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認められない理由 修繕費

こんにちは
セカンドオピニオン税理士の宮崎貴美子です。

固定資産の修理や改良等を行った場合、修繕費として損金の額に算入することができるか?ということが調査では問題になることがあります。

本来機能を回復するための原状回復工事なのか、
使用可能期間を延長させるものなのか、
資産の価額を増加させるものなのか、

事実認定が難しく判断に迷う場合も多いです。
金額が高額であれば調査官は、必ず調査において確認します。

調査官が「認められません」という事実を把握した場合は
本税だけではなく、加算税、延滞税を追徴されることになります。
「認められない理由」を知ることで、リスクは減りますので、参考にしてください。

まず、修繕費と資本的支出について法令等で説明します。

資本的支出については、法人税法施行令第132条に規定されています。

内国法人が、修理、改良その他いずれの名義をもつてするかを問わず、その有する固定資産について支出する金額で次に掲げる金額に該当するもの(そのいずれにも該当する場合には、いずれか多い金額)は、その内国法人のその支出する日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。

第1項 当該支出する金額のうち、その支出により、当該資産の取得の時において当該資産につき通常の管理又は修理をするものとした場合に予測される当該資産の使用可能期間を延長させる部分に対応する金額

第2項 当該支出する金額のうち、その支出により、当該資産の取得の時において当該資産につき通常の管理又は修理をするものとした場合に予測されるその支出の時における当該資産の価額を増加させる部分に対応する金額


修繕費については、法人税基本通達の定めに当てはめて判断していくことになりますが、基本的には、

法人税基本通達7-8-2「法人がその有する固定資産の修理、改良等のために支出した金額のうち当該固定資産の通常の維持管理のため、又はき損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額が修繕費となる」がベースになっています。

法人税基本通達7-8-6の定めにある災害により「き損した固定資産」については争いにならないと思われるものの、

法人税基本通達7-8-9の定めにある「耐用年数を経過した資産についてした修理、改良等」についての判断については、非常に難しいと思われます。

そこで、今日は、修繕費で争った平成24年2月6日裁決を紹介します。

この事案は、工場移転に伴い新工場の用に供するために賃借した建物にエレベーター工事、高圧受電設備工事等を施し、その工事費用を雑損失として損金の額に算入していたことについて、

原処分庁が、当該工事費用は、減価償却資産の取得価額に該当し損金の額に算入できないとして法人税の更正処分等を行ったのに対し、

請求人が、当該工事費用は、移転前の工場と同等の稼動を可能とするための機能復旧工事に係る費用であり、その全額が損金の額に算入されるべきであるなどとして同処分等の全部の取消しを求めたものです。

審判所は、解体工事、左官工事、サッシ工事、塗装工事、内装仕上工事、給排水設備工事、エレベーター工事、3回間仕切りその他工事、トイレ改修工事、全37の工事内容について、個別に、固定資産の移設に要した費用と認められるか、固定資産の取得価額となるかを判断しています。

つまり、減価償却資産の単位や機能、用途等について事実認定をした結果をもとに修繕費にあたるのか、資産の取得にあたるのかを判断しており、移設という理由だけでは修繕費であると認められません。

修繕した結果、資産の価値は増加し、使用期間が延長します。

そのため、費用配分手法としてみる減価償却制度の考え方で処理すべきではないかと調査官は考えます。

この考え方は、大阪地裁平成 18 年 7 月 18 日判決で
「減価償却は、企業会計上、企業が設備等に投下した資本をその設備等の効用持続年数に応じて費用配分する手法であるから、償却期間は、本来的には、当該設備等の効用が維持する期間に応じて、各企業により公正に算定されるべきものであるが、課税の公平の観点から画一的な基準を設ける必要があるため、耐用年数省令によって法定耐用年数が定められている。」と解釈されています。

法人税法施行令132 条で規定されている「使用可能期間を延長させる部分に対応する金額」「資産の価額を増加させる部分に対応する金額」を事実認定できるかというと、調査担当者も難しいでしょうが、

「当該固定資産の通常の維持管理のため、又はき損した固定資産につきその原状を回復するために要したと認められる部分の金額」であるという証拠も何をもっていうのか難しいのではないでしょうか。

調査においては、調査官が資本的支出に該当しないという納得できる理由を求められます。

「認められる場合」を知ることは大切なことです。
「認められないかもしれない」というリスクを減らすことも必要だと思います。

法律は知っている人の味方です。

経営者にとって、追徴される、加算税や延滞税を賦課されることは無駄なお金を払うことになります。

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