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■リトル・リチャードとの出会い

前回、「ビートルズとインドと、コリー」というタイトルで書いたが、今日はその続き。
コロラド出身の女の子、コリーについて書こうと思ったが、まずは僕がアメリカに渡った日のことを書くことにする。

僕は1992年から93年にかけて2年間、アメリカ南部のルイジアナ州・ニューオーリンズに住んでいた。
アメリカに渡るため成田空港を発ったのは、僕が27才になったばかりの1月あたま。旅の友は、当時つきあっていた5歳年下の女性、Kだった。

Kと僕は、ロサンゼルス直行便に乗って(航空会社は忘れた)、朝、LAの空港に着いた。LAの安いモーテルに一泊して、翌日ニューオーリンズ行きの飛行機に乗る予定だった。

その日、Kと僕は昼間のLA市内をブラブラと歩いた。
確か、ハリウッド大通りのチャイニーズシアター近くを歩いていたときだったと思う。僕らの目の前で、大きな白いリムジンがゆっくりと停車した。
次の瞬間、車の後部座席のドアが開いて、中から一人の男が降りてきた。
「ん? どこかで見たことがあるぞ・・・あれは」

えっ、リトル・リチャードじゃん!

思わず声が出てしまった。
衝撃的だった。目の前(数メートル先)にリトル・リチャードがいる!
しかも、昔、映像や写真で見たとおりの、派手な衣装に身を包み、満面笑みをたたえ、カッと目を見開いたリトル・リチャードだった。
つい手を振ると、リトル・リチャードは「ハーイ!」と言って手を振り返してくれた。

↓リトル・リチャード(Photo by Dezo Hoffmann/REX/Shutterstock)

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これが僕らの丸2年にわたるアメリカ生活、初日の出来事だった。
大学3年で単身パリに行ったとき、シャルルドゴール空港から乗ったリムジンバスがエトワール(凱旋門)に着き、バスから一歩降りたら「犬の糞」を踏み、「ああ、これがパリだ!」(パリの洗礼を受けたな)と思ったことがあったが、リトル・リチャードとの出会いは、まさに「This is AMERICA!」だった。

翌朝、僕とKはニューオーリンズ行きの便に乗った。デルタかどこかの飛行機で、アトランタ経由だった気がする。
ニューオーリンズの空港に着き、これから僕らが通うロヨラ大学のドミトリー(学生寮)に着いた。

ドミトリー(通称、ドーム)は2人部屋で、4畳半くらいの狭い部屋に2段ベッドがあった。
そこには既に部屋の相棒がいた。僕より小柄なずんぐりむっくりした中南米風の若者だった。「Hi, I'm Hideo from Tokyo Japan, nice to meet you!」とかなんとか簡単な挨拶をした。彼の名前は「ユーゴ」で、エルサルバドルから来たとのこと。
僕は「いつ(When)、ここに着いたの?」と尋ねた。するとユーゴは、ポカンとした顔をして、「When?」と聞き返してくる。僕はもう一度、「Yes, When?」と尋ねたが、彼は困った顔をして、一言こう言った。

「I don’t speak English.」

えっ!? 英語まったく喋れないの?
マジか・・・。
確か大学の留学案内には、「ドミトリーは2人1部屋。海外留学生の同居者は〝ネイティブ・スピーカー〟なので安心&グングン英語が上達します!」と書いてあったはずなのに・・・。

まいったな。
今日から僕が彼に英語を教えなくてはならないのか。

こうして、僕らのニューオーリンズ生活がスタートしたのだった。

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↑  アメリカ1日目の私。ロサンゼルスのモーテルのバルコニーにて

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