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<小説シリーズ vol.13> 宿命 ~さだめ~

その13 “原因” 


真は言われるまま、渡された紙に書かれたいくつのも漢字を読みあげていった。
漢字の横にはフリガナがふってあるものの
真にとっては当然初めて目にするものだった。

しかしなぜだろう 
妙にスラスラと言葉が出てくる 
不思議に思いながらもただひたすら唱え続けた

三十分たっただろうか


「もういいわよ」
「わかったわ」


「これ、疲れますね」


「そうね、でも結構読めるみたいね」


「は~...」
「こんなの初めて見たんですけどね」


「お経を抵抗無く読めるって事は、恐らく前世のあなたは使ってたんじゃないかしら」
「記憶は無いかもしれないけど、あなたの魂は生まれ変わってもずっと記憶してるものだから」
「何となく分かるでしょ?」


「...良くは分かりませんが」


「例えば初めて会った人なのに“初めて”って感じがしない人とか居ない?」
「大抵のそう言う人は、前世でも会っていて記憶しているからなの」
「“魂”でね」
「そんな事より、分かったわよ」
「信じる、信じないは後にして、とにかく良く聞いて」


【それほど古くない中国の時代。
そこに前世の真は居た。
その時代に真がしていた事。それは、
“阿片”(今で言う所の麻薬にあたる。)を生業にしていた。
組織には当然階級みたいなものがあり、真の立場は上から二番目に属していた。
組織の一番上の“男”、この“男”と真は反りが合わず、何かと衝突しつつも
そこまでの権力の無い真にとっては自分を曲げざるを得なかった。

そんな生活を送る一方、
“男”には大事にしている女が居た。
その女と真との間で...
 
二人は始め、些細な事を相談し合う程度のごく普通の関係を保っていた。
次第に二人はお互いを大切にする様になり、
真はこの組織から女と二人で逃げ出す事を決める。
しかし当然許される訳も無く、
元々相性の悪い“男”と真は口論の末、
真がその“男”を殺してしまう。

真と女は組織を抜け、ひっそりと二人で生活を始める。

しかし、
次第に二人の間には距離が出来始める。
真はだんだん女がうっとうしくなり
ここでも女を殺してしまう。
そして、真は別の女と二人で姿を消した。】


「どうも、事の顛末はこういう事をしたみたいよ」
「よくドラマなんかでもありそうね」  
「男と女の色恋沙汰は結構怨みが酷いものなのよ」


「は~...」


「突然こんな事言われても理解しろと言うのは無理な事くらい分かるわ」
「けど、現状の原因なんだと受け止めて」
「前世にあなたが起こした事を責める事は出来ない」
「でも、放っておくとこういう人間になるのよ。それが逃げ切れない“因縁”の世界なの」


「それで、自分はこれからどうしたら良いんですか?」


「まず、今のあなたには “面倒を見た男に殺された男”の怨霊と、
“人を殺してまで一緒に逃げたのに殺された女”の怨霊が憑いているから、
それをあなたから離すわ」


そう言って、
真の周りに沢山のロウソクが立てられた。


「何が起きてもこの中から絶対に出ないでね」 

そう言い、どこからとも無く女性と男性も現れ、
三人で打ち合わせをしてから、真の周りからさっきのとは別のお経を唱え始める。


10分位だろうか、
突然真の意思とは関係なく全身が痙攣しだした。
真には意識があるので、
自分が今何をしているのかは十分承知している
しかし意思とは関係なく身体の震えは止まる気配はなかった。

そうしている内に次第に震えが止まりだし、
真が落ち着き始めた頃、三人の声が止んだ。


「もう大丈夫。離れたわ」
「後は、こちらで“供養”と言うものをするから、もう心配する事は無いわ」
「けどね、最後にあなたが“しなくてはならない事”がある」
「あなたが殺した“男”」
「この“男”とどうも“今世に出逢ってしまっている”みたいなの」
「こういった場合は、直接あなたが本人にしなくてはならない事があるの」


「えぇ??」
「逢ってる??」

何とも信じがたい出来事だ。
けどなんだか妙に納得し、理解している自分がいる事を真自身が良く分かっていた。
だからこそ、奇妙な感じがしてならなかった。


            その14につづく、、、、、次回をお楽しみにw



第一話のお話はこちら

<小説シリーズ vol.1> 宿命 ~さだめ~



前回のお話はこちら

<小説シリーズ vol.12> 宿命 ~さだめ~


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