常務理事の就任にあたり
2021年9月4日、私は、公益財団法人日本セーリング連盟(JSAF)の常務理事に選出されました。私のような若輩者を指名した先輩たちや、この人事案に賛同された理事たちに感謝申し上げます。
東京オリンピックが閉幕し、1か月が経とうとしています。パラリンピックも明日には閉幕です。東京大会には、「めでたし、めでたし」でも、「感動をありがとう」でもない、リアルな反省がたくさんあります。
コロナ禍において、スポーツは不要不急なものではないかと問われました。不要かどうか、不急かどうかを問えば、社会のたいていのものは不要不急です。むしろ、不要不急な「余白」に、人の幸せや安らぎや癒しは宿っているのだと思います。結果として、この不要不急なスポーツは、多くの人々や社会の我慢や、犠牲、支援のおかげで、東京オリンピック・パラリンピックを開催できました。次は、私たちスポーツが、人々と社会に対して恩返ししてゆく番です。
ジェンダー平等の完全なる実現、パワハラ・セクハラの撲滅、人材育成と世代交代、SDGsとD&Iの推進など、スポーツ界の課題は山ほどあります。東京オリンピックが終わったことは、いまここで冷静になって、私たちスポーツが社会において存在し、提供しうる価値を問い直し、定義し、発信してゆく好機です。
私たちは、「山を高くする」という勝利至上主義ではなく、「裾野を広げる」という、競技との多様な関わり方を認め、支える価値相対主義に舵を切ってゆきます。メダルは、もちろんメダルそのものにも大きな価値がありますが、メダル以外にもスポーツの価値の源泉はたくさんあり、それを認め、育てなければなりません。
セーリングという特殊なスポーツは自然を相手にし、本来、ジェンダーフリーで、エイジフリーで、バリアフリーな生涯スポーツです。男女が、老いも若きも、障害があってもなくても、同じルールと同条件の下で勝負できます。そのような競技を、皆さんにもっと知ってもらいたい。
その中で、セーリング競技のパラリンピック復活は、重要なテーマのひとつです。海に囲まれた島国において、海をフィールドとする私たちセーリングスポーツは、海洋環境の保全にも率先して取り組みます。
日本は、2025年に大阪・関西万博、2026年に愛知・名古屋アジア大会・アジアパラ大会を迎えます。たった4年後・5年後であっても、東京オリンピック・パラリンピックと同じであってはいけません。今から、たくさんの力を結集し、常識破りの万博・大会を作りましょう。
最高のチャレンジをする、これからの5年間を、皆さんと共に挑みたいです。ぜひ、一緒にやりましょう。