Human Augmentationカオスマップ(2024年版)〜未来を切り開くスタートアップ
こんにちは。15th Rockです。
これまでに2回発表し、大好評を博したヒューマンオーグメンテーション(人間拡張。Human Augmentation)のカオスマップ。ついに2024年版が完成しました!
近年、AIやロボットなどの技術進歩により、人間の能力を拡張するヒューマンオーグメンテーション分野に対する関心が年々高まっており、同分野を投資テーマに掲げる15th Rockには国内外からさまざまな情報が集まってきます。
そのような状況のなか、今回のカオスマップに掲載したスタートアップも、前回比でなんと41社も多い211社!
この記事では全体感がわかるカオスマップに加え、各領域で未来を切り開くスタートアップを紹介していきます。
Human Augmentationカオスマップ(2024年版)
過去のカオスマップは、下記よりご覧いただけます。
2020年版、2022年版
ヒューマンオーグメンテーションの分類(4つの拡張)
ヒューマンオーグメンテーションと一口に言っても、さまざまな拡張があると15th Rockでは考えています。本記事では、これまでのカオスマップと同様に「脳の拡張」「身体の拡張」「存在の拡張」「五感の拡張」の4つに分類して説明をしていきます。
【脳の拡張(Augmented Brain)】
この分野は、脳と機器をつなぎ脳機能を拡張するブレインマシンインターフェース(BMI)などがあり、ヒューマンオーグメンテーションの中でも特に注目されています。「脳の拡張」に取り組むスタートアップは、さらに以下の3ジャンルに分けられます。
侵襲系の主なスタートアップ
ニューラリンク(米国):イーロン・マスク氏設立の会社。脳内にインプラントを埋め込み、物を動かすことを実現しようとしている。
ブラックロックニューロテック(米国):脳内に小さなインプラントを埋め込む技術を開発。医療・研究分野で広く利用されている。
パラドロミクス(米国):ニューラリンクと同様に脳内にインプラントを埋め込む技術を開発。より小型軽量な脳インプラントが特徴。15th Rockの投資先です。
シンクロン(米国):脳内の血管にステントを挿入し、脳信号を読み取る技術を開発。非侵襲的なアプローチが特徴。
各社ともに、筋萎縮性側索硬化症(ALS)や脳梗塞などで動けなくなった患者の生活の質(QOL)の向上と社会活動への参画を目指して、それぞれの技術やアプローチ方法で脳内に機器を埋め込み意思を伝えるデバイスを開発しています。
非侵襲系のスタートアップ
脳手術をせず、ヘッドバンド形などのデバイスを使うなど、さまざまなアプローチ方法で脳の拡張に挑んでいる非侵襲系のスタートアップ。そのなかでもルーンラボ(米国)は、ヘッドバンドも使わずに脳の拡張に取り組んでいる興味深い会社です。同社はApple Watchを用いて、パーキンソン病の症状の理解や病状の進捗状況の管理ができるアプリを提供しています。アメリカ食品医薬品局(FDA)から認証を取得しており、実際に治療にも使われています。
【身体の拡張(Augmented Body)】
身体の拡張は、手や足などのさまざまな体の部位や体全体の機能拡張を行うと共に、体全体の計測/治療/機能再生を行う分野です。外骨格やウェアラブルデバイスなど、体の機能を拡張する技術も活発に研究されています。身体の拡張に取り組むスタートアップは、以下の5ジャンルに分類しています。
・ファントムニューロ(米国):ファントムニューロは、人の腕や足の内部にバンドを埋め込み、筋電の信号を筋肉から直接読み取り、義手や外骨格を動かす技術を開発。体外にバンドを巻いて筋電を読み取ると誤差が多く出ますが、体内部の筋肉から直接読み取ることで誤差が少ない、より自然な動作を実現しています。
・リップコード(米国):リップコードは、ロボットとAIを活用し、紙の書類を電子化するサービスを提供しています。
スキャナーで良いのでは?と思いがちですが、書類のなかにはホッチキスが付いていたり、A4の中にA3を三つ折りにしたものが混ざっていたりします。また、日本では多くの契約書が袋綴じという形で製本されており、電子化を行う際に大量の手作業が必要になります。
リップコードでは、ロボティクス技術を用い、ホッチキスを外したり、A4の中に混ざった三つ折りのA3書類を広げたりする手作業を自動化し、大量の紙書類のデジタル化を実現しました。
その上で、AIを活用して電子化した書類をデータ化し、必要な書類をテキストベースで簡単に取り出せるシステムも提供しています。
※15th Rockの投資先です。
【存在の拡張(Augmented Experience)】
存在の拡張は、離れた所や人が行けない場所で行動したり、実際にその場に無いものや、まだ実在しないものを表現し、「人の存在」「人の動きや行動」「物体の存在」を拡張する分野です。カオスマップでは存在の拡張に取り組むスタートアップを、5つに分類しています。
・ジザイエ(日本):ジザイエは、「すべての人が時空を超えて働ける世界へ」をミッションとして掲げ、リモートワークの恩恵を受けていない方々の遠隔就労を実現するリアルタイム遠隔就労支援プラットフォーム「JIZAIPAD」を提供しています。JIZAIPADは、高品質な映像データを圧縮して伝送できる技術を独自に開発し、通信環境が悪いとされる環境下においても、フレームレートや解像度を落とすことなく映像データをクラウド経由で遠隔地に届けられるのが特徴です。2023年9月の正式リリース後、5ヶ月で建設土木現場・製造業工場などをはじめとした30以上の現場に導入されており、高解像度・高フレームレートかつ低遅延を実現する映像圧縮伝送技術により、建設機械の遠隔操作やドローンによる遠隔巡回の利便性を向上し、作業の効率化や安全性の向上に繋げられることが評価されています。
※15th Rockの投資先です。
【五感の拡張(Augmented Sensing)】
五感の拡張は、人の五感である「視覚」「聴覚」「嗅覚」「触覚」「味覚」を拡張する技術です。カオスマップではスタートアップを、それぞれの感覚に分類して紹介しています。
・カナリー(米国):カナリーは、世界初のノーズコンピュータインターフェース(NCI)のスタートアップで、香りの感覚をデジタル化するニューロテクノロジーデバイスの会社です。動物の嗅覚を活用し、マウスや犬が嗅いだ香りを埋め込んだデバイスを用いてデータ化し、Bluetoothなどの無線通信で伝送して、薬物や爆発物などの検知を行うサービスを開発しています。爆発物、銃器、麻薬などの不法密輸品の検出から、トコジラミやシロアリなどの害虫検査、さらにガン・新型コロナウイルス感染症・パーキンソン病などの病気のスクリーニングや診断も可能な世界を目指しています。
※15th Rockの投資先です。
・テイストリィ(米国):テイストリィは、人間の味覚に頼っているワインのテイスティングを、化学物質と消費者の味覚のデータベースという独自のデータを分析することで、個人がどのワインを好むかを試飲前に予測するテクノロジーを提供しています。
15th Rockでは今後も、人間の能力を拡張するヒューマンオーグメンテーション分野と、人間に対するサービスであるConsumer Service 3.0分野(主にソフトウェア)へ投資をしていきます。
本領域にご関心のある企業や投資家の皆様、そして起業家の皆様、お問い合わせは下記窓口までお願いいたします。