『今、あの日』

君が
目の前で　横たわっている
お腹が　
上へ下へと　動く安心

数ヶ月前の
あの日
コクンと　最後の呼吸の音を聞いた。

小さな体は
冷たくなり　硬くなり…

何が
起きているのか
よくわからないまま

手元に
戻ってきたのは
白く冷たい　小さな器

綺麗な布が
かぶせられ

それだけが　救いだった

もう
ふわふわとした体を
触れることも　抱くことも
できないと思っていた。

けれど
君が駆け寄ってきた
ゴクンと
水を飲み
ヨチヨチ歩く姿に
心が動いた

隣では　目を真っ赤にしている

見送った　あの子の時とは
違う表情だった

「さよなら」
言った後の
「はじめまして」

おかしいかも　しれない

けれど
私たちの時間にも　
限りがある

泣いて過ごすか
笑顔絶やさず暮らすのか

目の前には
すくすく育ち
喜びを与えてくれる
君がいる

ありがとう
家族になってくれて

祇樹