花嫁からの手紙の途中にぶっ倒れた父を思い出した<#キナリ読書フェス>
「ムリムリムリムリ!
こんな本読まされたら、感想なんてどう書いたらいいか分からんわ!」
これが、この本を読んだ感想です。
この本に出合ったきっかけは、ある一つの記事。
子どもが寝静まった夜、ゆらゆらと海を漂うようにネットサーフィンをしていて見つけた、岸田奈美さんの著書を激推しする記事。
しかもその記事を書いたのは、私が大好きなライターさん。
気になって仕方がなかったので、岸田奈美さんのnoteを読んだ。
もう、寝られるわけないやん
おもしろくて暗闇で1人くすくす笑って、感動して布団でこっそり涙を拭いて。
気づけばド深夜になっていました。
明日も早起きして家族のお弁当作らなあかんのに。
なんて事してくれるねん。
そこから数日岸田さんの文章を読み続けるのが寝る前の習慣になった。
すると、もれなく寝不足になった。
これじゃいかんと思って、子どもが習い事の合間に本屋さんにかけこみ、本を買った。
これで夜な夜なブルーライトに照らされることなく、優しい間接照明で岸田さんの文章に触れられることになった。
ネットで読んだことのある文章でも、本で読むとまたなんだか味わいが違う。
結末を知ってるのに、また同じところで笑って、同じところで感動して。
もはや落語。
そんなこんなで、あっという間に読み終えてしまいました。
この読書フェスに参加すると、岸田さんが感想に目を通してくれるということなので、noteとやらを初め、参加することにした。
岸田さんに伝えたい事はただ一つ、「ありがとう」。
ここからは我が家の話になるのだけれど、私はいたって平凡な家庭でぬくぬくと幸せに育ちました。
ありがたいことに今のところ大きな不幸にも合わず、空気よめないのが一周まわってちょっとかわいい父と、とにかく私を溺愛してくれる心配性の母、そしてだいぶ変わっている天才肌の兄と、本能のままに生きることにした私の4人家族。
岸田さんの文章を読んで、私の結婚式の日にぶっ倒れた父の姿を思い出した
父は今も健在だけど。なんなら先週も帰省して会ったけど。
私はとにかく両親から愛されて育った。…と自信をもって言えるくらいありとあらゆることから守られて育ちました。多分。
中高生にもなると守られていることに気づきつつも、その両親の守ってくれている中にいるフリなんてしたりしながら、比較的自由に過ごしました。
そしてそのまま家を出ることなく大学へ。
そしてそのまま家を出ることなく社会人に。
大学の同級生だった夫と結婚したのが社会人5年目くらい。
実家でぬくぬくと育った私は、新居に引っ越すのが本当に嫌で。
ずるずると先延ばしにしようとしていると、母に「もうそろそろ引っ越したら」と言われ。
しぶしぶ新居にうつりました。
それはそれは急に移動したものだから、口数少なく感情表現がそれほど豊かではない父には何も言わず、しれっと新居にうつりました。
電車で2駅の距離やし、それこそ修学旅行に行くくらいのつもりで。
仕事から帰った父が私が新居に移った事を知り、いつもは飲まないお酒をこっそり飲んでいたというのは、後日母から聞いた話。
「いつもありがとう」や「育ててくれてありがとう」なんて言おうものなら、胸のあたりがこしょばいし、泣きそうやし、こっぱずかしいし…という気持ちが勝って、ふらっと出る形になってしまった。
でも週末には何やかんやと用事を作っては実家に物を取りに帰ったり、ご飯食べたり。
消えた父。
結婚式のオーソドックスな流れとして、最後に花嫁から親への手紙というものがあります。
私はそこでやっと親への感謝の気持ちを言うことができると思いました。
そう、思っていました。
何日もかけて手紙の文面を考え、夫を夜な夜な読む練習に突き合わせ、完成した渾身の手紙。この読書感想文からも分かるように、その手紙も結構な文量になってしまいました。
花嫁だもの。感謝の想いをぶつける絶好のチャンスだもの。
結婚式当日もひょうひょうとしていた父。
私の姿を見ても「お~」くらいしか反応していませんでしたが、びっくりするくらいの写真を撮りまくっていた記憶があります。
そして結婚式も終盤にさしかかり、お涙ちょうだいシーンを演出するかのようなダウンライト。
私の立つ位置と、両親が立つ位置だけが明るく照らされます。
練習通りに手紙を読み始めました。
今まで恥ずかしくて言葉にできなかった想いを込めた手紙。
「いつもやさしいお父さん。私はお父さんに怒られた記憶がありません。仕事から疲れて帰ってくると…」
みたいな文面を読んでいる時、両親が立っている場所から
ドサッ。
と鈍い音が。
そして両親が立っている近くのテーブル卓の女子から
キャ!!
と小さな声。
嫌な予感がしてチラッと入口を見ると、母だけが立っている。
父、消えた。
しかしほとんどの参列者は気づかずみんなこちらを向いて手紙を聞いてくれている。
母をみると、何一つ表情を変えずやや下を向いて私の手紙を聞いてくれている…雰囲気を醸し出してくれています。
この状況を見て、私は一瞬で「父、倒れたな」と悟りました。
しかし、ことを荒立てないようにしている母の様子を見て、「急を要するものではないはず。これは早く終わらせねば!」と決意。
そして、平静を装う母と、急に超早口で両親への手紙を読みだす新婦、世に言う「平成の名女優」が誕生したのです。
絶対的な、ウソ。
両親への感謝溢れんばかりの手紙を書いたのに、その父がぶっ倒れるって。
そのまま滞りなく披露宴を終え、皆さんをお見送りするために廊下に出た私達。
しばらくすると、青白い顔の父がふらっと現れて
「おう!手紙よかったで。」
と言ってきた。
…いや、絶対聞いてへんかったやろ。
人生最大美しい恰好をさせてもらった私は、人生最大のつっこみを心の中で入れた。
本人はお酒を飲みすぎたと言ってたが、目に入れてもいたくない程溺愛している娘の結婚式の終盤に、いろんな感情や疲労が溢れてぶっ倒れてしまったんだと思う。多分。
後日実家に帰ると、
母にこっぴどく言われたであろう父が「こないだはごめんな~」とヘラヘラ謝ってきた。
いや、謝らんでいいし。無事で良かったし。
てか、ヘラヘラしてるから謝るつもりないやん、絶対。
ふとリビングを見ると、父が撮ってくれた結婚式の写真でアルバムを作ってくれていた。
最後のページには、私から熱い熱い想いがつまった手紙が、見開きで貼られていた。
いや、恥ずかしいやん。でも読んでくれたのかと思うと、ちょっと嬉しい。
直接言葉で言わなくても、感謝の気持ちを伝えるには私の場合はこれくらいの距離感でいいのだと思ったあの日。
とにかく、ありがとうございました!
そんなこんなを思い出させてくれた岸田さんに「ありがとう」と言いたいです。
そして、ご出身地が結構近いので、帰省された際には一緒にお昼でも食べたいです。同じ大学出身のよしみで。
結局、これが言いたかったのです。
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