【批判記事】「漫画」と認めたくない。タイムパラドクスゴーストライター総評
若干今更感はありますが、番外編を含めて真の完結だと思うので総評を…。
コミックス2巻でまさかの描き下ろし番外編が載る事を聞いた時は「嘘だろ。そんな待遇された打ち切り漫画『武装錬金』以外に知らないよ…」と驚いた。
そこまでの人気が出る漫画とは思えない。
で、それも含めて再読しても、やはり感想は雑誌連載を呼んでいた時と同じだった。
虚無。
これに尽きる。
哲平以外の全ての登場人物が舞台装置という歪さ。
いる意味の無かったアシスタント。唐突に存在に触れられる師匠とビタミンマン。いじめられっ子という背景が台詞だけで済まされ具体的に描写されなかったイツキ。未来からのタイムスリップと思わせて斜め上過ぎる超常現象。デウスエクスマキナなフューチャーくん。精神と時の部屋。
そこまで心血を注いでイツキを救う理由はなんだったのかもあまり描かれない。哲平なりの天才への羨望か、ただ単に誰かを救う事に理由はいらないだけか。
途中から虚空の彼方へぶん投げられるホワイトナイト盗作問題。
結局、1話の菊瀬さんの主張に回帰するオチ。
で、描き下ろしの番外編。
内容は後日談。
ホワイトナイト完結後、色々とトリッキーなものを描きまくっては打ち切り連発を食らっている哲平の姿が描かれる。
曰く、本編での経験―アイノという読者の賛同を得た事が切欠となり、色々実験作を描いてみたくなったらしいとの事。
いやだからさぁ、それは1話でとっくに菊池さんに言われてただろ。なんで言う事聞かないんだお前。
菊池さん自体は「君にしか描けない物だった。面白かったよ」と認めてはいたし、きちんと内容が伴っていれば確かにいい評価だとは思うんだけど、相変わらず描かれた漫画がどういう内容なのかがあまりに抽象的で具体的な形で全く描かれないために今一つピンとこない物がある。
この辺も哲平に対する悪印象が根強いと思う。
Twitterで市真ケンジはエゴサはしてないと言っていたそうだが、
内容を見る限り、どう見てもエゴサしたとしか思えない描写が多い。
突然アイノに渡された鞄に入れられた大量の現金。ホワイトナイトの利益分だろうけど、寄付という形でいいんじゃないのかねそこは。
結婚した事が示唆される赤星とアイノ。妙に応援されてたカップリングだったね。
表紙にも描かれ、読者を混乱させた七篠権兵衛。本編に出てないのに。
超常的存在(神様?)だった事が示唆されるジャンプじいさん。
一応本編でぶん投げられた部分はほぼ全て回収された。
回収されてはいるんだが…七篠権兵衛を始め結局本筋に関わってないものが多くて、何とも言えない。
「描きたいものを好きに描く」で終わったこの漫画。それもまた一つのまんが道ではある。
あるけども、そこに読者はいるのかい?
確かにそれで売れてる作家さんも現実に大勢いるけど、その人達だってキャリアを積んで固定ファンも多く出来てから「描きたいものを好きに描く」をやってると思うわけで。今ならバーン・ザ・ウィッチを描いてる久保帯人先生も当て嵌まるかもしれない。
「多くの人に受け入れられなくても、理解者が1人でもいれば救われる」という部分に関しては、ちょうど『2.5次元の誘惑』で読者だったキャラの視点から描かれていたけども、
あちらの方が遥かに熱く、ストレートで、胸に打たれるものがあった。
誰かからあーしろこーしろと軽い調子で言う・言われるよりも、自分から悩んで動いて踏み出してぶつけた方が感動できると改めて思う。
上記の『誘惑』で「作品をけなす権利はない」とも言われていて、こうして批判文を書いている自分には「すいません…」という感情も出てきた。
だけど、どうしても言いたい。言わなきゃ気が済まない。
結局この漫画は何をやりたかったのか未だによく解らない。
ボーイミーツガールをやりたかったのか、サスペンスをやりたかったのか、
漫画家漫画をやりたかったのか、啓蒙をしたかったのか。
「身の程を知れ」
それ以外に市真ケンジに対する言葉が出てこない。
どこをとっても隙の無い糞漫画。というか漫画と呼ぶのも失礼。
これは漫画文化に対する侮蔑でしかない。