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【読書記録】影響力の武器なぜ、人は動かされるのか読んだ感想・要約

日常の判断を行う際、私たちは自動的反応を用いることが多い。この簡便反応の利点は、単純な思考で物事に対応できる経済性と、より早く正確に適切な対応が出来る効率性にある。承諾誘導は、大きく6つのカテゴリーに分類できる。返報性、一貫性、社会的証明、好意、権威、希少性である。これらの原理は社会の中で生きる人間にとって不可欠な心理的反応であり、効率的に判断を下す助けとなっている。

しかし、この自動的反応はある刺激で一定の行動を促す作用があるため、この仕組みを利用した商用活動などにより、知らぬ間に行動をコントロールされる恐れがある。最近アリゾナにジュエリーの店を開いた友人から相談の電話がかかってきた。なかなか売れないトルコ石を半値で売りさばくよう店員に指示したが、店員は2倍の値段で売ると勘違いしてしまった。しかし、数日後には全ての宝石が売れたという。一体何故なのか。

これは、エソロジーと言われる動物研究の成果から証明できる。鳥の行動は、ある刺激を与えると一定の動きをする機械的な行動パターンがあるという。テープレコーダーのボタンを「カチッ」と押すと「サー」とテープが回るように。

例えば、ヒナ鳥の鳴き声を聞くと母親は世話を始める、といった具合だ。実は、このような動物の行動パターンが人間にも当てはまるというのだ。エレン・ランガーらによる人間行動の実験の一つに、人に頼みごとをする際に理由を添える方が成功率は上がる、というものがある。しかも、一概に正当な内容でなくとも「理由」だと相手が理解すると承諾率が上がるのが興味深い。

「理由」が引き金となり「承諾する」という一定の行動に出ているのだ。この行動パターンを冒頭に紹介したジュエリーの話に当てはめると、「高価な物=良質」と考える顧客層が、値段の上がったトルコ石は価値があると考え購入したと推測される。

【影響力の武器なぜ、人は動かされるのか】要約

「ふとした隙につけこまれ、あれよあれよという間に欲しくもないものを買わされてしまった」
「ひっかかるはずのない怪しい〈儲け話〉に乗せられてしまった」
「人気商品なのに品薄なことが多い」・・・・・・

本書の著者は、街頭や個別の訪問販売、怪しげな宗教の寄付などで苦い思いを味わった経験から、セールスマンや広告主の世界に入り込み、人がどのような心理的メカニズムで動かされるのか解明した。

社会で騙されたり丸め込まれたりしないために、私たちはどう身を守れば良いのか? ずるい相手が仕掛けてくる“弱味を突く戦略"の神髄をユーモラスに描いた、世界でロングセラーを続ける社会心理学の名著。
待望の第三版は新訳でより一層読みやすくなった。楽しく読めるマンガを追加し、参考事例も大幅に増量。ネット時代の密かな広告戦略や学校無差別テロの原因など、社会を動かす力の秘密も体系的に理解できる。

【目次】
第1章 影響力の武器
カチッ・サー/思考の近道に賭ける/ 誰が得をしているのか?/ 柔 道/ まとめ
第2章 返報性―昔からある「ギブ・アンド・テイク」だが
返報性のルールはどのように働くか/ 譲り合い/ 拒否させた後に譲歩する/ 防衛法/ まとめ
第3章 コミットメントと一貫性―心に住む小鬼
一貫性のテープが回る/ コミットメントが鍵/ 防衛法/ まとめ
第4章 社会的証明―真実は私たちに
社会的証明の原理/死因は……不明(確なこと)/ 私のまねをしなさい……サルのように/ 防衛法/ まとめ
第5章 好 意―優しそうな顔をした泥棒
友達になるのは、影響を及ぼすため/ あなたを好きになるのはなぜ? その理由を考えてみよう/ 条件づけと連合/防衛法/ まとめ
第6章 権 威―導かれる服従
権威のもつ影響力の強さ/ 盲目的な服従のもつ魅力と危険性/ 重要なのは中身ではなく外見/ 防衛法/ まとめ
第7章 希少性―わずかなものについての法則
少ないものがベスト 失うことはワースト/ 心理的リアクタンス/ 最適の条件/ 防衛法/ まとめ
第8章 手っとり早い影響力―自動化された時代の原始的な承諾
原始的な自動性/ 現代の自動性/ 近道は神聖なもの

返報性の原理-いただいたらお返しをしないと。先にこちらが相手に何かを貢献すれば、相手はそれに対してお返しをせざるを得ない。この感情は、日本特有のものではないようです。たとえ価値の低いものでも、たとえ必要としていないものでも。人は、何かをしてもらったら、相手に何かお返しをしてあげないと気持ちが悪いのです。

これは物や情報をもらう場合に限りません。相手の頼みごとを断ってしまった場合も。この場合、相手はあなたに「譲歩する」という貢献をしてしまっています。だから、次に出される小さな頼みごとは断りにくくなってしまいます。

「利益は後で、奉仕が先」
「損して得とれ」

何となく、われわれ日本人には非常に理解しやすい原理です。「御社のニーズでしたら、正直、XX社のサービスの方がマッチしそうに思うんですよ。」営業マンのこんな言葉も、自分の利益を捨てて相手の利益にマッチする行動をとるという、形を変えた返報性の原理のケースです。

まとめ

人は、自分が口にした言葉を後から否定することにハードルを感じます。むかし、ある外資系保険会社の営業マンの育成研修を受けましたが、しっかりとマニュアルにも明記されていました。グラフに表された2つの保険商品。Aの商品は得になり、もう一方のBの商品は損になることは明白です。でも、営業マンは「○○さんだったら、どちらを選びますか?」と問うことがマニュアルです。

もちろん、答えは決まって「そりゃぁAの方がいいですよねぇ」です。これがジャブになり、小さな「yes」を自ら重ねていって、自分が口にしたことを否定しにくい状態に陥っていきます。人は、自分の発言に対する論理的整合を気にする、ということなのでしょう。営業活動においても、当たり前の質問を敢えて用意して、「○○さんだったら、どうですか?」と問うことはこちらの主張を受け入れてもらうのに前向きな力を生むことでしょう。

社会的証明-みんなで渡れば怖くない。人は、他人が良いと言っているものを「良い」と思う傾向がある。行列のできているお店だから、行ってみたくなる。みんなが行っている方向へ、流れて進んでいきたくなる。何らかの判断をするとき、他人がどう考えているかという点は、あなたの意思にも大きな影響を与えているのではないでしょうか。少し見方を変えると、みんなが同じ行動をとっていると、それが正しいかどうかという思考をする前に無意識のうちに同じ行動をとろうとしてしまう、ということ。レビューの星が多い商品は、無意識のうちに良い商品だと認識してしまいますよね。「みんなが渡っている」状態を証拠として提示すれば、相手の肯定的な行動を生み出すことだってできてしまうということです。こういった人間の心理的特性を、著者のロバート・チャルディーニは「社会的証明」と呼んでいます。

影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか


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