カエルを飼う、と決めた日 ~カエル日記#1~
2023年9月半ば。
暦の上では夏は終わったはずなのに、暑さがいっこうに収まらない、そんな秋の日の出来事。
「カエル、見たい?」
友人からのLINE。
「うん、見たい」
私は即座に返信した。
すると電話がかかってきた。友人は帰省中で実家におり、庭の草むしり中にカエルを発見したという。ビデオ通話に切り替えてカエルの姿を見せてくれた。
まん丸お目目のきれいな黄緑色の小さなカエルだった。
「実際に見ると、めちゃめちゃかわいいよ。せっかくだから飼ってみなよ!とりあえず連れて帰るね」
友人は軽く言い放って、電話は切れた。
もともと私はカエルが苦手だった。
しかし、生き物好きのその友人から紹介されて数々のカエルの動画を見てからというもの、そのエサを食べる姿や飼い主さんと戯れる姿に癒されるようになっていた。ペタペタと歩く姿やエサを飲み込む姿は本当に愛らしい。爬虫類好きの人がヘビやトカゲをかわいいと思うように、一度その愛らしさを知ってしまうと、気持ち悪いとは思わなくなるから不思議である。
いつしか私はカエルを好きになっていた。
カエルを発見してテンション高めの友人に乗せられて、「飼ってみようかな」と言ってしまった…
「とりあえず連れて帰るね」って友人は言っていたが…大丈夫かな?
確かにかわいかったし、実物も見てみたいけど、本当に私がカエルを飼えるのかな?
落ち着いてよく考えてみると、不安しかない。
飼うということはその命に責任を持つということ。「やっぱり無理」と途中であきらめることは絶対にできない。
本当にそれが私にできるのか?
環境になじめなくて死んでしまったら?
エサを食べなくて死んでしまったら?
その場で気ままに暮らしていただろうカエル…
ヒトの勝手で飼われて、カエルは幸せかな?
マイナスな気持ちでいっぱいになってしまった。
やっぱり飼うのやめるから連れてこないでって言おうかな…
でもそしたらあのカエルを実際に見ることはできないってことだよな…
あんなにかわいかったのにな…
心の中で葛藤する。
優柔不断なのが私の悪いところ。先々のことまで考えすぎて、行動になかなか移せない。
例えば、買い物に行って「カワイイ」とか「いいな」と心ときめいたものがあったとき、あれこれ理由をつけて結局その時買わなかったりする。そして、考えた末に売り場に戻ってみるともう商品が売れてなくなっている。「やっぱりさっき買えばよかった」と嘆く。もう遅いのに。
一瞬一瞬の心のときめきを忘れないこと。
心がときめいてウキウキしたのならば、その気持ちに従った方がいい。これまでに何度も後悔して、私が学んだことだった。
やっぱり飼ってみよう。
さっき見た画面越しに小さなカエルを見たときの「カワイイ」のときめきを大切にしよう。
そう思ったら、自然と覚悟の気持ちが芽生えた。
きっと大丈夫。
私一人で無理な時は頼れる友人もいる。
ネットで調べれば何でも検索できる。
近くにカエル用品を買えるペットショップもある。
そう思ったら、カエルに会えるのが楽しみになってきた。
いよいよ明日、あのカエルちゃんがうちにやってくる。
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