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2023/09/19 映画(アリスとテレス)・アニメ

改めて『アリスとテレスのまぼろし工場』を見た。あ、普通にここから作品のシナリオの内容とかネタバレの話めっちゃやります。

率直に言うと、かなり想像と印象が違ったかな。もっとドロドロ恋愛模様でぐちゃぐちゃやるやつかと思ったら、終盤は『さよ朝』の流れみたいな母子愛の話になってたし。上田さん演じるヒロインも、もっと超然としてる感じかと思ってたら全然そんなことなかったなぁ。

作品としては結構楽しめたかなと思う。どこにも行けない田舎の少年少女の心境を反映したかのような、工場の街に閉じ込められてしまった人々。人々は外に出られないし年もとらない、永遠に止まった時間の中で日々を過ごしている。そんな中、14歳(から動かない)の少年の政宗は同級生の少女の睦実に連れられて、睦実と似た顔をした不思議な少女に出会う。このあたりはずっと政宗視点で進んでいて、なるほどボーイミーツガールみたいな感じなのね、みたいな感じで受け止めていた。
で、そのうち世界の秘密が明らかになってきて、どうにもここは神の作り出した空間で現実と切り離されていて……みたいなことが判明する。あと謎の少女(五実と名付けられる)が現実の政宗と睦実の子供だと判明したりする。そんなこんなで、政宗と睦実は接近していく。現実の同じ人がいるということは、つまりこの止まった時の世界は死んでいると推測されて、そんな中で「痛み」だとか「恋の心臓の鼓動」だとかが、静止に抗う生の証として出てきたりする。
ところが、そのうち五実の視点のシーンが増えてきて、最終的には五実のほうが主人公なんじゃないか、みたいな雰囲気になる。これは見ていて結構「え!そっちなんだ」と驚いた。ただこれはわかるところもあって、その映画は「生きる」「少年少女の」話なので、政宗は実質生きてないことが判明して以降、じわじわと作品の主な語り部の座から下りることになったのでは、と思う。同様に、最初幼児のようであった五実が成長して、つまり少年少女の年代になり、恋の話にも参戦できるようになったため、新たな語り部として世代交代した……みたいな雰囲気がある。
このある種割り切った生者のための姿勢は結構好きで、そして生きてないとされた側とて「懸命に生きるぞ!」みたいな雰囲気になり、最終的にはめちゃくちゃアッパーな空気感に包まれる。本作を好ましく思うのは、ここではないどこかへとひたすら進もうとし、あるいは場所としてはたとえ留まろうと変化を積極的に受け入れる、そんな素直な前向きさに満ちていたところだ。

映像としては美術面が良かった。工場を中心とした街の寂れながらもどこか幻想的な風景。時が止まった、寂れつつある田舎町の象徴として、夜も煌々と明かりが灯る不夜城たる工場というのは、上手いモチーフだったと感じる。神秘的ながらも恐ろしげな、神の住まう場所としても存在感があってよかった。

一方でめちゃくちゃ乗れたかというと微妙だ。まず自分はなんとなく岡田さんのホンとの相性が悪いのか、テレビでも映画でもなんだかいつもイマイチ乗り切れていない。岡田さんのアニメって盛り上がってくると登場人物が”生き生き”してくるんだけど、そうなるとなんだかすごく人物の味付けが濃くなる。元々地に足着いた心情描写みたいなのが結構上手い人だと思うんだけど、暴れ始まるとそういう人物がキャラクターめいていると逆に自分は感じてしまうというか。あとセリフ回しでも「痛いじゃなくて(一緒に)居たい」は上手さの前にわざとらしいなと思っちゃって、他だと「ラジオに向かって受け答えする」とかあと映像の話だけど「男女をランプで示す」あたりは作為的すぎると感じてしまったかな……。

あとやっぱり恋愛、特に男女差を意識した上で生の象徴として恋愛を用いられるのも個人的にはあまり好きではない。確かにそれってヒトの生物としてのあり方なのかもしれないんだけど、それを生の象徴として肯定的に描きすぎてしまうと、あまりにも無邪気に生物としてのルールみたいなものに乗っかりすぎてやしないか、と感じてしまって。それってどうなんだ? って自分は思ってしまう。このあたり良し悪しじゃなくて好みの話なんだけどね。

あと神様の描かれ方もあんまりピンとこなかった。炭鉱の山を削ることで神の怒りが云々みたいな話があったけれど、ということは山岳信仰だと思うんだけど、別に詳しくはないんだけど山岳信仰って自然の雄大さ/恐ろしさ/恵みみたいなものが一緒くたになって人智を超えた神として扱われてると思ってて、そうなると神による時の止まった街の、炭鉱が働いていて賑わっていた時期について「最も良かった時期を残しておきたかったのではないか」というのは、あまりにも人間本位な神の捉え方じゃないのか、と思ってしまった。土地じゃなくて人ありきすぎる、っていうか。まぁ神ってそもそも都合よく人間が捉えるものだろ、と言われたらそうかもしんない。

ていう感じで、面白かったんだけど、ここめちゃくちゃ嬉しいな~! みたいなポイントがそんなになくて、個人的には一歩引いて見ちゃったなという感じです。あとこれは文句じゃないけどそのぐらいのテンションで中島みゆきの主題歌が映画の内容全部言ってたからエンディングでめちゃくちゃ面白くなっちゃった。「神様、お願い!」ってシーンでは思わずカミカツの「I wish」が脳内で流れてしまった。でも当初はほんとに全く合わないぐらいを想定していたので、楽しめてよかったです。

アニメ

好きめが12、フェ~レン12。

意外とまだここは最終回ではなく。Helckも2クールだから終わらない感じか。カヨルは少ないけど自分的にポテンシャル高かったから、来週も見られるのは嬉しいな。

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