年輪から見えること…土地の歴史
近年、新しい道路の敷設や拡張、BSやケータイ受信の邪魔、風で倒れそうで危険など、様々な理由で切り倒された、材木や切株を目にすることが結構あると思います。
材木や切株の年輪、たくさんある場合には、その中でも大きな木の年輪を数えてみてください。
ここでは、普通の生物学的な観点とは、少し違った見方をしてみたいと思います。
切られてすぐのものは、鋸目が目立っていたり、かなり時間のたっているものはカビや菌に侵され変色していて、数え難いこともありますので、写真のような掻き取り用のヘラで少し削ると数えやすくなります。
古い切株の場合には、何年ぐらい前に切られたものか分かれば、より精度が上がります。
ヘラには「歯」が付いていて、触れるとケガをする恐れがあるので、取り扱いには注意してください。
ちなみに、写真の切株は樹齢約35年のアキニレのもの。
大きくなり過ぎて、種の飛散がひどく、あちこちから実生苗が生えてきてしまうため、切られてしまいました。
周囲に人家の多い場所では、種が風で飛散するものは植えない方が良いと思います。
この場所の整備された年が判かれば、苗畑で何年ぐらい育てられてから植え付けられたのか、も推定できます。
公園などでは整備された年が、名称のプレートに記されていることも多いものです。
こうして、近所の道路脇、神社などの切株の年輪を数えてみて、ある年代に集中していることがわかりました。
単に年輪数だけを数えるのではなく、何年にもわたって覚えておけるように、年輪数から逆算した、推定植栽年を考えておくと面白いです。
結果として、私のいる場所の周辺で集中している年代は、近い順に、
・終戦直後
・関東大震災後
・明治維新後
・天保の飢饉後
というように、何か「大事件」の後に集中していることが特定できました。
これは、飢饉や災害など、世の中の一大事の場面で、多くの木々が資材・燃料として伐採され、社会が一段落して、人々が復興を願い、再び植樹されたものと考えてよいでしょう。
卓越して古いものは、当時であっても大きな部類で、大事に残されてきたものと思われます。
山野に生育しているものでは、生物学や林学的な観点から、樹齢を割り出して、平均的なものと比較した生育の良し悪し、土壌の適否などを考え、「適地適木」という生産に適した樹種を選択して植栽する、ということになると思います。
また、当時の気象を推定して年代を特定する、年輪年代学も話題になるようになっています。
都市部などの、人々の歴史とともに生きてきてくれた樹木に対しては、歴史的な観点から考えてみる、ということも面白いと思います。
新興住宅地であれば、その場所が整備された年代というものも推定できるでしょう。記録と比較してみることで、気が付くこともあると思います。
その土地だけが見舞われた、災害の記憶もあるかも知れません。
皆さんの自宅の周辺で機会があれば、試してみてください。
その土地にとっての特別な一大事、というものも浮かびあがって来るかも知れません。
こんなことを、散歩をしながら考えたりしています。
お読みいただきありがとうございました。
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