盲金魚
貴方の左手の紐は、盲金魚につながっています。
長身の双子の姉妹にそう、言われた。双子は、それぞれ黄緑との紺藤色の、モダンガールのようなワンピースと、揃いのハットを被っていた。
手には手品師が使うような、真っ白な手袋をはめて、互いの口を抑えてくすくす笑っている。
私の左手には、どこまでも長く続く、和装の着付けに使う腰紐のような柄の、長いものがあった。
その紐は、まるで地球の反対側にでも繋がっているかのように部屋の角で曲がり、向こうからなにかの力でピン、と引っ張られていた。
私は、気になって紐を手元に手繰り寄せながら、一体何が待ち受けているのだろうか、と紐の示す道筋を辿っていった。
そこには、呆けた顔で股から血を流し、倒れ込んでいる女の人がいた。
女の人は、トイレのような個室の部屋から、扉の隙間から、絶望の表情でこちらを睨んでいる。
その目には、足に滴っているのと同じ色の血が流れている。
服装は、竹久夢二が描くような和装の厚着で、表情は、まるで般若。
私は、瞬時にあぁ、この人は最愛の赤ん坊が流れてしまったのだ、と悟った。
ならば、この私が左手に握っている紐は、さしずめその赤ん坊の臍の緒かー
見ると、私をここまで引っ張ってきた、あるべき紐がどこにもない。端も左手に残されていない。
ーそんな夢を見た。