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音楽からの連想ゲーム

楽譜の読めない夫が昔、いちばん簡単なピアノ曲を弾いてみたいというので、子供が耳だけで覚えられる、かの名曲「ねこ踏んじゃった」を手取り足取り教えたことがあった。どうにかこうにか覚えて、私がハモリの右手を弾いたりして、連弾できるようになったその数ヶ月後、なんだかとってもエキゾチックなそしてマイナーチックな「ねこ踏んじゃった」が聞こえて来た。

急いでピアノの方へ行くと、そこで夫がきちんと座って「ねこ踏んじゃった」を弾いている。ただ鍵盤の場所が丸ごと右だか左だかにずれたまま。

衝撃だった。かなりの衝撃。凄い。パッケージとしての指のポジションは全部あっている。ただキーが全く違う場所を叩いてるのに、その音の違いに気づいていない。そんなことってあるんだ。

恐る恐る訊いてみると「え?」って逆にびっくりされたんで二人で笑ってしまった。とにかく習ってる時から指の順番だけを丸暗記してたので、「音にまで気がまわらなかった」んだそうで。

自分は音楽と風景、匂いと風景、音楽と匂い、、とかセットにしてインプット型なので、むしろそれがない字面だけの記憶が苦手。夫は多分電話番号や歴史の年号、そしてあの日あの時どこに行ったとか、私の百万倍覚えてると思う。

隣の部屋で、このところずっと多忙の極みだった大学生の息子が、何ヶ月ぶりにサックスを吹いている。彼こそ両親の辛うじての利点を両方もっている気がする。音楽的なセオリーが入りやすい数学好きな頭と、なんちゃってのアドリブや雰囲気を音やリズムにできる感覚。

かなり若かったので記憶があいまいで残念なんだけど、当時好きなバンドが出てるライブハウスに、まだ出来たてのスカパラが出演してた。変な話、って変でもないけど、その時のバリサクを吹いてた谷中の姿だけが目に焼き付いていて、その何十年後に14歳の息子が同じ楽器を始めた時のトリップ感が急に蘇った。その後成長とともに風貌まで同じになってきた時はちょっと怖かったけど。昔「選ぶ楽器で性格がわかる」的な本があったような。

外は雪の年末に、東京の雪のない冬を思い出したのは、やっぱりバリサクの音からの連鎖。なんて言ってるけど、本当のこと言ったら、洗濯機が壊れちゃったからオーダーしなきゃならないのに、夫が真剣に調べてるのを横目にユーチューブを観まくってたら、今はもう立派なアーティストのEXITの二人が、あの「歌ってみたシリーズ」で「粉雪」を熱唱してたから。

あの二人は本人たちが自覚している以上に、声に物語を持ってるといつも思ってる。粉雪の空も見えたし、その先の世界も見えた気がした。そしてそんな彼らの歌声を聴きながら、ああ幸せって色んなところに感じられるんだなって感謝の気持ちで年を越せそうで、ほんとうに嬉しい。

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