Rufus Wainwright「Unfollow the Rules」と収録曲「Early Morning Madness」の感想
Rufus Wainwrightの8年ぶりとなるポップス作「Unfollow the Rules」が今月リリースされて聴いています。
今作は今のところ日本盤リリース無し、主要レーベルサイト等にも発売予定の記載無し。タワーやHMVのサイトに掲載されているおおよそ同一の文章は、おそらく輸入元発信の日本向け解説文を元にしていると思われます。
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際立ってダークな曲「Early Morning Madness」が気になり歌詞や解説を探して読んでいたら、これは2001年の2nd「Poses」の最初と最後を飾る「Cigarettes and Chocolate Milk」へのセルフオマージュ、または今の視点から同じ状況を歌っている曲なのかも。
「Cigarettes〜」はピアノの不協和音のフレーズで始まるけれど、その特徴的な一音で即座に客席が沸く人気曲。「Early〜」はそのフレーズをなぞりつつも、より不穏な組み合わせの不協和音から始まります。
詞はどちらも、身体に悪いあれこれに耽溺した自堕落な日々のさなかにある視点から。
前者はその状況をまだ甘美にふわふわ楽しんでいる節がある内容ですが、ルーファスはこの作品の発表翌年あたりに薬物中毒でのリハビリに入っています。
後者はその遠い日々を客観的に振り返っているのか、淡々とおかしくなって気付けば沈んでいる救われなさ。歌詞中にある "Flying Dutchman(幽霊船)" の幻影がゆらりと目前に現れるようなギターフレーズも挟まれます。
(現在のルーファスは夫と娘と愛犬との暮らしにいて、ほんと、立ち直れてよかったですね……)
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他の曲や全体のトーンは、美しい歌声はより深く、曲ごとにバッキングはシンプルだったり、コーラスやオーケストレーションもゴージャス!というよりは自然な塩梅で重ねられていたり。
わたしはフォークもクラシックも全然詳しくないけど、これは多彩なジャンルの素養があるSSWならではの深み、円熟味ではないかなあ……とか思ったのでした。
2001年も今もその時々での表現で良い作品を発表してくれて、その変遷を味わえるのは嬉しい醍醐味です。
昨年の単独公演に続いて今年のフジロックで日本では初のフェス出演予定でしたが、また来日公演が実現される日が来たらもう、万難を排して観に行きます。
これらの記事も参照しました。素敵な解説でした。
ルーツになっているアーティストたちを聴く際の道しるべになっていきそう。