝く黒い床の上に展示されている姿は、まるでが止まったファッションショーの様です。

 動くはずのないマネキン人形の足音が聞こえてきそうなほどの迫力。全て異なるデザインの着物のはずなのに、何故か統一感があるように感じました。この部屋全体を広く使い、前から後ろまでずらりと並べられている姿は圧巻です。

 この部屋には腰掛けられる大きめの椅子が幾つか設置されていたのですが、その椅子に腰かけると前から後ろまでずらりと並べられている様子をじっくりと見る事が出来、長い間この世界観に浸ってしまいました。


 全ての着物の良さについて語りたいのはやまやまですが、如何せん数が多かった為、全ての着物をじっくり鑑賞した結果、特に心に残った着物ベスト3を紹介したいと思います。

・第3位

 初めて見た時からとても目を引く色使いとデザインで、とても魅力的に感じました。
 特に、真ん中の水色と緑色の帯?の部分がまるでが流れているかの様で、涼しげな印象を抱きました。またヘアスタイルも、滝の水面の水しぶきを感じさせるほど躍動感たっぷりで素敵です。

 コシノさんの意図とは全く違うかもしれませんが、私は個人的にこの作品から、遠くから見てる分には涼しげだが、実際に近づいてみると荒々しさを感じる、滝の二面性の様なものを感じました。

・第2位

 画像では分かりにくいと思いますが、会場では着物の中に送風機が設置されており、着物がユラユラと揺れていて、それにより銀色の模様がキラキラと輝いていて、とても綺麗で魅力的に感じました。

 また、黒色と銀色のみでまとめられたシックなデザインも、スタイリッシュでとてもかっこいいです。


 続いて第一位の発表、、と移りたいところですが、その前に番外編の発表です。

 番外編

 このブースには着物だけでなく、コシノさんがデザインされた、格闘家の方とプロボクサーの方のガウンも展示されていました。とてもかっこよかったので、番外編として紹介させていただきます。

プロボクサー 寺地拳四朗さんのガウン

 全体的にトゲトゲしていて強そうですが、布地、トゲ、ファスナーなど全てが白色で、威圧感を感じながらもどこか爽やかな印象を抱きました。
 相手に恐怖感を与えそうなトゲトゲを付けながら、どこか余裕まで感じさせる爽やかな色合い。ラスボスみたいです。

格闘家 武尊さんのガウン

 こちらは金色一色のみを使用し、金色の濃淡で動きを付けていて、個人的に水墨画のようだなと感じました。とてもを感じさせるデザインで、美しかったです。


 番外編を挟みまして、続いて第一位の発表です。

・第1位

 一目見た瞬間から、着てみたいと強く感じた着物です。あしらわれている金色の模様がとても繊細で美しく、その模様を黒色の布地で切り抜いた様なデザインがとても魅力的に感じました。
 着物もヘアスタイルも、とても上品ですっきりとまとめられたデザインで、多くの着物の中で一番心に残りました。


 私が特に心に残った着物ベスト3はいかがでしたでしょうか?私が今回紹介した三つ(番外編を除く)の着物以外にも魅力的な着物が沢山展示されていたので、ぜひ来場して皆さんのお気に入りを見つけてみて下さいね。


 このブースでは、着物本体の展示に加えて、展示されている着物の中の幾つかのデザイン画も合わせて展示されていました。

 そのため、デザイン画と着物を見比べながら交互に鑑賞するのも楽しかったです。

11.能+ファッション

 着物のファッションショーを見終え、興奮冷めやらぬままその場を後にすると、隣の部屋からなにやら視線を感じます。

 向かってみると、そこには今にも自分に向かって走り出してきそうな程の迫力を感じる作品達。
 この作品を鑑賞している時周りには誰もおらず静まり返っていた事もあり、恐怖心すら感じました。
 
 また、着物の様で、どこか着物とは違う。新たな形の着物を見れたようで、とても新鮮な気持ちになりました。


  能+ファッションを見終え、さらに歩を進めると、見えてきたのはEXITという文字。
 
 出口か、、。
 
 楽しかった時間も、もう終わってしまうのかと、少し悲しい気持ちになりながらも、導かれるまま先へと進みます。
 

 しかし、進んだ先には思いがけないものが、、、

12.原点ー現点 映像

 進んだ先では、先程まで鑑賞してきた作品達を、モデルさんが実際に着て歩いている。ファッションショーなどの映像が上映されていました。

 実際に人に着られて、動いている様子を見ると、また印象が変わって見えます。

 また、映像を見ることで、先程は気付かなかった新たな魅力を沢山発見することが出来ました。
 
 ここでは、新たな魅力に気付いた作品の中から、二つを紹介したいと思います。


一つ目は、「対極」のこの衣装です。

この記事でも四つ目に紹介しました。

 ブースで鑑賞した時も魅力的な作品だなとは感じていたのですが、映像の中でモデルさんがターンされた際に、ひらひらひら~と一枚一枚の生地がを受けてシルエットが浮かび上がっている様子が、とても綺麗でした。上から桜の花びらでも降ってきそうなほど優雅な雰囲気を醸し出していて、美しかったです。

二つ目は、「POROPORO ポロポロ」のこの衣装です。

この記事でも六つ目に紹介しました。

 この作品も、ブースで鑑賞した時からこの展覧会全体のベストに入るほど好きな作品だったのですが、動いている映像を見ると、一歩歩くたびに下のスカートの部分がぷるぷるぽよぽよと動いていて、とても可愛かったです。ずっと見ていたくなる様な動きで、癒されました


 以上二つが特に驚かされました。擬音が多くて分かりにくかったかもしれませんが、実際に映像を見ると、共感していただけると思います。ぜひ訪れてみて下さい。


最後に

 最後まで読んで下さりありがとうございました。長くなりましたが、私が個人的に印象に残った作品の紹介は以上となります。
 
 行くことになったきっかけこそポスタービジュアルに惹かれたという単純ともとれる理由でしたが、おわってみると、訪れて良かったな。そう心の底から思わされました。
 独創的な作品を沢山鑑賞し、別世界に来たような感覚を味わう事が出来て、とても有意義楽しい時間を過ごすことが出来ました。

 この記事を書いている時点で、もう残念ながらあべのハルカス美術館での展示期間は終了してしまっているのですが、新潟県にある新潟県立万代島美術館で2024年2月22日(木)から2024年5月26日(日)まで展示されるそうです。

  私は初めに書いた通り、コシノさんの作品などは全く見たことがなく、コシノさん自身のことについてもほとんど知識が無い状態でこの展覧会に参加したので、訪れる前は、難しかったらどうしよう。自分には理解できなかったらどうしよう。と不安に思っていたのですが、実際に訪れてみると、キャプションに沢山解説が書かれていましたし、何よりも、目で見て楽しめる。意図を理解できなくてもその独創的な作品達を見て、その世界観に浸ることで十分楽しめる展覧会だなと感じました。
 
 そのため、コシノさんのことが好きな方はもちろんのこと、あまりこういった展覧会などに訪れたことがない方や、コシノさんについて特に詳しく知らない方も十分楽しめると思うので、今回私が紹介した作品以外にも沢山魅力的な作品が展示されていた展覧会「原点から現点」
 ぜひ皆さんのお気に入りの作品を見つけてみて下さい。
 

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