ターニング・ポイント(ゼロの焦点) 川柳111句
前書き 九州旅行。松本空港まで高速を走らせ、久しぶりの航空機。冷や汗かく。福岡市にて妻の日焼け止めさがす。天神の屋台にて焼きラーメンと豚足。一泊して、現在博多駅近くのスタバにてこれを記す。句はこの前書きと関係なく存在する。
ハイウェイ・スター軟骨はずされて
砂利を売る馬頭観音ふやすため
われ生きて巨大苺に巨大影
無のまえにベビースターをかんがえる
都々逸のひかりと影のパン焼ける
ミクシィの言葉と物が出あうとき
老人と同時にさけぶちりぬるを
地上絵に阿川佐和子の愛知県
フロッピーディスクの店になつをまつ
恵那山をくるわなかった父が積む
父の名をまたくりかえす無菌室
マゾヒスト新吉消えるさつまあげ
さつまあげ工場を書くチャンドラー
星の書の黄ばみはじめる不眠都市
みそしるとひかりのくにのパラドクス
ごけぐもの乱数表に這いよりぬ
他我の村飛ぶ教室がとびかって
胎内の言語あるべし天の国
翼あるもの麺を打つ植民地
磯崎の排骨麺が藪の中
乳牛をメタボリズムの午後にうる
なにもない言葉もろとも航空機
あたおかが夜のみだらな鳥を飼う
エネルギー革命おこる木場の駅
神の國からやりなおす鱶の國
神の國すぎてキャベツの夕びかる
豚足を信じパンクの系譜学
仮の世の水魚たるべしデモ過ぎぬ
ラーメンを火宅の人が吐いてより
芽むしりのジャッキー・チェンに有理数
天神のヨードチンキを置く舞台
九州に錆将軍のもだえかな
来世の記憶とっとこハム太郎
自転して宇宙柔道バナナめく
鷹狩りに完全をなすエゴとエゴ
月の名を二〇〇一年までかえる
エゴイスト五郎のふるうながい鍬
習性に桑島さんの国旗ゆれ
梅園にゆらぎ理論の会をぬけ
叉焼に星野スミレの憤死せり
だきまくらゾロ目ばかりの旅をして
夕やけと排骨麺が美少年
マシリトが論理崩壊するふくさ
棋士をみな招魂してのごぼう天
南国の公私とともにアトムの茶
いつの日も函数とする春団治
雪舟の舞台装置のマーガリン
屋根うらができて左翼に恋をする
春逝けり天孫のランバダを聴く
もくせいにひらいてとじるドアひとつ
国ほろぶ文明堂の裔として
倭の国に赤いスペースオペラの図
魚人展ならぶ唐沢兄弟図
いっせいに宇宙をみたと言ってくれ
ごときものばかりあつまる姪ヶ浜
仏壇が素数かぞえるまでぶった
天体にかじきまぐろと云う異名
蟹の名を少女時代につけたきり
老童がべつの銀河の噺する
永遠の終わった春のパン祭り
フルートの駅で赤紙わたす役
列島にめしべを持ってくる希林
辞書にない樹木希林との大未來
あながちを換えるロッキー・ホラー・ショー
真核をサミュエル・ホイのくりかえす
知の人の納豆巻がたちならぶ
化粧水もとめ黄道十二宮
アルパカを信じられないラガーメン
さみだれの豆がとまっている軍歌
ギャグマンガ回鍋肉の無をかぞえ
黄砂降るそして天体物理学
宇宙から鱏をたたえる宇宙船
スタンドが花田虎上をとりまいて
賽なげて圧力鍋の男神たち
すでにこの世のはてにけり豚足屋
豚足をただ待ちわびる月の庭
自己にくみ記憶の寺の崩れざま
言語野の十勝平野がおってくる
精神と肉体界の蝶を撃つ
塩田のありとあらゆる父死んで
長明のガサ入れうけるビルの谷
画集でのロボット刑事ながらえて
神憑り蘭の記憶よ地に充てよ
南国を聴いてブルース・ブラザーズ
シュルレアリスム宣言の天皇家
くじを引く世界にサクマドロップス
ノックスを超えてこんやの佐賀平野
のりしろとライトノヴェルに雨ふる日
きのうから起承転結しない鯖
熱線につかれて七味とうがらし
涙の日ある献血の記号論
父の名のトリックスターからはなれ
パパイヤの意味ふくませて禅を解く
道長語なき世に身ぶり手ぶりする
さえずりのカナダ漫才していると
獏を手に山田太一が起ちあがる
構造もちからも達磨大師像
小鉄屋にトカトントンの雨つづく
南国の変体月をみなかった
麦茶汲みバナナうごいてあらせられ
老犬の都市にまよえる三四郎
瓜の図に呉一郎の街を消す
能記成るゆきかうひとが皆きれい
蒼白のトリックスター蛾をきらう
悪としてチルチルミチルたまごやく
新約の都市にからまりだす水母
偽文書のつづきをおもう架空都市
いたいけに索子空よりおりてくる
九州の花買う妻にくもる朝
天神のレースクィーンがくもん式
豚足をさけぶ人びと地に充てよ
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