ピカピカの寸胴が泣いている
今日のランチは、ちょっと奮発して、地元の名産品Aをいただきました。
世界的にも知名度の高い、A。でも、値段が貴族すぎて、われわれ地元民の口にはなかなか運ばれません。が、今回のコロナショックがあって、ある老舗さんが期間限定、半額コースの提供を開始。それで、生まれて初めて、Aをいただくことができました。
まず、食べるまでの調理工程に嘆息。
食べて、嘆息。
飲んで、嘆息。
箸を置いて、嘆息。
「おいしいですか?」って聞かれたら、ガッテン!ガッテン!ガッテン!って、手元のボタンを速攻で叩けます。料理人さんの手捌きも、とても綺麗。お茶のお手前のように、無駄なく洗練されていました。
最高の味、最高の雰囲気。でも、お店に入って一番目がいったのは、カウンターの向こうに並べられた、ピカピカの寸胴でした。
お店は街の中心地、一等地にあり、コロナの影響がなければ、国内外からたくさんのお客さんで満席になっていたでしょう。予約をとることすら、難しかったはずです。
お店にある調理器具や皿という皿は、これでもかというくらい高速回転で使われていたと思います。ちょっと休ませたりいな、と声かけちゃいたくなるくらい。
でも、カウンターの向こうには、本来、コンロの上で何かを煮込んでいるはずの寸胴が、棚びっしりに並べられていました。そういえば、料理しているお兄さんの目もどこか力なさげ。
ちょっとした世間話のついでに、お客さんの入りを聞くと、平日のランチで2〜3組とのことでした。飲食ド素人のわたしでも、これでは経営が成り立たないことくらい、分かります。
つつましやかな暮らしをしているわたしにとって、外食は超贅沢行為です。丸亀製麺の前に立つたびに、「自分で作ったら、100円以内!」と思い、お店に入らずに帰ります。なので、今回の名産品Aを食べるのは、かなり、かなりの贅沢でした。
地元の良さを伝えるときに、よく名前に出てきた、名産品A。そこには、誇りと技術をもった、たくさんの人が関わっていました。
料理人の目に力が戻り、その技術が惜しみなく発揮され、だれかが喜ぶ空間。わたしがふだんお邪魔することがないそんな空間が、少しでも長く、つづいていって欲しいです。形を変えてでも。
お兄さん。おいしいランチをありがとう。
ごちそうさまでした。