母に会いに・・・
『もし あなたと離れ離れになっても、
このやけどの手が、お母さんの子供だと教えてくれる』
5歳の時。
私のやけどの手を母は両手でつつみ、
私をまっすぐに見つめて言った言葉。
こどもは凄い。
母親が真剣に言った言葉・・・大人が聞いたら、
矛盾していても、なぜか信じてしまう。
私は、この言葉のおかげで、自分のやけどのある
右手を嫌いになることはありませんでした。
なぜか誇りに思い、お守りとして、
今まで生きてきました。
延命治療
母の これからを弟と何度も話しました。
寝たきりでも、痛みはわかる。
どんな選択が母にとって良いのか。
母に聞くことができない。
「お母さんが、お腹が空いたら可哀そう。
けれど、食べて誤嚥して、肺炎になり、発熱して
苦しむ姿は見たくない・・・」と弟。
私が小学生になった頃から
休みもなく働いてきた母。
機械加工という家業は油まみれの日々。
やわらかい母の手は、
いつしか仕事人の手になっていました。
今日、その手は小さくなって弱弱しかった。
それでも、一生懸命に動かして、
点滴や尿道留置カテーテルを取ってほしい、
という仕草。
人生って何だろう。