SFショートショート『ノア計画』
※講談社『ショートショートの広場』に収録あり。ずいぶん前の掲載でしたので、コンピューターをAIに書き換えました。
『ノア計画』
二十一世紀。学者たちが心配していた地球の汚染はピ-クを迎えていた。それにそなえて何年も前から準備されていた火星を地球化するという計画のために、火星の近くに宇宙ステ―ションがいくつかつくられ、その軌道をまわっていた。ステ―ションを基点に徐々に植民地化していく計画は『ノア計画』といわれた。
しかし、小惑星が地球に衝突するという突然の情報が世界中の人々をあわてさせた。国連の決議として、とりあえず宇宙ステ―ションに収容限界一万人を選択して移民させる事になった。なにを基準にして移民する人々を選ぶのか果てしなく議論がくりかえされた。しかしもう時間がなかった。
人類にとって重要な人々、著名な学者や科学者、芸術家が優先して選ばれ、政治家は重要な存在だと認識されていないのか、一般市民と一緒にあるテストをうける事になった。そのテストの結果で移民の権利が得られるのだ。
世界で同時に各地の施設でテストは行われた。厳正なテストにするために、立ち会う者は人ではなく、音声を発するAIが質問をして、人々はそれに答えていくという事になった。嘘がつけないように、嘘発見器が人々にとりつけられた。
「アナタハ、タバコヲスイマスカ?」
「アナタニトッテ、イキガイトハ?」など、どうでもいいような事からそれなりの質問まで約二十問ほどだった。答えた音声はスーパー・コンピューターに記録、集計、選択されていった。
選択結果がでたとき、いっせいに空から睡眠ガスが世界中にまかれ、選ばれた人々だけがロボットたちによって、静かに宇宙ステーションへと運ばれていった。
「俺が選ばれるとは思っていなかったよ」
宇宙ステーションの中である青年が、複雑な顔で同じく選択されていたおない年くらいの男にそう言っていた。
「僕もそう、最後の質問にはい、と答えたのにな」と、不思議そうにあいづちをうった。
ステーションの別の一室では、テストの質問を議論の末、決定した学者や化学者、芸術家たちが集まってぞろ話しこんでいた。
「本当によかったんでしょうかねえ? あの最後の質問を決め手にして……」
「それは未来が答をだしてくれるでしょう」
ある科学者の問いに、ユングの再来と言われている、哲学者がそう答えていた。
「アナタハ、ホカノヒトノタメニ、チキュウニノコッテモ、カマワナイトオモイマスカ?」
(fin)