第196怪～密室のテキスト-黒

今から13年前、2011年にストロベリーソングオーケストラで「密室のテキスト」と云った演劇作品を行った。

演出面で当時中々画期的というか、実験的な手法を用いており、まずTwitte
r(現X)で、＃15secretroomとハッシュタグを作り、そのシークレットルーム「密室」という名の電子の網に引っ掛かった人達が言葉を置いていくというシステムを作ったのだ。まず僕がこの部屋に残した言葉がコレだ。

【密室1】
何回目かの午前一時五十分。
壁についた赤い血も今では褪めてしまい
何色かは私の曇った硝子板からは解らない

＃15secretroomより

この言葉に続き、色んな通りすがりの愉快犯達がランダムに言葉をTwitter上に残していく。これがまたかなりジャンルが広く、それこそ文学組の人間が通りすがりにサクッと意味不明な言葉を呟く人が居たかと思えば、外国人の方も呟いたりして、多種多様様々な言葉が呟かれた後、続いて閉ざされた密室に僕が残した言葉がコレ。

ツイッターという虚構世界も感染症を患っています…

【実験人間劇／密室のテキスト】
【密室2】
では貴方が病原元の病気を募集中！
今すぐ感染！
架空上の【伝染病】を意味する台詞をつぶやいてください。

例→
【盲目虚構症】虚構しか映さないコンタクトレンズによる細菌感染症

＃15secretroomより

少し前まで、そして現在も尚新型コロナウィルスと云った伝染病が蔓延しているが、当時、この密室には架空上の伝染病が恐ろしい程蔓延した。そしてこの伝染病が蔓延し尽くした密室に新たに訪れたのは…

ト書き・・そこは闇【密室3】感染症を患ってからどれくらいたつのか解らない・だが確かに解るのは私の眼に2度と光が射し込まないという事。あの病が憎い、あの暦が憎い、あの季節が、、、憎い

＃15secretroomより

架空の伝染病は次第に闇という病みに変貌し、そしてその言葉達は闇医療機関に収監され、手術を受け縫合されるのである。そう、この「密室のテキスト」は数多の言葉を僕が紡ぎ一つの演劇にしてしまうという、多分今も誰もやってないのでは？(めちゃくちゃ面倒だから)な作品だったのだ。適当に言葉を紡ぐだけなら簡単だが、ある程度意味が出るようにしなければならない、それがかなり難しかった。なんせ呟かれた言葉だけで一つの演劇を作るのである。

集められた言葉はA4サイズの紙にビッシリと30枚。気が狂いそうだったが、元々気が狂っていたので、そういった作業はお手の物だった。そして冒頭でも書いた通り何が実験的で画期的だったかというと、この演劇公演には「白」と「黒」の公演があり、「白」公演は通常の照明演出、「黒」公演は暗転だらけの闇公演にしたのである。

観に来ていただいた感想では「黒公演は白公演では感じなかった匂いや音が聴こえてきた」と、闇公演ならではの感想をいただいた。まあ、演じた役者陣も大変だったろうし、照明・音響の裏方衆もかなり大変だった事であろう。で、何が大変だったかというと、この密室のテキストは東日本大震災が起きた直後の公演で、今でいう自粛ムード、テレビでは「ぽぽぽぽーん」がループする時代であった。まあ観に来てくれるであろう方々のキャンセルも相次いだ。ぽぽぽぽーんと僕の財布からお金が吹っ飛んだのも間違いなく闇という病みであり、その治療薬は未だに開発されてはいない。

そんな難解な演劇作品もやったり、時には『切断して』等のこれまた難怪な影像作品を作ってしまう当一座。
次怪演劇公演はどちらの《ナンカイ》が襲ってくるのであろうか。
切り咲きジャップ最終章~臨終
目下猛稽古中でございます。

切り咲きジャップ最終章~臨終

魔も無くチケット発売の詳細、そしてシンフライヤーも登場予定デス。
楽曲制作もどんどん進んできておりますよ。新曲ガッツリお届けしますのでご期待ください！！(デモの段階でもうすでにかっこいい！)

ここからは毒者限定記事。
冒頭にあげている演劇公演『密室のテキスト-黒』をお届けします。

白色公演は照明が照らされているのデスが、黒色公演は上記にも挙げているように暗転中でのお芝居が多数あり、独特な雰囲気の中上演されております。写真にもあるように、アニアニ飾られている苺のお化けみたいなものの役割も何だったのか解りますよ。

今怪は過去の影像と当時の台本でお楽しみください。
台本はPDFでダウンロードが出来ます。

台本を見てもらえればわかるかと思いますが、あの曲が僕のこんなト書きだけで生まれてるのか！と驚愕する事間違いない&今は瀉葬文幻庫の登場曲にもなっている『瘋癲唱歌』が生まれた作品でもあります。
その他、この当時も影像を投影していたり、いろいろ実験的な事に挑戦したりもしてました。

幻の名曲『僕が居た地図』のバンドバージョンも収録されておりますよ。

今から13年前の作品という事を踏まえて、現代と重ねてみて読んでみたり観てみたりしたら面白いかもしれません。