2019/2/4 劇団雌猫 ラジオNIKKEI第2 「BIZ&TECH Terminal」書き起こし
劇団雌猫さんのメディア出演は全てチェックできているわけではありませんが、このラジオ出演の内容がとても的確かつ和やかで良かったので書き起こしてみました。
太字部分は、特に納得度が高かったので勝手に強調した部分です。
日経MJや日経新聞WEB版の記事で彼女たちを知った方へのサブテキストにもなる内容なのではないかな?と思います。
※関係者の方、もし掲載に問題ありましたらご連絡ください
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ーー柳瀬博一がお送りしています『BIZ&TECH Terminal』。ここからは気になる時事ニュースにフォーカス、FACT×FACT。今週は素敵なゲストをお二人お迎えしております。劇団雌猫の、ひらりささんとかんさんです。こんばんは。
二人 こんばんは。
ーーえー、いきなり劇団雌猫と言ってもですね、これ下北沢の安い劇団の人ではございません。
二人 (笑)。
ーーまずお二人、劇団雌猫とは何なのか。ラジオを聴いてる方も分かんないと思うので、ご説明頂けますでしょうか。
ひらりさ はい。私たちは平成元年生まれのアラサー女子4人組で。『劇団雌猫』というのは、同人誌を出すときのサークル名ですね。
ーーほう!同人誌。
ひらりさ はい。で、元々全員がジャニオタだったり、宝塚が好きだったり、まあBLが好きだったり。色々なジャンルのオタクとしてインターネットで話が合う仲間として集まったんですけども。
そこでインターネットで言えないオタク女子の浪費事情だったり、美意識の話だったり、そういうのをエッセイで書いてもらって同人誌にしたら面白いんじゃないか?っていうことで始まったのが、劇団雌猫の『悪友』という同人誌が2016年末に出まして。そこからおかげさまで、書籍とか出させてもらっているっていうところですね。
ーーちなみにひらりささんは、主に何のオタクなんですか?
ひらりさ 元々20代中盤ぐらいまで、BLとか声優とかが死ぬほど好きで。
ーーBLに、声優。
ひらりさ 年間何百冊も読んでたんですけど。
ーーここで、あの……このラジオはですね、割とオーセンティックでトラディショナルなお年上の方も聴いているので。
ひらりさ あー!(笑)
ーーBLとは何かを、2行ぐらいで説明頂けますでしょうか(笑)。
かん 2行でね。
ひらりさ 「B」は「BUSINESS」ではなくて、「BOYS」の略(笑)。
ーー「BOYS」ですね(笑)。
ひらりさ 「L」は「LOVE」で。男性同士の恋愛だったり人間関係を描く、まあ女性向けの二次元的なコンテンツの総称ですね。『おっさんずラブ』とか、最近流行って。
ーー昨年流行ってました。まさに『おっさんずラブ』は、まさにBLがある意味、市民権を得た証拠みたいなものですね。
ひらりさ そうなんですよ。
ーーかんさんは、何のオタクなんですか?
かん 私は女の子のアイドル……それこそモーニング娘。さんとか、AKBグループのNMB48の子とか、あとはK-POPとか宝塚とかが好きです。多いんですけど(笑)。
ーー多いですね。大変ですね?
かん はい(笑)。
ーーそれで、お二人が参加されているこの劇団雌猫。実は今、書籍がいっぱい出ております。
ます最初に出てきたのがこの『浪費図鑑』。小学館から出てますね。これが1冊目で、次にこの『シン・浪費図鑑』。第二弾も出ております、やはり小学館で。更にマンガにもなってますね、『まんが浪費図鑑』。
で、今度は『だから私はメイクする 悪友たちの美意識調査』。これはメイクの本?
ひらりさ そうですね。これが同人誌で、『悪友』の番外編で『美意識』っていうのを前出したんですけど。それを元に作っている本で。まあオタク女性に限らないところはあるんですが、女性の「どうして毎日お化粧して会社に行くのか」とか、「自分はどういう哲学を持って装っているか」っていうことについて、それぞれ……何人いるっけ?これ。
かん 15人。
ーーで、いずれも実は売れに売れていて、これ今累計何部……?
ひらりさ 10万部に、おかげさまで到達しております。
ーーこの出版不況で10万部っていうのは、すごいですね!
ひらりさ いやー、ありがたい限りです。
かん ありがとうございます。
ーーで、私、全部読ませて頂きました。
ひらりさ あー、ありがとうございます。
ーーむちゃくちゃ面白いですね!ええ。
で、僕ね、一番近いなと思ったのは、ごめんなさいね、あのー、全国の女性オタの方、怒んないでね……怪獣図鑑だと思いました(笑)。
二人 あははは!
ひらりさ ウルトラマンとかのね。
ーーええ、私が子供の頃読んでた怪獣図鑑のような。様々な宇宙人や怪獣たちのですね、キャラが詳細に載っていて(笑)。それぞれが、みんな凛々しく雄々しいと。
変な話ですけど、みんな女性なんですけど凛々しく雄々しいんですね。これ、なんでなんでしょうね?
ひらりさ やっぱりこう、今まで結構オタク女子向けコンテンツって、それこそボーイズラブが好きな人たちとか特にそうなんですけど、隠れないといけないとか、ちょっと後ろめたいことをしているっていう取り上げられ方が強かったので。
ーーうんうん。
ひらりさ 私たちは「インターネットで言えない」っていう、ちょっと後ろめたいような言葉を使うけど、逆にそれをその分、めいっぱい楽しく書くみたいなところを、できる方たちにお願いしているので。
ーーなるほど。
ひらりさ それでまあ、特にインディペンデントな方が多いんじゃないかなあと。
ーーああー。ちなみにひらりささんは、自分のオタク趣味っていうのは周囲にカミングアウトしているんですか?
ひらりさ そうですね。
ーーあ、してる側。
ひらりさ はい。してる側です。
ーー昔からですか?割と。
ひらりさ はい。あ、でも、それこそ最初の会社とかで、編集者してたんですけど。全然初対面の人に共通の知人の人が「ひらりささんは編集者なんですけど、BLが好きなんですよ」とか紹介されて。それは勝手に紹介しないでほしいなあ、みたいな(笑)。
かん ああー。
ーーむしろ逆に。
ひらりさ 自意識はありますね(笑)。
ーー(笑)カミングアウトする前に、カミングアウトさせられてる感じですね。
かん それは確かに。でもジャンルにもよるかもね。このジャンルは、そんなに簡単に他人に言わないでほしいっていう(笑)。
ひらりさ こっちも別に「オタクだから私のこと受け入れてね」みたいな感じで生きてるわけではなくて、こう話が合いそうな人に伝えたりとか、そういう感じで暮らしたいなとは思っていて。
かん 確かに。
ーーかんさんは普段のお仕事の中で、自分のオタク趣味っていうのはカミングアウトされてるんですか?
かん そうですね。まあカミングアウトというか、オフィスでそういう話が出たらするっていうのもありますし。
例えば宝塚だとちょっとお姉さんとかの方にファンが多かったりするので、それが仕事の仲を深める話の糸口になったりするので。それで「この子も宝塚好きなんだよ」とかって、さっきひらりささんが言ってたように、勝手に紹介されることはやっぱりあるんですけど。
ーーなるほど。そういう時はだから、ジャブを出し合うわけですね。
かん そうですそうです。
ーーオタクジャブを。
かん はい。「何組の〜」みたいな。「ああー!」とか言って(笑)。
ーーって来て、もう少し深いジャブをアレすると、相手からいいフックが返ってくると?
かん そうですね、「あ、チケット1枚余ってるんですけど、実は」みたいな(笑)。
ーーで、まあ、よく言う「沼」にご一緒することも。
かん そうですね(笑)。
ひらりさ ご一緒することも。
ーーちなみにあの、今オタクの世界に入っていくことを「沼」って言いますよね。いつからああいう表現って出てくるようになったんですかね?
ひらりさ あー……でも本当に、この5年以内ぐらいだと思いますね。
かん なんでなんやろうなあ。
ひらりさ なんか結構、それぞれのジャンルが「沼」みたいな言い方だけじゃなくて。
私が覚えているのは『うたの☆プリンスさまっ♪』という乙女コンテンツ。(株式会社)ブロッコリーさんがやっている、すごくメディアミックスしているコンテンツの中の、ひとりのキャラの寿 嶺二という、なんか弁当屋の次男みたいなアイドルがいるんですけど。寿 嶺二にハマった人はもう戻れないから、「寿 嶺二は沼」みたいな(笑)。 具体例なんですけど、「特にこのキャラは戻れない」みたいな意味で「沼キャラ」みたいなことを言っているのが最初だった気がするんですよね。
かん なるほどね。
ひらりさ ジャンルっていうよりも、なんかキャラの話として出てきて。それがもっと一般化していったような記憶があります。私の個人の記憶なので、実際どうだかは紐解いた方がいいと思うんですけど。
ーーうーん、なるほど。
(ここで1曲音楽)
ーー僕が読んでふと思ったのは、この沼にハマってく感じと、従来言われていた趣味と、何が違うんだろうなあと。これどう思います?以前だと例えば「映画が好きでーす」とか、まあ宝塚っていうのは割と昔からありましたけど。
かん そうですね。
ーー「映画が好きだ」とか「マンガ結構読んでます」だとか「旅行大好きでーす」とか「趣味:旅行」とか、まあ雑に書くじゃないですか。その感じと、この劇団雌猫の本に出てくる、あるジャンルに徹底的にハマってく感じって、似て非なるような感じがちょっとしたんですが。これ、いかがですか?かんさん。
かん 例えば沼って言うと「埋まる」というか、全部すっぽりハマっちゃうような感覚があると思うんですけど。例えば趣味が日常の息抜きとして存在するんだとしたら、沼っていうのはおそらく、それ自体がもう生きるモチベーションであり、仕事をする生きがい的な。つまり「沼にハマっているから働く」みたいな(笑)。
ーーあ、だから、そっか!
かん だから、逆転しているような感覚は。
ひらりさ うん、全ての人格に影響しているが外側ではある、みたいな。
かん うんうん。
ーー趣味の場合は沼にハマるんじゃなくて、その沼の上に舟を浮かべて、時々その舟に乗る。
かん 遊びに行くみたいな。
ーーで、沼にハマるというのは、要は沼の生き物になってるわけですね!(笑)
かん そう!(笑)
ひらりさ 住人(笑)。
ーーその沼の。
かん 「住人」って言いますからね。
ーーあ、そうですね!「住人」。カッパの三平のように。なるほど、怪獣図鑑と私が言ったところが、あながち間違いじゃないような気がしてきました。
かん 生態がね。
ひらりさ でもさっき柳瀬さんが怪獣図鑑って言ってくださったのはすごく嬉しくて。
結構私たちの意図としても、やっぱりファッション誌とか、まあ世間的なオタクコンテンツって「腐女子ってこうだよね」みたいな、全員にあるあるみたいな話をしたり。やっぱりファッション誌も「メイクってモテるためだよね」みたいな、ある程度、本当に絞られたタイプの話をしているんですけれども。
まあウルトラマンが戦う怪獣も間合いは違って、それぞれ性質は違うわけなんですよね。一口に「オタク」とか一口に「メイクとか美容をしてる人」って言っても、実際は全然千差万別なんだよ、みたいなことを解説してる気持ちっていうのはあるので。すごく的を射たことを言ってくださってるなあと。
ーーちなみに最初の『浪費図鑑』は、「ン十年前の特撮作品で浪費する女」の方が出てます。これは要するに、その頃の特撮って私が子供の頃観てたようなやつですよね、例えば。
で、そのあとに出てくるのが、この漫画家さん(丹羽庭さん)が出しているお話。が、なんと今、NHKでドラマになりましたよね。『トクサツガガガ』。これ先見の明ありますよね。この本って2016年でしたっけ?
ひらりさ はい。あ、これは2017年です。
ーー2017年。っていうことは、2年前にNHKが本放送でドンと。で、今普通にCMガンガンやってますもんね、NHK。
ひらりさ NHKと同じタイミングで声かけてた可能性ありますね。
かん 確かに準備にね、ドラマは時間かかるから。
ーーすごいなあ……!
かん ほんと、ありがたい。
ひらりさ うん。
ーーで、この作者の方も講談社の「アフタヌーン四季賞」って、講談社のマンガでは一番オタクテイスト満載の賞をとっている方で。その意味でいうと、今アレですよね。マンガも含めて、かつてどちらかっていうとサブカルチャーっていうか、サブだったものがメインに出てくるケースっていうのがすごく増えてますよね。
ひらりささんはずっと編集者もやられていたということですけど、ちょっと引いた目で、ある種エディター的に見たときに、なんでかつてのこの……『浪費図鑑』が売れているということもそうだと思うんですけど、ある種真ん中的に出てくるようになったと思います?
ひらりさ それは普通に、人口が増えたりとか。メディアでまあ「後ろめたいけれど好き」みたいな取り上げ方でも、取り上げられる回数もすごく増えてきたことで裾野が広がってきて。ライトな層もオタクって言っても全然こう、オタクって元々はあんまりそんなに耳良い言葉ではなかったのが、胸を張れるようになっているのかなと。
かん うん。
ひらりさ で、それは多分、例えばLGBTの方とかも含めて、社会全体の多様性みたいなものを認める土壌ができたからこそ、こうライフスタイルとかもみんな人それぞれでいいじゃんとか。別に結婚とか出産とか、あとまあ会社でいい地位を得たりっていうこと以外にも人生の目的を追求することがOKになったからっていうのはあるのかなあと思います。
ーーなるほど。ちなみに劇団雌猫ができる瞬間、これ最初はどこでできたんですか?
かん 飲み屋?(笑)
ーー飲み屋。
かん Twitterで、元々4人それぞれが知り合いだったりして。
ーーあ、Twitter上でのお互いの行動を確認しあって、ていうのがスタートだったんですね。
ひらりさ (笑)。
かん 確認しあっていて。でまあ「チケット1枚余ってるからこれ行きませんか?」みたいな感じで、それぞれが少しずつ会うようになって。全員が同い年だったっていうのもあって、なんか4人で何回か飲むこととかが増えたんかな。
ひらりさ うん、あと一緒に劇場行ったりとか。
ーー最初に行ったのは何だったんですか?
ひらりさ あー……。
かん やー、なんだろ?テニスの。
ひらりさ そうだね、『テニスの王子様』のミュージカルのライブ、みたいな。
かん (笑)。
ーーなるほど。ええ。
かん で、その4人の中の1人が転職するみたいなタイミングで、お祝いで飲んでたんですよね。そのときに、転職すると一時的にお給料がなくなるときっていうのがあるじゃないですか。
ーーライトな……失業者になりますよね(笑)。
かん そうですそうです(笑)。で、そういう話があったときに「じゃあ貯金があったら安心だけど、まあ、無いねえ……」みたいな話をしており、まあお酒が入っていたこともあって。
ひらりさ そうそう。手掴みシーフードだったから、なんかテンションが高かった。
ーー(笑)。
かん 手掴みでシーフードを食べるお店だったんですよ。
ーーすごいっすね、その……まさに猫っぽいですね(笑)。
かん 確かに(笑)。 新宿にあるんですけど。
ーーかっこいいっすね(笑)。
ひらりさ それでテンションがね、なんかおかしくて。しかもスタッフさん踊ってるし、みたいなね。
かん そうそう。
ーーなるほど。
かん それでなんか、貯金額を暴露しあったんですよ、そのとき。で、まあ4人中2人がゼロで(笑)。でも他(の2人)もそんなに無い、みたいな。これ、私たち4人がこうなら、他のお友達とかもそうなんじゃないかと(笑)。
ひらりさ そうだと言ってくれ、みたいなね(笑)。
かん そうであってほしい。で、じゃあ匿名で、同人誌でインタビューっていうかエッセイを書いてもらうなら、聞けるんじゃないかっていうことで。
ーーなるほど……!
かん 結成っていうか、同人誌を作ろう!ってなりました。
ーーという話があまりに面白いので、この話の続きは来週に続けたいと思います。
ありがとうございました。来週もよろしくお願いします。
二人 ありがとうございます。
ーー今週のFACT×FACTは、劇団雌猫より、ひらりささんとかんさんをお迎えしました。
(終わり)