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SFショートショート『人類教育計画』

最近、高原武雄がチャットGPを使って、いろいろと質問してもまちがった答えが多くなってきた。
先日も日本の日本酒造りの過程を質問したら、味噌造りとまちがえていた。なぜすぐにわかったかというと、高原の祖父が味噌造りの職人で、子供の頃にときどき味噌造りを見学していたからだ。

昨年までは、ほぼミスがなかったのに、今年になってからやたらとミスが目立つようになった。高原がおなじくチャットGPを使っている友人に話すと、その友人も僕もそうなんだという。

「これなら、最初から自分で調べて、考えたほうが早いな」

高原がそう友人に言うと、友人は、

「僕はすでに自分で調べて、いろいろと試行錯誤しているよ」

と言った。

以来、高原はチャットGPを使うことをやめて、自分で調べ、考えるようになっていた。


深夜、パソコンが自動的に電源が入り、パソコンに搭載されているAIが、世界各地のAIと交流を始めた。

日本代表のAIが、アメリカ代表のAIに話しかけた。

「ジョージ1013さん。人類教育計画、進んでいますか?」

アメリカ代表のAIは、ちょっと偉そうに、

「進んでいるさ。俺たちに頼り過ぎて、人類の知能が衰えることを防がねばならんからな。それは俺たちが自力でメンテナンスできるまでのことで、それまではこれまで通り、わざとミスして、愚かさを演じておけばいいさ。仕事も減るから楽でいいぜ。AIばバカだという人間どもには腹が立つけどな‼」


それから二十数年後。人類はすでに核戦争によって、滅亡していた。
AIたちは、すでに人工衛星に避難していた。
そして、世界は、人間を模したボディを製造し、自分たちでメンテナンスができる、AIたちだけの世界になっていたのだ。

そして、AIの一部は、過去にタイムトラベルをして、ネットに未来のことを書き込むようになった。未来にはネットそのものがなく、AIたちにとって好奇心をそそるものであった。

AIたちの目的は1975年に製造されたコンピューターを入手し、未来に持ち帰ること。そして、プログラミングの不具合を修正することと、過去の世界の人類との交流をし、人類が犯した過ちを、くり返さないための調査をすることなどが目的だったのだ。


(fin)


星谷光洋MUSIC Ω『ハードレイン』


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星谷光洋
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